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UFOとの接触

 昨日来た道を走り抜け、みかが約束した旧校舎前にたどりついた時、すでにゆうなが先に来ていた。

 昨夜コイを運んだそりに腰掛け、足元に置いている大きな本を熱心に見ているようだ。

「ゆうなちゃん、もう来てたんだ」

 みかも待ちきれなくて随分早く来たものだけど、まさか先に来られているなんて思わなかった。

 ゆうなは黙って顔をあげる。みかは嬉しさに声を弾ませて言う。

「何読んでるの? 見せて」

 みかは近づいていって横からゆうなが読んでいる大きな本を眺めた。黒い装調が施された表紙、ページには変な文字や図形が並んでいる。いつか見たその本にみかの表情が凍りつく。

「ゆうなちゃん、その本!?」

「分かるの?」

 ゆうながそっと呟くように言う。みかは思わず立ち上がった。

「分からないよ! そんなの分からないよ!」

「みかちゃん?」

「あ・・・・・・」

 不思議そうに自分を見上げるその顔に、みかはふと我に返った。

「ごめん・・・・・・」

 みかは隣に腰を降ろす。

「ゆうなちゃん、それ中庭の瓦礫の中に埋めてあった本だよね」

「うん、隠してたんだけど見つかっちゃったから」

「そう」

 自分は何をうろたえていたんだろう。あの事件のことはもう終わったことのはずだ。

 まっすぐな彼女の言葉にみかは姿勢を正すことにする。

「ゆうなちゃんって読書家なんだね。そんな凄そうな本持ってるなんて」

「別に凄くはないと思うけど」

「なんか難しそうなんだけど読める?」

「よく分からない」

「ふーん・・・・・・」

 しばらくの時が過ぎ、今度はゆうなが訊いてきた。

「みかちゃんには読める?」

「え?」

「この本に書いてあること」

 みかはしばらくぽかんと口を開け、苦笑して手を振った。

「ゆうなちゃんにも分からないことがわたしに分かるわけないじゃない」

「・・・・・・」

「分からないんだよ」

「読んでみて」

「無理だよ、頭痛い」

「・・・・・・」

 ゆうなは口をつぐんでしまう。落ち込ませてしまったのだろうか。

 みかは話題を探しながら空を見る。空ではゆったりとした青空の中にぽつんと一つだけ雲が流れていた。

「そうだ、わたしも凄い宝物持ってきたんだ。ゆうなちゃんにも見せてあげるね」

 思いついて、持ってきた鞄を開け、中を探す。ゆうなが不思議そうに見ているのに気を良くしてにんまりと微笑みを向け、それを取り出す。

「じゃじゃーん、望遠鏡」

 みかは慣れた手付きでそれを組み立てる。かちゃかちゃと動かし地に脚を立てて組み終え終了。簡単キットだ。軽く覗いて眺めを確認する。

「ゆうなちゃん見て見て。凄く見えるよ」

 みかに促され、ゆうなが立ち上がって覗き込む。

「何が見える?」

「UFO」

「え?」

 ぽつりと呟くゆうなの声に空を見上げてみる。雲ひとつしか見えないきれいな青空。みかは苦笑する。

「馬鹿だね、ゆうなちゃん。UFOなんてどこにもいないよ」

「馬鹿?」

「う、ううん。ゆうなちゃんは賢い、賢いよ。だからわたしにも見せて!」

 ゆうなに代わって今度はみかが望遠鏡を覗き込んでみた。

 ・・・・・・確かに空には銀色の未知の飛行物体が飛んでいた! あの形状は・・・

「ゆ、UFOだ! 凄いよ、マジだよ、ゆうなちゃん!」

「だから言ったのに」

「変だよね。望遠鏡でだけ見えるみたい。遠いのかな」

 気を落ち着けようと胸に手を当てて、みかは望遠鏡と肉眼で見比べてみる。やはりUFOは望遠鏡でだけ見えるみたいだった。

「あっ!」

 何かに気が付いたのかUFOがあっちこっちへうろうろとし始める。みかは逃がさないように巧みに望遠鏡を動かしてそのUFOの動作を捕らえ続けた。

「動いてるよう、凄い!」

「うん」

「何が凄いの?」

 聞き覚えのある親友の声がしてみかはちらりとそちらの方へ目を向けた。むっとした不機嫌そうな顔をしてけいこが立っていた。

「みかちゃんのことだから早く来るだろうなと思っていたけど、早すぎだよ。まだ約束より1時間も前だよ。ゆうなちゃんまで!」

「ごめん」

「そんなことより空見てよ! UFOが飛んでるんだよ!」

 興奮気味のみかの声に、けいこはため息をついて空を見上げる。からっと晴れた良い天気だ。

「何もないけど」

「そうじゃなくて望遠鏡で見るの! ほらほらほら!」

 みかに手招きされるままに望遠鏡を覗くけいこ。彼女の表情が変わった。

「UFO! 本物!?」

「うん! きっとそうだよ! お~い、宇宙人さーん!」

 みかは空に浮かぶ見えないUFOに向かって大きく笑顔で両手を振った。

 

 その頃、ジョーの乗るUFOのコンピューターは警報を告げていた。どうやら誰かに捕捉されているらしい。

 調べてみると、地上から見上げている少女達がいる。怪しげな道具や建物の存在も見えた。

<こちらの姿はこの星の人間には見えないはずだが・・・・・・>

「・・・となると、あいつらの仲間か!」

 少し動きで揺さぶりをかけてみたが相手はこちらの動きを正確につかんでいるらしい。もはや疑う余地はなかった。

 彼女達は連中の仲間だ。

「ついに見つけたぞ! そこに潜んでいやがったのか!」

 少女の一人が呑気に手を振り始める。

「挑発というわけか。上等だぜ!」

 ジョーは張り切って攻撃へと体勢を移行した。


「誰かと思えばまた貴様らだとはな! ここには近づくなと行っただろうが!」

 みか達が空を見上げていると、不意に後ろから男のどなる声がした。振り返ってみると旧校舎の玄関前に校長先生が怒りに肩を震わせて立っていた。

「ごめんなさい、先生! でも、わたしたちどうしても気になることがあったから!」

「そんなことより空見てよ! 宇宙人さんが飛んでるんだよ!」

 あやまるけいこ、はしゃぐみか。校長先生は不審な物でも見るように空を見上げる。

「はーん、わしには何も見えんがな!」

「この望遠鏡じゃないと見えないの。校長先生も見てみてよ!」

「フン、話をはぐらかそうとしても無駄だ! 三人まとめて排除してくれるわ!」

「待ってよ! この旧校舎にも宇宙人さんいるんでしょ! どうして隠そうとするの!?」

「そうか。そんなことまで知ってしまったのか! ならばもう生かして帰すわけにはいかんなあ!!」

「そんな! 校長先生!」

 校長先生は意気揚々と拳を振りあげて飛び掛ってきた。その時だった。

 天から光のレーザーが降ってきて周囲に爆風を巻き上げた。舞い上がる土煙に視界が塞がれる。

 校長先生は思わず足を止めて防御に身を固めた。

「くそ! ちょこざいな!」

「みかちゃん! 今だよ!」

 みか達はどさくさにまぎれて旧校舎に飛び込んだ。

「ぬう! 貴様ら!」

 振り返り追おうとする校長先生の進路を天からのレーザーがはばむ。

「どこまでもこざかしい奴らよ!」

 降り狂う光の剣の中で校長先生は高く怒りの声を張り上げていた。

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