弱点
私とノエルは、さっきから俯いて考え込んでいた。
「ユナに協力してもらうには、どうしたらいいのかな?」
「弱点でもあればそれを使えるんだけどな」
私たちは、顔を見合わせた。
「そんなのあったらとっくに使ってるよね?」
「向こうは、こっちの弱点分かってるのにな」
ノエルは、ため息を吐いた。諦めたのかと思いきや椅子から立ち上がる。
「どうしたの?」
「分からないなら探るまでだ」
そう言うとノエルは、行ってしまった。私は、仕方なく立ち上がるとノエルの後を追いかけた。
柱の影に隠れて私たちは、ユナを見ていた。
「弱点なんて分かるのかな?ユナがボロを出すとは思えないんだけど」
「じゃあ、もう戻れよ?で、作戦考えろ」
「嫌だよ。私だって知りたいもん」
ノエルは、ため息を吐いてまたユナを見た。今日は、よくため息するな‥‥ノエル。私は、ユナに視線を移した。
ユナは、ポケットに手を入れて何かを取り出した。私は、ノエルを引っ張ってユナの後ろの影へ移動した。
「ん?なんか取り出した?」
「え?本当か、ミヨ」
ノエルもユナが取り出した物を目を凝らして見る。見たところ‥‥。
「ロケット?」
「なんだ?ロケットって‥‥あれペンダントだろ?」
私は、呆れてため息を吐いた。
「なんだよ?」
「あれは、ロケット(locket)。写真などを入れられる小型の容器で‥‥あれは、ペンダントの中に入れられるタイプの物だよ」
「詳しいな‥‥」
「ノエルが知らなさ過ぎなの!それにチラッと見えたから‥‥さすがに移っている物は、見えなかったけど」
私は、まだユナを見ているノエルを置いて表情が見える所まで移動した。
「え‥‥?」
思わず声が出た‥‥。とても切なそうな顔をしていたから‥‥。
「ミヨ?」
ユナが私に気づいてペンダントをまたポケットに仕舞った。
「今の何が移ってたの?」
「え‥‥いや、別に?ペットとかだよ」
「ペット?じゃあ見せてー!」
見ようとポケットへ手を入れる前にユナにかわされた。
「ダメ‥‥」
「なんで?家族‥‥じゃないでしょ?もしかしてノエルの写真が!」
脳天‥‥直撃くらわされた。
「ごめんなさい‥‥でもじゃあ何?」
「初恋の人」
「ユナも!?」
「でも見せないから」
ユナは、それからも写真を見せる事を断固拒否した。
「見せてもらえなかった‥‥」
「それは残念だったな」
「でも仮面さんに会うって言ったらいいって!しかもユナ付き」
「よくやった!」
ノエルは、笑って私の頭を撫でた。私は、少しの間撫でられるがままでいた。
「ユナまで初恋の人に未練があったとは‥‥」
「少し言い方変えろよ‥‥未練って‥」
「明日が楽しみ!」
その日、ミヨは珍しくグッスリ眠れたと言う‥‥。