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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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どうやらここは異世界のようだ


まぶたの裏に、強い光が残っていた。


 次に目を開けたとき、視界いっぱいに広がっていたのは――青い空だった。


「……は?」


 雲が、やけに近い。


 いや、近いというより、澄みすぎている。


 身体を起こす。草の感触が手のひらに触れた。


 見渡す限り、広い草原。


 遠くには森。その向こうに、うっすらと山影。


「……夢じゃない、よな」


 頬をつねる。普通に痛い。


 指先に残る痛みが、やけに生々しい。


 あの蔵。白い扉。光。

 そして、彼女の真剣な表情。

「……マジで来たのか」


 風が吹き抜ける。草の匂いが鼻をくすぐる。


 遠くで鳥のような鳴き声が響いた。けれど、どこか聞き慣れない音色だ。


 本当に、知らない世界なんだと実感する。


 足元の土を握る。湿り気のある感触。爪の間に入り込む泥。


 現実だ。


 逃げ場はない。


 胸の奥がじわりと熱くなる。


 ――彼女は、どうしてあんな顔をしていた?


 あれは、ただの不安じゃない。


 覚悟の顔だった。


「……ちゃんと戻るからな」


 誰に聞かせるでもなく、空に向かって呟く。


 根拠なんてない。


 言葉にしなければ、足がすくみそうだった。

 

 怖くないわけがない。


 でも、不思議とどこか心地良く感じる。


 むしろ、妙に落ち着いている自分がいた。


 ポケットを探る。


 スマホは圏外表示。バッテリーも半分以下。


「役に立たなそうだな……」


 ため息をつきながら立ち上がる。


 そのとき。


 視界の端に、淡い光が浮かんだ。


 半透明の板のようなものが、空中に現れる。


「……は?」


 思わず声が漏れる。


 そこには文字が並んでいた。


 ――ステータス


 ゲームかよ。


 思わず苦笑する。


 だが、触れようとすると、指先が光をなぞった。


 本物だ。


 名前:凛

 種族:人間

 レベル:1


「……まあ、だよな」


 能力値らしき数値は、どれも平凡。


 特別強いわけでもなければ、弱すぎるわけでもない。


 正直、安心した。


 いきなり勇者とか言われても困る。


 画面の端に、小さな表示があることに気づく。


 ――アイテムボックス


「お、あるのか」


 意識を向けると、表示が切り替わった。


 中身は――


 干し肉が少量。


 木の棒。


「……それだけ?」


 思わず声が裏返る。


 いや、ゼロよりはマシだ。


 でももう少し何かなかったのか。


 剣とか、防具とか。


「世知辛いな……」


 肩を落としながら、木の棒を取り出す。


 手に持つと、やけに軽い。


 とりあえず装備してみるか。


 そんな表示が頭の中に浮かぶ。


「……装備」


 呟くと、木の棒が淡く光り、しっくりと手に馴染んだ。


「ほんとにゲームだな」


 苦笑する。


 でも、これは現実だ。


 遠くで、風が草を揺らす音がする。


 その奥から――


 風とは違う、別の気配を感じた。

 

 低い、唸り声。


 凛は顔を上げた。


 草原の向こう。


 何かが動いている。


「……いきなりかよ」


 木の棒を握り直す。


 心臓が早鐘を打つ。


 それでも。


 逃げようとは思わなかった。


「――やってやる」


 自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。


 知らない世界。


 知らない未来。


 それでも。


 前に進むしかない。


 草を踏みしめ、凛は一歩を踏み出した。


 それが、この世界での最初の一歩だった。

 

次回投稿は2月22日7時頃を予定しています。

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