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ヒーローは……

*ユナside*

昨日、ミヨにイタズラを止めるって言ったからスバル君にイタズラ出来ないし……。


それにしてもスバル君の驚き顔は、傑作だな。ああ……暇だ……。


「ユナ、聞いたか?この近辺に熊が出るらしい。お前も気をつけて配達しろよ」


「分かった。わざわざありがとう」


熊か……運び屋の男が気をつけろとみんなに忠告するだけあって、なかなか凶暴な熊みたいだ。


「そうだ、ミヨにも言っておかないと」


私は、ミヨの部屋へと足を運んだ。




一呼吸してから私は、ミヨの部屋をノックした。中からミヨの声と……。


「ミヨさんも気をつけてくださいね?」


「うん、ありがとう」


スバル君が中にいるのか。多分熊の事だろうな…と言う事は、私が言わなくても大丈夫って事だな。


幸い話に夢中でノックした音が聞こえてなかったみたいだ。私は、少しドアの前でジッとしてから届ける為に荷物を取りに行った。


私がドアを離れて数秒後に部屋のドアが開く音が聞こえた…。




私は、荷物を手に持って歩き出した。


荷物を届けた後、少し歩いた所で休憩しようとした瞬間……


後ろの茂みから音がして熊が飛び出して来た。


しまった…油断し…。


私は、思わず頭を抱えて目を瞑りしゃがんだ。目の前が暗くなり……。


それからどんなに待っても来るはずの衝撃が来ない。私は、恐る恐る目を開いた。


目の前にいたのは、熊と……スバル君?思わず私は、目を疑った。


熊が異様にスバル君に懐いていたからだ。呆然としている私に気づいたようで、スバル君は私に近づいた。


「昔からどんな動物にも懐かれてしまうんですよ」


スバル君は、照れ笑いをしながら私にそう言った。


「なんで………ここに?」


「ノックの音が聞こえて少ししてからドアを開けて廊下を見たんですよ。そしたら丁度ユナさんが見えて…ユナさんが荷物を届けに行ったと聞いたので、心配で付いて行って……」


なるほど……だから熊が出た時にスバル君が飛び出して私が助かったと言うわけか…そしてドアを離れた後に後ろから聞こえたドアの開く音もスバル君が……。


「おせっかい………」


「本当の事だから言い返せません……」


一応自覚してるのか、おせっかいだって。溜め息を吐いてから私は、立ち上がろうとした。


「もう配達は、終わって後は帰るだけですね。早く行きま…どうしました?」


座り込んで立たない私を見て、スバル君は首を傾げてから青ざめた。


「もしかして怪我でも?」


「………た……」


「え?」


「だから……」


私は、赤くなる顔を伏せながらもう一度言った。


「こ…腰抜けた……さっきの熊が飛び出して来た驚きで……」


それと……誰かが助けてくれたという安心感で……今のは口に出して言わないけど。ただでさえ腰が抜けて恥ずかしいのに…。


「大丈夫ですか?はい、手」


「……ありがとう…」


私は、スバル君の手を借りて立ち上がった。そういえば…小さい頃にも似たような事があった。


小さい頃……その時も熊に襲われそうになって、初恋の彼に助けてもらったんだ。


それで腰が抜けて彼に立たせてもらって……彼とスバル君は手の感触がなんとなく似ている気がする…気のせいかもしれないけれど。


これも今思い出した事だけど、彼は初対面の私を抱きしめて「良かった…良かった…」って何度も言ってくれて…私の目からはいつの間にか涙が溢れ出ていた。


そしたら泣いてる私を見て彼が慌てふためいて……あれは、今思い出しても笑える慌てっぷりだった。


いつまでも…今でも…彼は、私のヒーローで命の恩人で…





私の好きな人……。





私が立ち上がった後、スバル君は私を抱きしめて彼と同じように……


「良かった…良かった…」


…と何度も言った。


偶然だと思った……けれど偶然にしては似すぎている…。


そして私は……私の目からは涙が溢れ出ていた。


それを見てスバル君が慌てる。


「そっそんなに苦しかったんですか!?」


私は、涙を拭った。


「あんまり?早く行かないと日が暮れる」


「あ……はい」


まだ首を傾げて心配そうな顔をしながらスバル君は、隣を歩いている。


神様……これは似すぎているだけの偶然?



それとも、こうなると定められた必然ですか?



私は、夕日でオレンジ色に染まりつつある空を見上げながら、そう心の中で呟いた。









                                        続く

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