代償と贈り物
森の狼を鍛えたり、魔法の練習を毎日毎日繰り返していると、いつの間にか半年がたっていた。
「フレード、ちょっといいかー?」
「父さん呼んだ?」
朝、ご飯を食べてゆっくりしていると父に声をかけられた。
「ついてきてくれ。」
「どこにいくの?」
「それは着いてからのお楽しみ。」
父さんに着いて街中を歩くこと十分。
冒険者ギルドから100メートルほど離れたところまで歩いてきた。
「フレード、目を瞑りなさい。」
父さんに言われたので目を瞑ると、父さんが僕を抱っこして歩いていく。
少し歩いて
「さあ、フレード、目を開けていいぞ。」
と言われたので目を開けた。
目の前には、【フレード治療院】と書かれた大きな看板の立てかけてある、白い二階建ての家があった。
なかなか大きい建物だ。
「こ、これはもしかして…。」
「そうだぞ、フレード。お前が欲しいと言っていた治療院だ。ちゃんと俺がそこらに許可は取ってある。大通りの近くはもう建物ばかりだったから少し外れてしまったが。」
「父さん、ありがとう!全然問題ないよ。中を見てもいい?」
「ああ、もちろんだ。」
両手開きの扉を全開にして中に入った。
入るとすぐに待ち合い室みたいに長椅子がいくつか置いてあった。
「すごい、十数人は座って待てるね。」
「そうだぞ、フレードがやるから治療院が混むと思ってね、少し広めにしたよ。まあ、そんなに土地の都合上広くは出来ないけどね。」
「いやいや、充分だよ、ありがと。」
椅子の並んでいる部屋の奥にはカウンターがあり、後ろに棚があるので、歯医者の受付みたいだ。
誰か雇って受付をさせよう。
「受付はどうしたらいいの?」
「まだそれは考えていないよ。字が読み書き出来る人を雇おうと思ってる。フレードに任せるよ。」
ふむ、任すと言われても困るんだよな。
奴隷にも優しい病院にしたいから、奴隷を嫌わない人材にしたい。
カウンターの右横にある扉を開けると、入ってすぐのところに机一つと椅子2つが並べられていた。
そして、左側にはベットが三台並べられている。
「ここが診察室だよね?」
「ああ、そうだぞ。病気や怪我の状態が軽い人は座って貰って、重い人はベットに寝てもらって診察するといい。」
なかなかやりやすそうだ。
奥の壁には棚が並べられているので、治療道具を並べておくのもいいかもしれない。
まあ、魔法だから必要ないかも知れないけれど。
「二階には何があるの?」
「二階はフレードが疲れた時用の寝室だよ。ベットが一つ置いてあるだけさ。フレードの部屋だから自由に使っていいよ。」
なるほど、住み込みにして急患に対応できるようにする配慮かな。
まあ、母さんが住み込みの許可を出さないと思うから意味ないけど。
「ありがとう、父さん。大好きだよ。早速準備に取りかかるね。」
「お、おう。喜んで貰えて何よりだ。俺もギルドに宣伝しとくから。いつ、オープンにする?」
「一週間後でよろしく。」
「わかった、色々と困ったらいつでも父さんに言いなさい。それと準備費用でこれ、使いなさい。」
お父さんは金貨の沢山入った袋をくれた。
この建物を作るのにいくらかかったかはわからないけれど、本当に嬉しい。
これから、忙しくなるからがんばろう。
一通り診療所の中を見終わった俺は、考え事をしていた。
まず、治療院を運営するにあたり、建物と許可はある。
足りないのは受付や金額の決定、ルール決めなどだ。
「取り敢えず、母さんにでも相談してみるか。」
取り敢えず自宅に帰った俺は母さんと話し合った。
「母さん、僕、治療院はじめることになったんだ。」
「もちろん、知っているわよ、私も昨日下見してきたから。フレちゃん、相当嬉しいみたいね。」
「そうだね、嬉しいよ、ありがと。」
「どういたしまして。さて、フレちゃんの事だから従業員とか給料とか治療費の相談でしょ?」
母さんも治療院は知ってたみたいだ。
そして、俺の考えていることもお見通しのようだ。
「そうだよ、さすが母さんだね。早速相談に乗ってよ。」
「ええ、勿論よ。」
母さんと相談が始まった。
「やっぱり病気や怪我の大きさによって値段を分けた方がいいよね。」
「そうね、その方が良いわ。文句が出にくいから。」
「母さんの治癒魔法は一回いくらなの?」
「私の魔法は、一回一万クロムから十万クロムまでね。でもフレードの回復魔法はすごく強いから上限はいくらでも上げていいと思うわ。」
俺の回復魔法は今のレベルだと、四肢が欠損していても治せるレベルだから良くわからない。
あ、目が見えない人がきたらどうしよ。
治しちゃったら、俺が治ってないのが不自然になるかもしれない。
後々考えとかないと。
「…じゃあ、もう値段は要相談にするよ。ボッタクリの値段だったらお客さんいなくなっちゃうし。」
毎回、お客さんに鑑定を使って病気等の状態を見てやっていこうと思う。
そして、特殊な魔法を持っていて見せてくれた人は半額にするとかやってもいいかもしれない。
「最初だし、安めに設定するよ。」
「大丈夫よ、もしフレちゃんに文句を言う人がいたなら教えてね。私がなんとか説得してみせるから。」
「ははっ。ありがとね。」
気遣いは嬉しいが、それは相手が可哀想だ。
その後も話し合いは続き、気がつけば夜になっていた。
いよいよ、お金を稼ぐために活動を始めます。
値段設定納得のいかない方は申し訳ありません。




