推測と確信
なんだか最近、ユナは妙に私をジッと見て来る‥‥ような気がする。振り向くと必ずと言っていいほどユナがいる。
「一体何なの?」
絶えかねて私は、ユナに聞いてみた。ユナが何故か逃げようとしたので椅子にロープで縛り付けている。
「何なのって何の事?」
「誤魔化しても無駄!ユナの様子がおかしい事くらい分かるよ」
と私が言うと、ユナはため息を吐いて言いにくそうに俯いた。
「ミヨが‥‥さ」
「私が?」
「いや‥‥なんでもない‥‥」
それからどんなに聞いてもユナは、言葉を濁した。そんなにしてまで言いにくい事なのだろうか?
私が諦めかけているとユナが何か決心したのか顔を上げて私を見た。
「この間からずっと思ってた‥‥ミヨが惹かれているんじゃないかって‥‥仮面の男に」
「‥‥え‥?」
一瞬、時が止まったのかと思った‥‥驚いたからじゃない‥‥
図星だったからだ‥‥。
「何言ってるの?ユナ」
「図星だっただろ?」
ユナにそう言われて私は、言葉が出なかった。本当に図星なんだ‥‥。
「ユナ、どうしたらいい?私‥‥」
「私はてっきり‥‥」
「え?何?」
私が聞くとユナは、首を横に振った。
「なんでもない。このロープいつまでこのまま?」
「うわー!ごめん!!」
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「さっき何を言いかけたの?気になってストレス堪るんですが」
「そんなに?いや、別に私は、てっきりノエルが好きなのかとばかり思ってました」
「なんでそうなるの?」
ユナは、肩をすくめた。
「息抜きの時、偶然みたんだよ‥‥真っ赤な顔して嬉しそうにノエルと笑うミヨが」
「みっ見てたの!?」
「私の情報網をなめるな」
ユナは、腕を組んで意地悪そうにニヤリと笑った。
「これじゃあ二股になっちゃうんじゃない?」
「どっちとも付き合ってないし!何を言い出すのかな!」
私が先に行こうとしたがユナの言葉で引きとめられる。
「でも‥‥好きなんでしょ?どっちも‥‥」
「そ、そんな事ないもん‥‥」
私は、振り返らずに先に向かった。残ったユナは、肩をすくめる。
「顔真っ赤にして何がそんな事ないもんだ‥‥」
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「ノエルのせいだから!もう全てノエルのせいだから」
「なんで?なんでいきなり切れられてるの?」
ノエルは、首を傾げながら半ば八つ当たり気味の私を見る。
「いい?ノエルが息抜きに付き合ったりしなければこんな事には、ならなかったの!お分かり?」
「いや、全然分からない」
「どうしたらいい?もうあの荷物を襲う彼が気になって気になって」
「なんで急にセンチメンタル?」
状況が全く掴めていないノエルは、益々首をかしげた。
「荷物を襲って‥‥例の仮面の?」
「何で知ってるの?」
私は、身を乗り出してノエルに詰め寄る。
「ユナが大声で仮面の男のバカヤローって叫んでいたから‥‥」
「なるほど」
よくそんなで分かったな‥‥なんかノエルは、頭の使いどころを間違えている気がする。
「つまり仮面が気になるのか?」
「仮面の男ね?なんか仮面自体が気になってるみたいに聞こえるから」
「ともかくその仮面の男が気になるんだな?それは恋として?」
「私ノエルに話しかけてからやっと本題の会話が成り立ってる気がする」
「俺も」
私が仮面の男を恋として気になる?
なんか違う気がする‥‥それで言うならノエルの方が‥‥って何考えてるの私!
「おい、大丈夫か?顔赤いけど」
「だっ大丈夫!私が気になるのは、恋としてじゃなくて‥‥協力したいから‥‥」
「協力?」
「うん、彼の初恋の相手を見つけてあげたいの!だってあんなに頑張ってるんだよ?顔も見たいし」
ユナは、全ての荷物の子・荷物だった子を見て回っていると言っていた。並みの決意じゃそんな大変な事‥‥私だったら出来ない。
「そうか」
ノエルは、微笑んで私の頭を撫でた。その途端に胸が高鳴る。
「俺も協力するよ。後はユナを丸め込むだけだ」
「ありがとう」
ユナが協力してくれるか分からないけど‥‥ダメだったら誤魔化して連れて行こう。
ユナにとっては、迷惑な作戦を立てる二人だった‥‥‥。