闘いの跡
城の中は静まり返っていた。
つい先ほどまで魔物が溢れていたとは思えないほど、奇妙な静けさだった。
凛は深く息を吐く。
「終わった……のか」
「多分ね」
唯が周囲を警戒しながら答える。
光も部屋を見回していた。
「魔物の気配……消えてる」
どうやらゾルが去ったことで、召喚されていた魔物も消えたようだった。
その時――
遠くから足音が聞こえる。
複数。
鎧の音。
「誰だ!」
扉の向こうから声が響いた。
次の瞬間、兵士たちが部屋へなだれ込んできた。
剣を構えている。
だが目の前の光景を見て、動きが止まった。
「な……」
兵士の一人が言葉を失う。
床には倒れた兵士たち。
そして――
姫の亡骸。
「姫様……!」
兵士たちが駆け寄る。
部屋は一気に騒然となった。
「どういうことだ!」
「誰がこんな……!」
その時、隊長らしき男が凛たちを見た。
「お前たちは誰だ」
鋭い目。
凛は静かに答える。
「冒険者です」
ギルドカードを取り出す。
男はそれを見る。
「Bランク……」
少し驚いた顔をする。
「ここで何があった」
凛は短く説明した。
魔物の発生。
城での戦闘。
そして――
王子シンのこと。
話を聞いた兵士たちは信じられないという顔をしていた。
「王子が……」
「そんな……」
隊長は険しい顔になる。
「信じがたいが……この状況では否定もできんな」
城の被害は大きかった。
兵士の死者も多い。
そして姫も――
重い沈黙が流れる。
やがて隊長が言った。
「事情は後で詳しく聞く」
「だが……」
凛たちを見る。
「お前たちはこの城を救った」
深く頭を下げた。
「感謝する」
凛は首を振る。
「まだ終わってません」
「……?」
「闇の使者がいます」
兵士たちはざわつく。
「闇の……使者?」
「今回の件の黒幕です」
隊長の顔がさらに険しくなる。
「そんな存在が……」
だが今はそれ以上追及しなかった。
「今日はもう休め」
「都市の混乱も収めなければならん」
凛たちは城を後にすることになった。
夜。
メガルテの街はまだ騒がしかった。
兵士たちが街を巡回し、残った魔物の処理をしている。
宿へ戻る道。
光が言った。
「結局、あの人なんだったんだろ」
「ゾルか」
凛が答える。
「闇の使者」
唯が静かに言う。
「シンを飲み込んだあの存在……」
三人はしばらく黙って歩いた。
やがて宿に戻り、部屋へ入る。
凛はベッドに腰を下ろした。
今日一日の出来事が頭をよぎる。
シン。
龍。
そして――
ゾル。
(強すぎる……)
あの圧倒的な力。
今の自分では届かない。
その時、凛の視界に半透明の表示が浮かぶ。
【レベル20】
そして続けて表示が現れる。
【ランク2】
さらに――
【ランクアップダンジョンが解放されました】
凛はその文字を見つめる。
(ランクアップダンジョン……)
この表示は、自分にしか見えていない。
今までの経験から、それは分かっていた。
(ランク2から先に進むための試練……か)
ゾルの姿が頭に浮かぶ。
あの力。
まだ遠い。
だが――
近づく方法はある。
凛は静かに目を閉じた。
(行くしかないな)
誰にも言わず、凛は心の中で決めた。
新しい試練が、すぐそこまで来ていた。




