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ベタ(?)日記〜見知らぬ異世界に逝ったらしいので復活してみる〜

作者: 白木 一

『君は死にました。トラックにはねられて』


 一瞬の出来事でボクの人生は変わった。

 いや、終わってしまった。



 ボクは歩いていた。

 長いようで短く、短いようで長い、当たり前の景色となっている通学路を、普通に歩いていただけだった。

 それは、交差点で信号待ちをしていたときだ。

 一匹の猫が道路に飛びだした。どこにでもいるような、真っ黒な猫が。

 間の悪いことに――、まるで運命に導かれているかのごとく、一台のトラックが信号無視をした。クラクションをとどろかせるトラックは猫を襲おうとする一頭の猛獣さながら。

 猫も猫でそのまま渡りきればいいものを、その場に停止するのだった。

 このままだと、数秒後には黒猫がひかれている。



 猫の瞳が、ボクを見つめているように見えた。

 何だよ何なんだよ、これ!? まるで――。



 ――ラノベ主人公じゃないかよ、ボク!



 幸か不幸か、はたまた運命のいたずらか、ボクはいわゆる中二病だった。

 トラックにはねられる恐怖よりも、自分の置かれた状況に興奮し、足が勝手に動いていた。

 ボクは猫にとってのヒーローだと錯覚しながら。

 猫に触れたか否か、そこでボクの意識はブラックアウトした。



「お目覚めかな?」


 目を開けると、そこには、美女がいた。

 黒いとんがり帽子に、黒いドレス、黒い手袋、黒いブーツ。見るからに『魔女です!』みたいな格好。それとは対照的な肌の白さと、あと――ちらちら見えてる谷間が、まぶしい。


「今、変なことを考えてましたよね? もう一度寝かせてあげましょうか?」


 声は明るいのに、目が笑っていなかった。


「充分眠っていたようなので結構です……。ところで――、ここはどこですか? ボク、学校に行きたいんですけど」


「それは、無理」


 ん? どういうことだろう?

 文脈から察するに、今の『無理』は学校に行けないってこと?

 眠っているうちに、今日の授業は全部終わってしまったとか?


「残念、ハズレ。思い出してご覧? さっきまで、君が何をしていたか」


 さっきまで? 眠っていたんじゃなかったっけ?


「その前だね。それ以前に、正しくは寝ていたんじゃなくて、気絶していたのだけれど」


 目を覚ます前は――確か、登校中だった。

 いつも通りの通学路を歩いて、交差点で信号待ちをして――、


「トラックだ! トラックの前に飛びだしたんだ! そうだ、猫! あの猫は大丈夫だったのか!?」


「猫は――、お魚くわえて駆け回っているね。元気だよ」


 よかった……。助かったんだな。

 ボクの命も無駄に――無駄にって、えぇっ!? じゃあ、ここって地獄? 天国に魔女っていうのもおかしいし、やっぱりここは地獄? 鬼とか閻魔えんま様とかがいる地獄?

 まじで? 


「半分正解で、半分不正解。君は死にました。トラックにはねられて。だけど、ここは地獄とは違うよ? 君の住んでる世界とは近いようで異なる場所、って言ったらわかるかな?」


 ま、まさか……。

 トラックにはねられて行き着く場所といえば、病院か、天国か、地獄か――。

 どれでもないとすると、ここは異世界なのか?

 主人公がやたらと強くてモテる、あの、異世界なのか!?


「当たらずといえども遠からず、だね……」


「よっしゃぁあアアアッ! これが、これが、夢にまで見たラノベ主人公か! なあ、魔女さん! これってあれだろ? 元の世界に戻るために、試練を受けるってパターンだろっ?」


 中二病なら必要不可欠なラノベ一般常識、異世界に飛ばされた主人公にはなんらかの試練がある!

 で、大抵は主人公の覚悟とかそういうのが試される!

 さらに、試練を超えた主人公はなんか強くなってるし、ご褒美がもらえることもある!

 妄想は何度もしてたけど、実際になれるだなんて、想像を絶するとしか言いようがない。

 割と重度な中二病患者様だから、こういう話の流れはお見通しだ。自分の命を粗末にしたってことで、大会みたいなものに出て優勝しろだとか、神に勝てだとか、バトル展開が待っているんだろうな。



「当たらずといえども遠からず、だね……」


 魔女さんの雰囲気が変わった。

 晴れているのに雷が鳴っている、そんな感じの不穏な空気。

 もしかして、魔女さんと戦うの?

 そういえばボク、戦い方知らないんだけど……。どんな技や魔法が使えるんだ?


「君は、戦わなくていいよ。ただ選ぶだけ」


 選ぶ? 何を?

 いや、こういうときって、魔女さんみたいな人が案内役ガイドするんじゃなかったっけ?


「次は間違わなかったらいいね」


 どこから取り出したのか見当も付かない長い杖をボクに向け、魔女さんは躊躇ためらいなく呪文を唱えた。



『Jing zi xianzai』


 少年の姿がその場から消え、魔女は悲しげに言葉を漏らした。


「試練は試練でも、これは身の程をわきまえるための試練だよ……」



 目を開けると、ボクは信号待ちをしているところだった。

 立ったまま寝ていたのかな……? 最近、徹夜でソシャゲばっかりだったし。

 だけど、次の瞬間には眠気が吹き飛んでいた。

 突然飛び出す黒い猫、信号無視のトラック。

 ボクの頭に浮かんだのは、昨日読んだばかりのラノベ。


 ――これってまるで、異世界転生の合図じゃないか!


 ボクは夢中で猫へと駆ける。が、黒猫はするりとボクの股の間をくぐり抜けていった。

 うなるクラクションに硬直するボク、叫ぶタイヤ。

 全身に衝撃が伝わり、宙を舞い、そこでボクの意識はブラックアウトした。



 目を開けると、そこには、魔女がいた。

 魔女は、感情のこもっていない声で言った。


「君は死にました。トラックにはねられて。ここは地獄で、君が生き返る――そんな可能性は万に一つもありません。現実と妄想の区別をつけられなかった、それが君の罪です」

こんにちは、白木 一です。


ベタなものを書いていたつもりが、変なものになっていました。


異世界ものの長編のアイデアはいくつかあるのですが、まずは今の連載中小説をあらかた終わらせたあとで書きたいですね……。

一体いつになるのかどうかはまったくの未定ですが。


救いようにないバッドエンドの小説も書きたいと、私の中の黒いワタシが申しております。

予定は未定ですけれど。

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