表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼女と僕シリーズ

J‐POPを口ずさめば

作者: 朝永有

「いや~、久しぶりのドライブだね~」

 彼女は助手席に座って、腕と体をぐーんと上に伸ばした。

 彼女が指定した場所まで僕は車を走らせる。窓の外には海が広がっており、彼女はそれを眺めていた。

「ラジオでもつけるか?」

「いいね! いいね! ドライブといえばラジオだよね!」

 彼女も乗り気なようなので、僕はラジオをつけた。スピーカーから女性の歌が聞こえてくる。

『前髪で隠した会いたい気持ち 愛しているのに……』

 どうやらその曲はラブソングだった。途中に早口のメロが入ってからサビに入る。

 まあ、今時の曲と言えば今時の曲だった。

「ねぇ、あのさ」

「おう、どうした?」

「なんでこういう曲の時っていつも前髪で何かを隠すの?」

 彼女の声が少しずつ大きくなっていく。

「ちょっと、ワンパターンし過ぎだよね」

「そうなのか?」

「そうだよ! 大体さぁ、気付いて欲しいなら、その前髪を切っちゃえばいいのに」

 そして、彼女が発する言葉に興奮が添えられていく。

「そしてさ、『愛』を動詞にしてるじゃん! だからなんだよ!」

 ああ、彼女はこの『愛』という言葉を動詞にするのが嫌いだったなぁ。

「それが会いたいって感情だけで終わってるんでしょ? なら会いに行けよ! って話じゃない?」

「つまり……」

 僕は彼女の言葉を呼び込む。

「そう! 態度で示しなさいよ! って話よね」

「ふむふむ。前もそんなこと言っていたね」

「そうだっけ? でも、まとめはこれじゃないわよ」

 僕はこれがまとめだと思っていたので、少し驚いた。

「じゃあ、そのまとめは?」

「この歌に出てくる女の人の愛情は、『会いたいと思ったら会わないで待つだけでいいや。向こうから会いに来ないと、前髪で隠せるほどの愛しか与えないよ!』という意味になるんだよ!」

 彼女がそう言い終えると同時に、ラジオから聞こえてくる歌が終わった。

 僕は横目で彼女を見ると、海の煌きと相まって、いつもより眩しく見えた。

 ラジオDJが次の曲の紹介に移る。そんな風に、僕らのドライブはまだまだ続く。

読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず、激しい彼女さんですね(笑) 確かに、前髪で隠すとかそんな表現よくありますねo(^-^)o
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ