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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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12/47

闇の使者が現れた


最奥の間。


 重い扉が閉じた瞬間、空気が変わった。


 濃密な闇が玉座のように凝縮し、やがて一人の男の形を取る。


 黒い外套。


 静かな佇まい。


 だが、立っているだけで空間が軋む。


「我が名は闇の使者ロギ」


 低く、底のない声。


「ここまでよく辿り着いた。お前が選ばれた存在として相応しいか、テストしてやろう」


 凛の喉が鳴る。


 今まで戦ってきた相手とは格が違う。


 圧だけで、膝が折れそうになる。


「一撃でいい」


 ロギは両腕を広げる。


「私の顔に当てられれば、合格としてやろう」


 簡単に言うな。


 視界に表示。


 ――残り時間:00:05:02


 時間がない。


「さあ、かかってこい」


 凛は歯を食いしばる。


 行くしかない。


 ジグザグにステップを踏み、軌道をずらす。


 距離を詰める。


 全力で槍を投げる。


「うおおおおお!」


 渾身。


 だが。


 ロギは片手で掴んだ。


 空中で、止めた。


「遅い」


 次の瞬間、投げ返される。


 速い。


 反応が間に合わない。


 右腕に突き刺さる。


「っあああ!」


 衝撃で崩れる。


「どうした? そんなものか」


 冷たい声。


「相手にならんぞ」


 視界の端にステータスが浮かぶ。


 Lv.80。


 数字が、絶望を可視化する。


 格が違いすぎる。


 勝てるはずがない。


 諦めるか――?


 心が揺れる。


 だが。


「諦めてたまるか!!」


 ポーションを飲み、立ち上がる。


 槍は引き抜けない。


 ならば素手だ。


 一直線に踏み込む。


「ほう、素手で来るか」


 拳を叩き込む。


 空を切る。


 避けられる。


 連打。


 かすりもしない。


 次の瞬間。


 腹部に、重い一撃。


 空気が全部抜ける。


 呼吸ができない。


 HP三割。


 右側から強烈な蹴り。


 吹き飛ばされる。


 壁に叩きつけられる。


 骨が軋む。


 HP一割。


 視界が赤い。


 ――残り時間:00:00:27


 秒が加速して減る。


 00:00:19

 00:00:11


 ロギがゆっくり近づく。


「もう終わりか。お前は相応しくないようだな」


 終わりか?


 違う。


 まだ、終わってない。


 その瞬間。


 ロギの歩みが、ほんのわずかに止まる。


 油断。


 わずかな隙。


「――諸刃の剣」


 残った力を無理やり解放する。


 折れていない腕で床を全力で殴る。


 石が砕ける。


 破片が宙に舞う。


 視界が乱れる。


 瞬時に槍を装備。


 全神経を一点に集中。


 ――残り時間:00:00:03


「いけええええええ!!」


 投げる。


 石片の隙間を縫う軌道。


 ロギが目を細める。


 わずかなズレ。


 槍が頬をかすめる。


 凛のHPは1。


 膝が崩れる。


 視界が暗転しかける。


 ――残り時間:00:00:01


 止まる。


 静寂。


「……いや」


 ロギの声。


 凛は薄く目を開ける。


 ロギの頬から、血が一筋流れていた。


 確かな傷。


 ロギは口元を歪める。


「おめでとう。合格だ」


 時間表示は 00:00:01 のまま固定。


 本当に、あと一秒だった。


 全身から力が抜ける。


 凛はその場に崩れ落ちた。


 ロギが見下ろす。


「覚えておけ。お前はまだ弱い」


 だが。


「可能性はある」


 闇が霧散する。


 凛の意識が沈む。


 最後に見えたのは、愉しげに笑う闇の使者ロギの姿だった。

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