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ゲーム

 


「ほぅ...この娘が標的ターゲットなのか」



 さて、やっと理沙の外出許可が降りて、あの四人の護衛が紹介されていた頃のニューヨークの一角にそびえ立つビル。

 そこの膨大な上階ではニューヨークでも有名なホテルとして扱われ、隠された地下では「裏カジノ」が位置していた。ちなみにそこは、理沙が居るホテルではない。

「裏カジノ」には、会員制の為、毎晩決まった客が訪れる。時々増えたりするものだが、通常の「カジノ」と違ってそこまで人は多くない。

 毎晩巨額の金が動くこの「裏カジノ」のディーラーらは、カードや弾を自由に操る。客はそれを見越して、大抵彼らを買収していたりするものだが、此処の「裏カジノ」では全て『運』。ディーラーも客の『運』に従って動いている。誰一人、ズルをしようとはしないこの「裏カジノ」。

 だが、この夜からそれは変わる。



「はい、彼女は『斉藤理沙』。日本人で、現在は国際連合によって匿われています」



「裏カジノ」の客、ディーラーの目線は、全て真ん中に置かれる大きなテレビに注がれていた。そこには、隠し撮りされた理沙の写真や、性格、人間関係、「SR細胞」の研究についてなどが次々と映し出されていた。

 客等はこの夜、あるゲームの説明を受ける為に此処に来ていた。



「いやぁ、可愛い娘だね。本当に『SR細胞』なんて持っているのかい?」

「勿論でございます。そして、今日、彼女のホテル外への外出許可が降りました」

「どういう事だ?」



 客に訪ねられたディーラーはニヤリと笑うと、パソコンを操作してテレビの映像を変えた。



「こちらをご覧ください」



 テレビには四人の護衛とセシルの姿が映し出され、客等には書類が配られた。



「彼らが『SR』の護衛。この中には一人、我々に通じている者がおります」



 ディーラーが言うと、客等はざわめいた。簡単に言うと、この五人の護衛の中に、別組織に繋がる「裏切り者」が居るという事だ。



「そこでゲームです。明日、彼女は何処かへ行きたがるはず。そこを捕らえます」

「ちょっと待った。その『通じている奴』は一体誰なんだ?」

「それはお答えしかねます。我々も分かりませんので」



「裏切り者」の正体は、上層部のみが知っている。



「では続けますね。彼女に戦闘能力は備わっていません。護衛を抑えていれば、簡単に捕らえる事が出来ます。そして、我々に『通じる者』が、今何処で何をしているかなどを我々に伝えます。そこで、貴方方は動きます。誰かを雇うか何かして、彼女を捕らえてください。捕らえた方には、これを差し上げましょう」



 ディーラーが手を叩くと、使用人達が赤い布で隠されたカートを押して来た。



「こちらです!」



 使用人が布をバッと取り去った。すると、客達は歓喜した。

 布のしたには、大きな金塊がピラミッド状に積み重なっていたのだ。兆は軽く超えるぐらいの量だ。



「こちらの金塊は、いち早く『SR』を捕らえた者に差し上げましょう」

「聞くが、その少女にそこまでの利用価値があるのか?」



 客が聞いた。ディーラーはやれやれと微笑して彼に言った。



「勿論。彼女の血は『不老不死』の力があります。一口飲めば『不老不死』になれるというわけではありませんが、どんなウイルスでも完全に抹殺し、どんな怪我も病気も完璧に治せます。そして、血を美容液などにすれば『若返り』の効果もあります」



 ディーラーの言葉で、会場には大きなざわめきが走った。そんなものを手に入れたら、一生困らないだろう。好きなように生き、好きなように金儲けも出来る。



「彼女には死ぬ方法がない故、もちろん臓器も再生するので売り放題。拷問だってし放題」



 この言葉に、多くの人間が反応した。



「か弱い少女の叫びを、延々と聞き続ける事が出来る。素敵でしょう?」

「待ってください。捕らえた者に金塊を渡して、それで貴方方にメリットはあるのでしょうか?」

「その方には、『SR』の血を毎日『100cc』程度提供してもらいます。あ、捕らえたらもう好きにして結構です」



 ごくりと生唾を飲む音が聞こえた。血さえ毎日渡していれば、理沙は自分の好きなように出来るのだ。しかも、「不老不死」になれる。

 このゲーム、参加しない手はないだろう。



「ゲーム参加者には、料金として一人辺り十万ドル頂きます」



 さぁ、ゲーム開始だ。

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