ママならない恋
15分短編です
ある一定年齢を超えた、いわゆる熟女と呼ばれる年代の女性たち。落ち着いているし、優しい。
同学年の女子たちにはない、可憐さがある。
そんな熟女たちと一緒にお茶を飲んだり、ランチをしたりする、いわゆるパパ活の熟女版。そう、ママ活を俺はしている。
同学年のケツの青いガキどもにはない包容力が、俺を癒してくれるんだ。
勘違いしないでほしいんだけど、俺は、一線は超えないことにしている。だって彼女たちには家庭があって、生活がある。大学生とは言え未成年の俺と一線を越えてしまったら、彼女たちに迷惑がかかる。俺はプライドを持ってママ活をしているんだ。
俺はただ、熟女たちが、日ごろの疲れを癒せるように、そのよりどころになるべく、ママ活を続けている。もちろん、金銭の授受は少しだけもらっているけど、法外な金額は請求しない。ランチの代金を出してもらって、五千円程度のお小遣いをもらう。その程度だ。
今までママ活で知り合ってきた女性たちの信頼の上に、俺のママ活は成り立っているんだ。その信頼をぶち壊すようなことをしてはいけない。
誇りをもってママ活にいそしむんだ。
そう思っていたところで、俺は出会ってしまった。最高の熟女に。
黒髪ロングで、控えめな性格。身長は俺よりも小さい。やせ型。
「初めまして」
声も可愛い。
「は、初めまして」
ほかのママからの紹介で来てくれた彼女は、数年前に旦那さんを亡くしていて、ずっと一人で娘さんを育てて来たらしい。
娘さんが大学生になって家を出てしまって、暇な時間が増えたことで、友人から俺の話を聞いて、会ってみたいと思ってくれたそうだ。
「じゃぁ、行きましょうか」
そう言って歩き出したゆりえ(仮名)さんは、俺の手を握って歩き出した。
「ユウさんは、どうしてママ活を?」
「あ、はは、小遣い稼ぎです」
「そうなんですねぇ」
彼女の手に汗が滲む。あれ、この道って・・・。
「えっと、私こういうの初めてなので・・・」
彼女が俺の手を引いて入ろうとした場所はいわゆるそう言うホテルだった。
「あ、あの!俺、こういうことはしてないんです!!」
俺の言葉に目をまん丸くしたゆりえさんに、事情を説明した。
「あ、そ、そうなんですね!私ったら、恥ずかしい!」
恥ずかしがる姿も可愛らしい。
「まずは一緒にご飯でも食べに行きませんか?俺が奢ります」
「えぇ!駄目ですよ、私が払う立場なんですから!」
なんて軽い押し問答をしながら、近所のカフェに入って、話を聞いた。
娘さんの話、仕事の話、そして亡くなった旦那さんの話。
「とても誠実な人で、ずっと一緒に居ようって言ってたんですけど・・・」
ゆりえさんは、胸のペンダントを撫でながら悲しそうな表情を浮かべた。
俺みたいななんでもない奴が、ポッと現れて、彼女の心の隙間を埋める事なんて、出来そうにない。
死んだ人間に、俺は勝てない。
急に自分のしているママ活という行為が薄汚いモノに見えてきてしまった。
「でも、今日会ったのがユウさんで良かったです」
ゆりえさんの笑顔が、妙に眩しく見えた。
——畜生、可愛いなぁ!——
でも、俺には・・・越えてはいけない一線が、あるんだ!




