友達
昼休み、教科書を片付けているとショートカットの女の子がわたしの席までやって来た。
「あい、お弁当食べ終わったら学校まわらへん?案内するわ」
「いいの?」
「うん! あ、自己紹介まだやったな。あたし二条実紗。よろしく!」
「えっと、春咲あいです。よろしく!」
「さっき自己紹介で聞いたって!」
「あ、そっか」
「あいも一緒にお弁当食べようや」
「うん!」
初めて話す人に、あいと呼ばれたのに少し戸惑う。
それを隠すように笑って、お弁当を持って席を立った。
「瑠璃ー、あいも一緒でいいよね!」
二条さんについて行くと、そこには長い髪の女の子居た。
綺麗な髪だなぁ。
「うん、いいよ」
振り返った女の子を見て驚いた。
透き通ったようなきれいな声、それに似つかわしい容姿。
くっきりとした二重、長い睫、大きな目、薄桃色の頬と唇……
「よろしく、あいちゃん」
「あ、うん、よろしく」
思わず頭を下げてしまった。
「あいはさー」
二条さんは楽しそうに話し始める。
まるでわたしがずっと前から一緒にお弁当を食べていたかのようだ。
わたしはといえば、慣れない違和感だけを抱いている。
「二条さんは、」
「実紗って呼んで」
「えっと、実紗は」
「そうそう、友達なんだから遠慮しないでよ。この子は瑠璃って呼んでくれたらいいから」
瑠璃、と呼ばれた女の子はにっこりと笑ってうなずいた。
どうやら、友達が二人できたみたいです。
心の中で東京の友達に言ったつもりだった。
思い浮かんだ顔は、なぜか瀬川くんだった。