1人だと思ったら2人だった
新章プロローグ的な感じです。
少々短めですがお付き合い下さい。
この世界は2つに分かたれている。
1つは、ヒト族やエルフ族、ドワーフ族、ホビット族といった人類の世界。
人類の世界の中心には『王者の城』と呼ばれる古代王国の城が建っている大陸があり、その周り東西南北に4つの大陸が囲むようにある。
北氷大陸にドワーフ族。
西風大陸にはホビット族やグラスランナー族。
東森大陸にエルフ族が。
南陽大陸にヒト族が王国を築いていた。
この人類世界は各種族の代表による合議によって平和を保たれていた。
変わって、もう1つの世界は魔人族や獣人族、竜人族、夜魔族といった魔族の世界。
魔族の世界の中心には『アビスホール』があり禍々しくその口を開けている。
『アビスホール』がある大陸から東西南北に大陸があり、人類世界と鏡写しのようになっている。
ここは、アビスホールから南に位置する大陸。
『ボーデンス大陸』
魔族7大氏族の内、魔人族が大多数を占めるこの大陸には豊かな穀倉地帯が広がっている。
魔人族は、ヒト族と外見上ほぼ変わりないが、一見してすぐに分かる特徴を持っている。
側頭部から角が生え、まるで王冠のように前頭部までつきい出てそこから上に向かって伸びている。
そんな彼等の内から、人類を絶望に突き落とせる存在が、今まさに生まれようとしていた。
『ボーデンス大陸』の南西部にある大陸最大の都市。商業都市『ドラグガーデン』
その都市にある白を基調とした大きな建物に落ち着かない様子の壮年の男性が分娩室と書かれた部屋の扉の前を右往左往している。
(オギャーオギャー)
扉の先から赤子の泣き声が聞こえてくる。
落ち着かない様子の男性はハッと顔を上げると凄い勢いで扉の前まで駆け寄る。
が、待てども待てども扉が開く様子がない。
早く我が子に会いたい気持ちに強制的にブレーキをかけられて苛立ちを募らせていく。
その時、扉が開き1人の女性が出てくる。
「おめでとうございます。1人目は無事産まれましたよ。元気な男の子です」
「ありがとうございます!!......え?」
笑顔で祝福してくれる女性は聞き捨てならないことを言っていた。
(1人目は無事産まれましたよ)
喜びも束の間に男性は驚愕を露わに女性を問い詰める。
「ひ...1人目ってどういう事ですか!?」
「はい。奥さまのお腹の中にはお子様がもう1人いらっしゃいました」
間近に近寄る男性に臆することも無く女性は笑顔で答える。
「ですので、奥さまはまだ出産中になります。今少しお待ち下さい」
丁寧な対応で女性は妻の状況を教えてくれた。
そして、また分娩室へと戻っていった。
扉の先から聞こえてくる自分の子供の声を聞きながら、今か今かと待ち続ける男性に待望の声が聞こえてくる。
(オギャーオギャー)
1人目が産まれてからおよそ3時間後の事だった。
産後処理を終えて、やっと双子と対面出来た男性は笑顔で泣いていた。
泣きながら妻へ声をかける。
「ありがとう。マルティナ。そして、おめでとう。マルティナ」
「ありがとう。レオン」
やはり両の目いっぱいに涙を溜めた妻マルティナが感謝の言葉を口にする。
そんな中で、おもむろにマルティナが切り出す。
「2人の名前どうしましょう?」
マルティナの言葉にハッとするレオン。
「そうだった。1人分しか考えていなかった…どうしようか...2人目も男の子だったしな...悩むな...」
言いつつ嬉嬉として双子の名前を考え出すレオンを見て微笑むマルティナ。
幸福感が2人を包み込んでいく。
「決めた!!リオンとシオンにしよう!」
突如としてレオンが声を張り上げる。
その声に驚きながらも、マルティナは双子の名前を心に焼き付ける。
双子の兄はリオン
双子の弟はシオン
と。
こうして、人類の絶望『達』は両親の愛情を一身に受けすくすくと育っていく。
はい。
ということで、誕生しましたね。
前回までの話と違って真面目に書いてますね。
夫婦の喜びに水を差しちゃいかんですよね!
次回からは双子が動き回りますよ!
では、期待して待て次回!!