代償と帰宅
家についた。
「お帰りなさいフレちゃん。ドライアド様の所にいくのは良いけれど、モンスターにはしっかり気を付けるのよ。」
ドライアドに魔力を分けてもらって腕を治した設定を作ったため、森の奥に行ったことはバレてしまっている。
「ただいま、母さん。大丈夫だよ、大樹までドライアド様の使いがしっかり守ってくれるから。」
一人で飛んでドライアドの所に行っているがそれだと両親が色々心配するので、使者に迎えに来てもらっていることにしている。
「それでも油断はだめだからね。私もお礼を言いに行きたいのだけれど。」
「それは無理だよ、僕以外の人間に会わないって言っているから、僕が改めてお礼を言っておくさ。」
「それなら…仕方ないわね。分かったわ、お礼を頼んだわよフレちゃん。」
ごめん、ドライアド。
君のこと良くわからないから勝手に設定作ってる。
「ただいまー。お、フレードも帰ってきてたか。」
「お帰り、父さん。今日もお疲れ様。」
「はっはっは。ありがとな。」
父さんも帰ってきたのでいつも通り、これからご飯だ。
その前に魔法で体をきれいにして、服を着替えておく。
ご飯を食べた後は、家族と話をして寝るだけだ。
「おやすみー!」
「おやすみ、フレード。」
「おやすみなさいフレちゃん。」
両親との会話が終わったので、自室に入りベットに横たわる。
「サウンドオフ!」
部屋の中の音声が聞こえないようにして、今からはエントと話ながらひたすら回復魔法を自分にかけ続ける。
「主よ、我も魔力を貰いたい。」
家に帰って一人になったらエントに魔力をあげるのが日課になった。
「了解、でもどうしようかな。」
「どういうことじゃ!? 主よ、我との契約を破る気か?」
「違う違う。魔力の譲渡の仕方でさ時間がかかるからさ、他に方法無いかなって思って。」
エントには、俺が手から魔力を垂れ流しにして、それを吸いとってもらって魔力を分けている。
だが、時間がかかるのでどうにか短くしたいのだ。
「あ、そうだ、エントが魔力を勝手に貰っていけばいいよ。」
「そうしたいのじゃが、お主からは勝手に魔力を奪うことは出来ぬのじゃ。」
「あれ?そうなの?なんで?」
「多分じゃが、主の膨大な魔力が勝手に外に出ないように抑えている、体の魔力の膜が相当に強いからだと思う。内から魔力が出ない分、外からも吸収出来ぬのじゃ。」
「なるほど、だから勝手にエントは僕から魔力を奪えないのか。」
精霊が俺の魔力を奪えないなら、これから先魔力を奪われることはないのだろうか?
まだ、わからないことばかりだ。
「ひらめいた!それじゃあ、エントがいつも僕に触れている左腕肩の部分だけ常に魔力を少し流すようにするよ。そうすれば、俺の魔力調整の練習にもなって、エントの為にもなるからいいでしょ!」
「我は主に任せるのじゃ。それでいいのじゃ。」
無事に話がまとまった。
なので、引き続き回復魔法の無限ループを行う。
あとはエントと会話をして仲を深めて、飽きたら寝るだけだ。
「そういえばエントって何年生きてるの?」
「分からぬ、長いこと生きているからの。」
「結婚してる?」
「な、なにをいうか、精霊に男女のパートナーなどいらぬ。」
「好みの男性は?」
「そうじゃな、優しい青年が…って何を聞いておる!?」
たまに、エントをからかったりセクハラ発言するのがなかなか楽しい。
まあ、調子に乗りすぎると縛られて怒られるんだけど。
これからもエントと仲良くやっていきたい。
日に日にエントの存在が大きくなっていくのであった。
…後々あんなことが起きるとは知らずに。
ターリア・ヘルクレード視点
つい先日、衝撃的なことが起きた。
フレードが帰って来たときに何かいつもと違うと思ったら、左腕が生えていたのだ!
「フレード、お前、左腕…。」
「父さん、母さん、僕腕が治ったよ!」
「本当か!?フレード。これは夢じゃないよな!?」
「現実だよ、父さん、僕の回復魔法で治すことが出来たんだ。」
フレードが生まれて11年、生まれた頃は優秀な治療士の力で直せるかもしれないと思ったが、全くもってダメだった。
色々な人にお願いしたが、フレードの腕は生えることはなかった。
「ううっ。フレちゃん!良かったね。今まで辛かったね。本当に良かったね。」
ソフィは泣きじゃくりながらフレードを抱き締めている。
無論、俺もフレードを強く抱き締める。
三人で大喜びだ。
俺も自然と涙が溢れる。
しばらくたって、大分落ち着いてきた。
「そういえば、フレードは自分に回復魔法を今までかけていたのに、どうして急に治ったんだ?」
「それはね、ドライアド様が魔力を沢山分けてくれて、そのおかげで今までで一番強い回復魔法が使えて、そしたら治ったんだ!」
「ドライアドだど!?森の精霊様か!実在したんだな。」
フレードいわく、近くの森でたまたまドライアドの部下を助けて、ドライアドに気に入られて森の奥の大樹に連れていかれて、お礼に魔力を分けてもらったらしい。
「腕だけに集中して魔法をかけたからさ、目は治らなかったけどね。それにまだ左腕が上手く動かせないんだ。」
「フレちゃん、大丈夫よ!これからじっくりとフレちゃんのペースでいけばいいのよ。」
ソフィの言う通りだと思う。
これから息子のことをよりいっそう大切にしようと決意した。
その日の夜、俺とソフィはフレードが寝たあと、喜びに打ち溢れていた。
誰に報告するとか、お祝いパーティーはどうしようとか散々話し合ってもなお、テンションが下がることはなく、お互いベットに入ったあとも寝ることは出来なかった。
「ソフィ、心が少し軽くなったみたいだな。よかった。今まで、何度もお前が苦しんでいる姿を知っていたからな。」
俺はソフィを抱き寄せてキスをする。
俺は見てきたソフィの涙は、いつもフレード謝る時だった。
だが、今日の涙は心からの喜びの涙だった。
うれしかった。
「あなた。ありがとう。私もあなたが辛かったのは知っていたわ。私が自分を責めているとき、あなたは辛そうな顔を一瞬だけして私を慰めてくれてたわね。いつも支えてくれてありがとう。」
一瞬の表情まで理解されるとは。
さすがソフィだな。
「こちらこそ、いつもありがとう。これからも二人でフレードを支えていこうな。愛してるよ、ソフィ。」
「ええ、もちろんよ、あなた。私も愛してるわよ。」
「…ソフィ。」
「…あなた。」
俺は今日、十数年ぶりにソフィと重なった。
ちなみにフレードがソフィに回復魔法をかけたお陰で、ソフィは処女に戻っていました。
その描写を書こうか迷いましたが生々しくなるのは嫌なので止めときました。
ブックマーク6件ありがとうございます。




