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親友の決断

 激しい戦いが行われていた島に、静寂が戻ってきた。

 みかの戦いをずっと見守ってきていたけいこは、ジョーに頼んでUFOを地上に降ろしてもらった。

「わたし、見てきます。ジョーさんはみんなを助けにいってあげて」

「ああ! 任せておけ!」

 かっこよくポーズを決めてジョーのUFOが飛び立っていく。

 島から少し離れた海上ではまだ何とか動けるUFOや乗り物を使って、アルティメットジャッカルに落とされた人達の救出作業が始まっていた。

 ジョーのUFOもその作業に加わっていく。

 それを見送り、けいこは砂浜へと駆け出した。

 走っていく途中で少女が倒れているのを見つける。

「ゆうなちゃん!」

 駆け寄って抱き起こすと、ゆうなは少し咳き込んでから目を開けた。

「よかった。無事だったんだ」

「お母・・・・・・さんは・・・・・・?」

 その言葉にけいこは少なからずショックを受ける。ゆうながみかのことよりもシャリュウのことを心配しているように聞こえたからだ。

 でも、誰だって。どんな親だって。子が親を思う気持ちは当然のことだ。

 けいこは迷いを振り切り、そして言った。

「みかちゃんとシャリュウはあそこに・・・・・・」

 二人の少女はそれを見る。そこには天まで届くほどの巨大な輝く柱があった。

「わたし、もっと近づいていってみるね。ゆうなちゃんはここで待ってて」

 けいこはゆうなの体をそっと横たえると、そこへ向かって近づいていった。


 間近まで来てそれを見る。柱は天まで続いている。

 立ち上る光と魂の入り混じったその巨大な存在を前にして、けいこは息を呑んで立ち尽くしてしまった。

 みかの光の魔術とシャリュウの大鎌から繰り出された技がここで激突した瞬間、光が広がって二人の姿はこの中へと消えてしまったのだ。

「みかちゃん・・・・・・」

 けいこは不安だった。今までは危険でありながらも、みかの姿が見えたからまだ安心できていた。でも、今ではその姿すら見えなくなってしまっていた。

「みかちゃん・・・・・・どこにいるの・・・・・・?」

 その柱に手を触れようとする。

「駄目よ! けいこちゃん!」

 その時、鋭い叱責の声が響いてけいこは反射的に手を引っ込めた。振り返ると、みかの母ちはやが足早に近づいてきていた。

「おばさん・・・・・・」

「巨大な魔力が渦巻いているわ。触れればどうなるか分からない」

 ちはやの言葉は真剣だった。けいこは引き下がるしかなかった。

「おばさんも・・・・・・魔法使いだったんですね」

「ええ、今まで黙っていてごめんなさい」

「いえ、いいんです」

 けいこには彼女の気持ちが分かっていた。彼女は母としてみかに普通の人間の生活をさせてやりたかったのだ。

 ただ、一つ気になったことを訊ねた。

「わたしのお母さんは・・・・・・知ってるんですよね・・・・・・?」

 もし何も知らずに付き合っていたとしたら、それは友達として悲しすぎると思った。

 ちはやは答える。

「ええ、友達だからね」

「そっか」

 その言葉にけいこはほっと安堵した。自分の母は決して何も知らずに彼女と友達付き合いをしていたわけではなかったのだ。

 再び振り返り、天まで届く光の柱を見上げた。

「みかちゃんは・・・・・・大丈夫なんでしょうか」

「分からないわ。でも、みかに任せるしかないのよ。この戦いはわたし達とは次元が違いすぎる」

「そうですよね」

 みかの戦いを見てきた。だから、分かる。でも、本当にそうなのだろうか。

 けいこは自問する。そして、自分でも知らないうちに呟いていた。

「みかちゃんには・・・・・・任せられないよ・・・・・・」

 はっとして自分の口を抑える。

 そして、気づいた。自分のもらした言葉の意味。自分の本当の気持ちに。

「さあ、ここは危ないわ。早く離れましょう」

 ちはやが優しく手をさしのべてくる。けいこはその手を掴まなかった。

 決意をこめて顔をあげる。

「わたし、みかちゃんを一人にはさせられない! だから、おばさん! ごめんなさい!」

 けいこはぺこりと頭を下げ、そして光の中へと飛び込んでいった。

「けいこちゃん!」

 ちはやは慌てて手を伸ばした。だが、天へと伸びる光の柱は自分の魔力を拒絶した。

 ちはやは手を引くしかなかった。そして、けいこの想いを噛み締める。

「けいこちゃん、今までみかのことを助けてくれてありがとう。これからもお願いね」

 光の柱は少女達を宇宙へ誘うように天高く伸びている。

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