水色の便箋
「おかーさん、便箋ない?」
「便箋? あるけど……片付け終わったの?」
ぶつぶつ言いながらも引き出しから水色の便箋を出してくれた。
何を書こうかとシャーペンを片手に考える。
瀬川君へ
こんにちは。
住所が書いてあったので、手紙を出してみようと思ってこれを書いています。
無事引っ越しが終わりました。
みんな、元気にしていますか?
わたしは明日からここの学校に行きます。
何もわからないので、正直緊張しています。
みんながいてくれたらななんて思ってしまいます。
こんな弱気じゃだめですね。
実はどうして住所を書いていたのか気になったのです。
教えてくれませんか?
お元気で。
さようなら。
春咲 あい
こんな感じでいいのかな?
手紙を書くのに慣れていないうえに、相手はあまり知らない人。
ちゃんと届くかな?
返事、来るのかな?
妙な気分になる。
とにかく、書いたんだし出さないと。
便箋と同じ水色の封筒の閉じて、切手を貼る。
なんだかいてもたってもいられなくなって、封筒片手に家をでた。
道を歩きながら探すのは赤い箱。
コンビニの前にそれを見つけて、中に封筒を落とした。
手からそれが離れた瞬間、すぅっと風が指の間を通り抜けた。