お姫様?
とんっ。
足が床についたのは最後のチャイムがなり終わる瞬間だった。
クラス中の視線を感じる。
大宮くんは自分のクラスに滑りこんでいった。
何も知らない先生が教室に入ってきて、わたしはあわてて席に着いた。
クラスのみんなが視線を前に戻す。
わたしも前を向こうとしたとき、横から視線を感じた。
ちらりと隣を見ると、渡辺くんと目があった。
すぐに俯いた渡辺くんは何やらノートに書いている。
なんかあったの?
ノートに書かれた字の横には首をかしげた猫がいる。
授業遅れそうになっちゃって。
読んですぐ、渡辺くんはまた書き始める。
足、大丈夫?
どうして足を擦りむいたこと知っているのだろう。
うん、大丈夫。
下手ながらに猫の絵も描いてみた。
渡辺くんはわたしの返事を読んでそれからは何も書かなかった。
「ねぇ、どうしたの? あれって郁くんだよね?」
興味津々に実紗が聞いてくる。
なんとか事情を説明すると、実紗はいいなぁを繰り返している。
「なんかさ、あい、お姫様みたいだったよ」
興奮気味に実紗が言う。
お姫様?
わたしが?
大宮くんが王子様みたいだから、そう見えたんだろう。
先ほどの自分を思い出して顔がほてるのがわかった。
読んでいただき、ありがとうございます。