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空色の便箋

学校が始まって数日が経った。

わたしはクラスの子と話すようになったけれど、お弁当は実紗と瑠璃と食べた。

実紗はよくしゃべって、わたしと瑠璃はその半分くらい話している。

渡辺くんとも時々話す。

たいていは渡辺くんの描いた絵を見て。

学校帰りの道を早足で歩く。

最近風が冷たくなってきた。

家の郵便受けから夕刊をとる。

と、同時に水色の封筒が滑り込んできた。

春咲あい様

わたし宛て?

裏返すと、そこには覚えのある住所と……瀬川陽という文字。

玄関に夕刊を放り出して、自分の部屋に行く。

一回深呼吸して、丁寧にはさみで封を開けた。


春咲さんへ

お元気ですか。こちらではみんな元気にしています。

もうそちらには慣れましたか?

手紙、正直驚きました。

春咲さんの空色の便箋が綺麗だったので、僕も空色にします。

寄せ書きが僕の席に回ってきたとき、何を書こうか考えました。

暫く悩んで、そこに書くことがないと思いました。

そこで住所を書きました。

春咲さんが手紙をくれて嬉しいです。

お返事待ってます。

お元気で。

瀬川 陽


つまり……つまり瀬川くんはわたしへの言葉が思いつかなかったから住所を書いたってこと?

確かに関わりはほとんどなかったけど。

それでもなんだか悲しかった。

それならいっそ『元気でね』なんてありきたりな言葉を書いてくれればよかったのに。

なにも書かないでいてくれたほうがましだったかもしれない。

なのにどうして、嬉しいだなんて書くのだろう。

お返事待ってますだなんて書いたんだろう。

寝転がって手紙を窓に切り取られた空にかざしてみた。

本物の空よりも少し明るい色だった。


読んでいただきありがとうございました。

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