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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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旅立ち


 翌朝。


 三人は、はじまりの村エーシンを後にした。


「西へ向かうわ。私についてきて。」


 唯が先頭に立ち、歩き始める。


「本当に特定できてるんですか?」


「ええ。気配ははっきりしている。迷いはないわ」


「気配…ですか」


「疑ってる?」


「いえ。ただ、そこまで確信を持てるのがすごいなと」


 唯は少しだけ微笑む。


「これが私の役目だから」


 凛はその横顔を見て、何かを言いかけてやめた。


 森へ足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。


 湿った土の匂い。静まり返る鳥の声。


「来ます」


 凛が短剣に手をかける。


「囲まれてるわ。数が多い……」


 木々の間から魔物が姿を現す。


 二十を超える群れ。


 狼型が前へ、後方にはゴブリン種。


 さらに木の上から弓持ちが二体。


「連携してますね」


「油断しないで」


「してませんよ」


 凛は踏み込む。


 最前列へ一直線。


 喉元へ刃を滑らせ、一体沈む。


 背後から牙。


 振り向かずに後ろ蹴りで距離を取り、返す刃で切断。


 上空から矢。


 身体を捻り、矢を掴んで投げ返す。


 木上の魔物が落下。


「……なにこれ……冷静すぎる」


 唯が呟く。


 凛の呼吸は乱れていない。


 狼型が三体同時に飛びかかる。


 凛はあえて一歩引きつけ――


 地面を蹴る。


 すれ違いざまに三連撃。


 血が舞う。


 残りは後衛。


 複写したスキル試してみるか。


「みんな離れて!」


 凛から皆、距離を取る。


 凛が魔力を集中。


「灼熱の炎」


 一直線の業火。


 森を焼き裂き、残敵を飲み込む。


 爆音の後、静寂。


【灼熱の炎:残り2/3】


「1日3回か。便利だけど万能じゃない」


 光がぱっと明るくなる。


「レベル9!」


 唯も光に包まれる。


「……レベル12」


 だが視線は凛へ。


「凛くん」


「はい?」


「どうして、そこまで戦えるの?」


 凛は短剣の血を払う。


「怖くないの?戦うことが…」


「怖いですよ」


 即答だった。


「でも、みんなを守るって決めたから」


 光が嬉しそうに笑う。


「さすがお兄ちゃん!」


 唯は胸がざわつく。


 この成長速度。


 この戦闘勘。


 何かが噛み合いすぎている。


「……無茶はしないで」


「無茶はしてません」


 凛は空を見上げる。


「勝てる算段があるから動いてるだけです」


 その言葉に、唯はそれ以上何も言えなかった。


 森を抜ける。


 視界が開けた。


 白く光をまとった遺跡が姿を現す。


 崩れているはずの石が、神聖な輝きを放っている。


「……着いたわ。ここよ」


 唯の声が静かに響く。


 凛はその光を見つめる。


 胸の奥が、わずかに熱を帯びた。


 導かれるように、遺跡の入り口へ歩み寄る。

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