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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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夜の都市


 ギルドを出た後、凛は立ち止まった。


「女性が狙われているなら、唯さんと光は危険です」


「でも、凛くん一人で……」


「俺が動きます」


 迷いはない声だった。


「二人は宿へ。同じ部屋で。絶対に離れないでください」


 光が不安そうに凛の袖を掴む。


「お兄ちゃん、また一人で行くの?」


「すぐ戻る」


「でも、最近ずっと無理してる」


 その言葉に凛は一瞬だけ黙る。


「……無理はしてない」


「うそ」


 光は真っ直ぐ見上げる。


「怖い顔してる時あるもん」


 凛は視線を逸らし、少しだけ笑う。


「心配するな。ちゃんと帰る」


「約束だよ」


「ああ」


 唯が口を開く。


「光ちゃん、私たちは凛くんを信じましょう」


 光は渋々頷く。


「絶対だよ。約束破ったら怒るからね」


「それは怖いな」


 凛は軽口を残し、宿へ向かった。


 


 部屋を取り、扉を閉める。


 凛は静かに魔力を練った。


「――分身」


 もう一人の凛が現れる。


 精度の高い複製。


 光が目を丸くする。


「わ、また増えた」


「こっちは任せた」


 分身は無言で頷く。


「何かあればすぐに分かります」


 唯は真剣な眼差しで言う。


「本当に気をつけて」


「はい」


 光が小さく手を振る。


「……いってらっしゃい」


 凛は静かに部屋を出た。


 


 夜のメガルテ。


 昼の喧騒は消え、空気が重い。


 人気のない路地へ入る。


 そこで立ち止まった。


 ロギの短剣を握る。


 冷たい感触が手に伝わる。


(……聞こえるか)


 心で語りかける。


 静寂。


 やがて闇が揺れる。


『お主からとは初めてだな』


 低い声。


『どうした』


(メガルテで暗殺事件が起きてる)


 凛は周囲を警戒しながら続ける。


(闇が関係しているのか?)


 わずかな間。


『……闇の気配はあるようだな』


(やはりか)


『お主と似た待遇の者のようだ』


 凛の心臓が強く打つ。


「なんだと……?」


 思わず声が漏れる。


『闇の使者は私だけではない』


『他の使者に選ばれた者がいる』


 背筋が冷える。


『その者が事件を起こしている可能性が高い』


(闇は敵なのか?)


 沈黙。


 ロギは答えない。


 わずかに闇が揺れるだけ。


 その沈黙が重い。


『私の短剣を握っておくのだ』


『闇の者に近づけば、反応が強くなる』


 短剣がかすかに脈打つ。


『私からはそれしか言えん』


(それしか、か)


『選ぶのはお主だ』


 闇が薄れていく。


『深入りするな』


 声が消えた。


 


 凛は深く息を吐く。


 闇に選ばれた者が他にもいる。


 それがこの都市で動いている。


「……会うしかない」


 その時。


 短剣がわずかに震えた。


 微かな反応。


 路地の奥。


 冷たい気配。


 凛の目が鋭くなる。


「……いた」


 


 一方その頃、宿。


 光は窓の外を見ていた。


「……大丈夫かな」


 唯が隣に立つ。


「凛くんは強いわ」


「でも強いからって、傷つかないわけじゃないよ」


 その言葉に、唯は少しだけ目を伏せる。


「そうね……」


 光は胸に手を当てる。


「なんかね、ざわざわするの」


「ざわざわ?」


「うん。嫌な感じ。でも……お兄ちゃんは絶対帰ってくる」


 強い瞳だった。


 唯はその横顔を見つめる。


(この子も……)


 ただ守られる存在ではない。


 


 夜の都市。


 闇がゆっくりと動き始める。


 凛は気配の方へ、静かに歩き出した。

 

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