*ユナside* 仮面
私は、荷物の少女をつれて謎の男が来ると思われるルートを通る事にした。
―――――――それにしても‥‥初恋の人を見つけたいからって危険を犯すなんて‥‥。
考え事をしながら歩いていると、ふと、荷物の少女がいない事に気づいた。
周りを見ても気配すらない。仕方がなく今来た道を戻ってみる事にした。
「キャーーー!」
少女の叫び声がした。叫び声の方へ向かうと倒れた少女‥‥そして‥‥
「仮面‥‥?」
目の前にいたのは、黒い服に身を包んで仮面を付けた男だった。
―――――――ミヨは、仮面を付けてるなんて一言も‥‥。
男は、少女を地面に寝かせてから私に背を向けると走り去ろうとした。
「待て‥‥なんでこの子を‥‥」
私は、寝かせられている少女に視線を移した。男は、顔だけこちらに向けている。
「捜している子と違うんだ」
「それって‥‥」
――――――ミヨの言っていた初恋の人の事か?
「何故仮面を?ミヨは、そんな事一言も言っていなかった‥‥」
「ミヨ‥‥?この間会った子の事か‥‥。この仮面は、最近付け始めた物だ」
「どうして最近になって?」
私がそう聞くと男は、体もこちらに向けた。さすがにずっと顔だけ振り向く状態は、きつかったのだろう。
「徹底的に顔を見られないようにしたかったからだ」
――――――意外と律儀に質問に答えてくれている。
私は、腕を組んで首を傾げた。
「まだ分からない事がある。そこまでして初恋の人に会いたいのか?」
「もちろん、じゃなきゃこんな事は、出来ないさ」
それだけ言うと男は、去っていった。
「‥‥どうせなら気絶してる子を配達先に連れて行ってもらえば良かった」
私は、呑気にそんな事を考えていた。
配達が終わってミヨの部屋に入って見るとクタクタになってベットに横になっているミヨがいた。
近くに座って今日会った仮面の男の話をすると、ミヨの疲れは、一気に吹っ飛んでしまったらしい。
「やっぱり初恋の人に会いたいんだ‥‥」
何故かミヨは、ガッカリしている。これ‥‥私の勘だけど‥‥。
「まさかミヨ‥‥仮面の男に惚れたんじゃ‥‥?」
「違うって!ただ‥ちょっと気になる事があるの」
とミヨは、そう言って考え始めた。
――――――何が気になるんだろう?一体‥‥。
私は、考え込んでいるミヨをしばらく見てから部屋を静かに出た。
廊下を歩いていると下にブレスレットが落ちているのに気づいた。
拾ってじっくり見て見る。青・緑・オレンジ・黄と綺麗な石が並んでいる。
――――――誰のだろう?
大きさからして女性物らしい。まだ落とした人が近くにいるかもしれないと思い、辺りを見回す。
しかし、周りには誰もいなかった。仕方がなくブレスレットをポケットに入れた。
まだ荷物が残っていたので私は、倉庫からオウム一羽とプレゼント用のぬいぐるみを手にしていつものルートを通る事にした。
そして私は‥‥‥
ポケットに入れたブレスレットをいつの間にか忘れていた――――――――――。