表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/47

これは光なのか


 女神像の前に降り注いだ黄金の閃光。


 それは暴力的なまでに神々しかった。


 風が巻き起こる。


 床の石が震える。


 凛は反射的に一歩前へ出た。


「唯さん、下がって」


「え……?」


 言葉の途中で、唯は息を呑む。


 そこに立っていたのは――光。


 だが、いつもの光ではない。


 身体の周囲に黄金の粒子が舞っている。


 まるで太陽の欠片のような輝き。


 その魔力は、重い。


 圧力が空間を満たしている。


「なに……これ……」


 唯の声が震える。


 膝がわずかに揺れる。


 強い。


 強すぎる。


 凛の背筋に冷たい汗が流れる。


(魔力の質が違う)


 量ではない。


 純度。


 格。


 明らかに“上位”。


 光がゆっくりと目を開く。


 その瞳は透き通り、感情の揺れがない。


「試練は、終わりました」


 静かな声。


 幼さが消えている。


 凛は一瞬、言葉を失う。


「……光?」


 呼びかけても、返る視線が遠い。


 唯は無意識に一歩後ずさる。


「凛くん……これ、光ちゃん……よね?」


「……ああ」


 だが確信が持てない。


 女神像が共鳴する。


 淡い光が像から溢れ、光へと吸い込まれる。


 アルテが硬直している。


(この波動……)


 だが声を出せない。


 凛の腰の短剣が震えた。


 闇が、警戒している。


 凛は気づく。


(反応してる……?)


 黄金の粒子がさらに濃くなる。


 空間が軋む。


 唯の胸が締めつけられる。


 涙が滲むほどの圧。


「光ちゃん……戻ってきて……」


 その瞬間。


 黄金の光が不安定に揺らいだ。


 粒子が乱れる。


 ひび割れるように崩れ始める。


「……っ」


 光の身体がぐらりと傾く。


「光!」


 凛が駆け出す。


 オーラが霧散する。


 瞳から神秘の色が消える。


「……あ」


 力なく崩れ落ちる。


 凛が抱き止める。


 軽い。


 だが、さっきまでの存在感が嘘のように消えている。


「おい、光! 聞こえるか!」


 反応はない。


 深く、静かな呼吸だけ。


 唯が駆け寄る。


「光ちゃん……っ!」


 肩を揺らす。


 目覚めない。


 唯の声が震える。


「どうして……どうしてこんな……」


 凛は歯を食いしばる。


 恐怖ではない。


 理解できないことへの警戒。


「あれは……なんだった」


 アルテを見る。


 アルテは数秒沈黙する。


 やがて、いつもの調子に戻す。


「命に別状はないよ」


「力を使いすぎただけだ」


「使いすぎ……?」


 凛の声は低い。


「レベルアップの範囲じゃない」


 鋭い指摘。


 アルテは目を逸らす。


「……強い適性がある。それだけだ」


 それ以上は言わない。


 言えない。


 今は。


 唯は光の手を強く握る。


「無理させちゃった……私が……」


「違う」


 凛が即座に否定する。


「これは光の意思だ」


 だが胸の奥で、別の感情が渦巻く。


(あれは……俺たちの知らない何かだ)


 短剣がまだ微かに脈打つ。


 闇が静かにざわめいている。


 アルテだけが理解していた。


 今の一瞬で、何かが“目を開けかけた”ことを。


 だが、それを告げることはしない。


 まだ早い。


 均衡が、静かに揺れ始めている。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ