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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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戦わなければいけない


 荒野の風が唸る。


 凛のHPは、1。


 鼓動がうるさい。


 まだ、こちらは攻撃していない。


 相手の防御力も分からない。


 だが、試している時間はない。


 次の一撃が当たれば即死。


 逃げられない。


「やるしかない……!」


 槍を強く握る。


 指先が白くなる。


 【諸刃の剣】の熱が、腕を焼くように駆け巡る。


 ボスゴブリンが地面を蹴る。


 速い。


 真正面から来る。


 近距離はダメだ。


 間合いに入れば終わる。


 凛は踏み込まず、踏ん張る。


 限界まで引きつける。


 振りかぶる。


「いっけぇええええ!!」


 全力で、槍を投げる。


 空気を裂く音。


 一直線。


 ボスゴブリンの胸へ。


 同時に、こんぼうが振り抜かれる。


 衝撃。


 視界が潰れる。


 骨が砕ける音。


 内臓が押し潰される感覚。


 ぐちゃり、と。


 身体が弾き飛ばされる。


 地面に叩きつけられる。


 痛みも、呼吸も、何もない。


 ただ。


 遠くで、鈍い音。


 槍が、貫いた。


 ボスゴブリンの胸を。


 赤い目が揺れる。


 巨体が、崩れ落ちる。


 沈黙。


 風の音だけが残る。


 凛の視界は、暗い。


 身体の感覚はない。


 思考も薄れていく。


 ――ああ。


 終わった。


 死んだか。


 そんな感覚。


 そのとき。


 闇の中に、文字が浮かぶ。


 ――レベルアップ


 ――Lv.6 → Lv.10


 光が爆発する。


 身体が熱に包まれる。


 砕けたはずの骨が繋がる。


 潰れた内臓が再生する。


 裂けた皮膚が閉じる。


 肺に空気が戻る。


「……っは!」


 凛は荒野に仰向けになったまま、息を吸い込む。


 痛みがない。


 動く。


 手も、足も。


「……あーーー……」


 空を見上げる。


「死んだかと思った」


 いや。


 もしかしたら。


「……死んでたのかもしれないな」


 HP1。


 相打ち。


 普通なら終わっていた。


 だが、レベルアップが全てを塗り替えた。


 視界に、さらに表示が浮かぶ。


 ――ランクアップ条件到達

 ――次段階試練を開始しますか?


 表示が消えない。


 拒否の選択肢がない。


「開始しますか、って……」


 開始しない、がないじゃないか。


 凛は立ち上がる。


 足に力が入る。


 信じられないほど軽い。


 さっきまで砕けていた身体とは思えない。


 握り拳を作る。


 空気が震える感覚。


 力が明らかに増している。


「これが……レベル10」


 だが、喜びよりも先に違和感が来る。


 戦いが、出来すぎている。


 防御特化。


 攻撃特化。


 そして最後はボス。


 まるで、段階的な試験。


 ――適応能力確認

 ――戦闘理解度確認

 ――極限判断確認


 頭の奥で、そんな言葉が響いた気がした。


「俺は……プレイヤーか?」


 それとも。


 観察対象か。


 荒野に転がるボスゴブリンの死体が、光の粒子へと変わり始める。


 普通の生き物の消え方じゃない。


 データのように、崩れていく。


 ぞわりと背筋が冷える。


 この世界は、生き物すら“素材”なのか。


 空が歪む。


 ひび割れるように、空間に亀裂が走る。


 そこから、暗い影が覗く。


 洞窟よりも深い闇。


 冷たい気配。


 明らかに、さっきまでとは格が違う。


 視界に再び文字。


 ――制限時間:24時間

 ――試練未達成の場合、レベル上昇停止


「……は?」


 さらりと、とんでもないことを言う。


 レベル上昇停止。


 つまり。


 ここを越えなければ、成長は終わる。


 凛は唇を噛む。


 胸の奥で、鼓動が強く鳴る。


 恐怖。


 だが同時に。


 わずかな高揚。


 死を越えたばかりの身体が、熱を帯びる。


「……上等だ」


 どうせ、もう普通の高校生活には戻れない。


 なら。


 どこまで試すつもりか、見てやる。


 凛は一歩、歪んだ空間へ踏み出した。


 光が弾ける。


 荒野は消える。


 次の試練が、口を開けて待っていた。

 

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