守るべきものが近くにいる
「あーーー!!!」
ギルドの入口から響いた大声。
凛が振り返った瞬間、小さな影が一直線に駆けてくる。
「お兄ちゃんっ!!」
勢いよく胸に飛び込んできた。
「どこにいたの!? 探したんだから! ここどこなの!? 怖かったんだよ!?」
「……光?」
腕の中の温もりは本物だ。細い肩が小刻みに震えている。必死に気丈に振る舞っていたのだろう。
「なんで……お前が」
光は涙をこぼしながら言う。
「学校帰りにお兄ちゃん見かけたから追いかけたの! そしたら変な扉に入って消えちゃうし! だから私も入ったら――お兄ちゃんいないんだもん!」
服を強く掴む。
「森みたいなところに出て、知らない人ばっかりで……声かけても変な目で見られるし……元の世界にも帰れないし……」
その言葉に、凛の胸が強く痛む。
自分が選ばれたことで、光まで巻き込まれた。
「……ごめんな。ひとりにさせて」
そっと頭を撫でると、光はぐしゃっと顔を歪める。
「もう置いていかないでよ……」
「置いていかない」
即答だった。
それが今できる唯一の約束。
「神社で一緒にいた女の人には会ったか?」
「会ってないよ! あの人誰なの!?」
じっと睨む。
「私のお兄ちゃんはあげないよ!!どこの誰なの!」
「……いつから俺はお前のものになったんだ……学校の先輩だよ。関係は……先輩後輩の関係?かな。」
「彼女とかではないんだね!ならいいや!」
そのやり取りに、周囲の冒険者たちから小さな笑いが起こる。
「兄妹か」「あの子かわいいな」 などとひそひそ声が聞こえる。
だが凛の心は静かに決まっていた。
元の世界に帰る方法は分からない。
情報もない。
だが――
「一緒に探そう。帰る方法」
「うん!」
迷いのない返事。
「お兄ちゃんと一緒なら大丈夫! もう離れたら嫌だからね!」
その言葉の重みを、凛は理解している。
守らなければならない。
戦う理由が増えた。
凛は受付へ向き直る。
「お姉さん、この子の冒険者登録もお願いします」
「あ、はい……了解しました」
少し戸惑いながらもカードを用意する受付嬢。
光が手をかざすと、カードが淡く光る。
「え……あなたの能力値も高いですね! Eランク相当の力があります!」
「え、私すごいの?」
「はい、通常はGランクからですので……かなり優秀です」
ギルド内が再びざわめく。
「兄妹そろって当たりかよ」「最近の新人どうなってんだ」
視線が刺さる。
凛は静かに告げる。
「この子と一緒に、さっきの討伐クエスト受けます」
ドラゴニル討伐。
難易度は高いはず。
だがもう迷わない。
守る存在がすぐ傍にいるのだから。




