違和感?
朝。
最初に目を覚ましたのは光だった。
ぼんやりと天井を見る。
隣を見る。
凛と唯が、いつもより近い。
距離が、微妙に違う。
空気が違う。
「……?」
光は小さく首を傾げる。
昨夜は確か、少し距離があったはずだ。
今は――
唯の手が、凛の袖を無意識に掴んでいる。
凛も、それを振りほどいていない。
(なんか……変)
光はじっと二人を見る。
凛が目を開ける。
「……光?」
「おはよ」
じーっと見つめる。
「なに?」
「……仲良くなってない?」
凛が一瞬固まる。
唯もぴくりと反応する。
「気のせいだ」
「そう?」
疑いの目。
――昼。
宿の部屋。
「奴をおびき出す」
凛が言う。
「再び女性を狙うなら、そこを突く」
「なら私が囮になるわ」
唯が即座に言う。
「ダメです」
凛が即答する。
「危険すぎる」
「でも効率的よ」
「効率より安全です」
視線がぶつかる。
「私だって戦える」
「知ってます。でも――」
凛は言葉を選ぶ。
「失う可能性を増やしたくない」
唯が一瞬息を止める。
光がその様子をじっと見ている。
「……ねえ」
二人が振り向く。
「お兄ちゃん、必死すぎじゃない?」
凛が固まる。
「え?」
「なんでそんなに止めるの?」
「それは……危ないからだ」
「前も危なかったよね? その時は止めなかったじゃん」
鋭い。
唯が少し視線を逸らす。
光は腕を組む。
「やっぱなんか隠してる」
凛は言葉に詰まる。
「隠してない」
「うそ」
光の目が細くなる。
だが追及はそこで止まる。
唯が咳払いする。
「作戦の話を続けましょう」
結局、具体案は決まらない。
夕方。
三人で簡単な夕食をとる。
空気はどこか落ち着かない。
その時――
都市全体に響く重い鐘の音。
ゴォォン、と鳴り渡る。
「警報?」
続けて拡声魔道具の声。
『魔物発生!魔物発生!冒険者は迎撃に向かってください!!』
凛が立ち上がる。
「行くぞ」
外へ飛び出す。
通りでは混乱が広がっている。
遠くで悲鳴。
巨大な影が建物を壊している。
牙を剥いた魔物たち。
複数。
そして――
その魔物の奥。
濃い闇。
凛の短剣が震える。
「あの魔物は……」
昨夜と同じ波長。
「やつか」
空の上で、黒い影が揺らめいた。
都市を巻き込む戦いが、始まろうとしていた。




