遺跡の中
遺跡の中へ足を踏み入れる。
外の光とは対照的に、内部は静まり返り、厳かな空気に包まれていた。
高い天井。
整然と並ぶ石柱。
中央の祭壇。
そして奥には――両手を広げた女神像。
その前に、小さな光が浮かんでいる。
「遅かったね」
聞き覚えのある声。
「あの時の……」
「改めて名乗るよ。僕は光の使者、アルテ」
淡く発光する小さな存在は、感情をあまり乗せずに言う。
「君たちには、この世界を救ってほしい」
唯が一歩前に出る。
「理由を、きちんと聞かせて」
アルテは頷く。
「この世界は光と闇の創造主によって生み出された」
「当初、光と闇の魔力は均衡を保っていた」
「だが――闇の王が生まれた」
空気がわずかに重くなる。
「その瞬間、均衡は崩れた。闇は侵食を始め、光は防戦一方」
凛は静かに聞いていたが、ふと口を開く。
「……闇の王、ですか」
「そうだよ」
「その王を導く存在もいるんですか?」
何気ない問いのように装う。
アルテの視線が凛に向く。
「いる」
短い答え。
「闇の使者。王の代行者のような存在だ」
凛の胸が一瞬だけ強く打つ。
(やっぱりな……)
「へえ……」
あくまで興味本位のように頷く。
唯が横目で見る。
「凛くん、何か知ってるの?」
「いえ。ちょっと気になっただけです」
即答。
視線を逸らさない。
唯は数秒、じっと見つめる。
「……そう」
だが完全には納得していない。
アルテは話を続ける。
「この世界が崩壊すれば、次元の均衡が破れる」
「君たちの世界も無事ではない」
光が杖を握る。
「じゃあ、守らなきゃいけないんだね」
「そうだよ」
アルテは穏やかに言う。
「僕が導く。ついてきてほしい」
凛は迷わない。
守ると決めている。
「……いきます」
まっすぐに答える。
アルテがわずかに微笑む。
「覚悟はできているみたいだね」
「まずは遺跡を巡り、試練を受けてもらう」
「乗り越えるたび、君たちは強くなる」
「望むところです」
アルテが祭壇を指す。
「さあ、女神像の前に立って」
三人は並ぶ。
足元に光の紋様が広がる。
唯が小さく呟く。
「凛くん……本当に、隠してることない?」
「ありませんよ」
微笑んで返す。
だが胸の奥で、闇の名が響いていた。
「健闘を祈る」
光が溢れる。
視界が白に染まり――
空間が歪む。
転移が始まった。




