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どうやらこの世界は彼女の知る世界とは違うらしい  作者: カヲカヲ


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闇の城に転移したようだ


 光が弾け、荒野が消える。


 次に凛が立っていたのは――


 巨大な城門の前だった。


 空はない。


 頭上には、渦巻く黒雲。


 目の前には、闇に溶け込むような漆黒の城。


 塔は鋭く空へ突き刺さり、壁面には不気味な紋様が浮かび上がっている。


「……城?」


 視界に表示が浮かぶ。


 ――最終試練開始

 ――制限時間:24時間

 ――ボスを討伐せよ


「やっぱり、そう来るか」


 シンプルすぎる条件。


 だが、重い。


 続けて表示。


 ――ダンジョン支給品:ポーション×10


 足元に光が集まり、小瓶が出現する。


 赤い液体。


「ありがたいけど……足りるか?」


 凛は深呼吸する。


「まずは体勢を整える」


 焦って突っ込むのは悪手だ。


 アイテムボックスを開く。


 先ほどの戦闘のドロップ品を確認。


 ボスゴブリンのローブ。


 粗い布だが、防御力は今の装備より上。


 すぐに装備。


 身体が軽く包まれる。


 次。


 投げたはずの槍。


 アイテムボックス内に戻っている。


「回収処理済み、ってことか」


 槍を装備。


 安心感が戻る。


 さらに、ゴブリンのこんぼうとゴーレムの破片。


「……合成、できるか?」


 意識を向ける。


 ――合成可能


 光が走る。


 完成。


 丈夫なこんぼう。


 重さと硬度が増している。


「悪くない」


 近接用に背負う。


 準備は整った。


 凛は城門を見上げる。


「……さあ、行こう」


 一歩踏み出す。


 門をくぐった瞬間。


 背後で轟音。


 ドアが勢いよく閉まる。


 振り返るが、開かない。


「戻れない、か」


 城内は紫がかった霧に包まれていた。


 視界が悪い。


 魔力が濃い。


 嫌な空気だ。


 霧の奥から、金属音。


 ガシャン。


 ガシャン。


 現れるのは――鎧騎士。


 空洞の兜。


 赤い光が揺れる。


「……何体いるんだよ」


 一体。


 二体。


 霧の奥から次々と。


 凛は槍を構える。


 踏み込み。


 喉元を貫く。


 光となって消える。


 だが。


 表示は出ない。


 レベルアップの通知もない。


「……?」


 次。


 次。


 何体倒しても同じ。


 経験値が入らない。


「ここは……経験値がない?」


 つまり。


 消耗戦。


 体力だけが削られる。


 鎧騎士の剣が肩をかすめる。


 ポーションを一本。


 傷が塞がる。


「ちっ……」


 無駄に消耗できない。


 突破優先。


 戦わず、最短で抜ける。


 霧の隙間を縫う。


 階段を発見。


 一階突破。


 


 二階。


 空気がさらに重い。


 低い唸り声。


 霧の中から現れたのは――


 黒いファング。


 牙を剥き、影のように揺らぐ。


 複数体。


「来い」


 槍を振るう。


 直撃。


 だが。


 手応えがない。


 肉を裂いた感触がない。


 黒い霧が散るだけ。


 すぐ再生する。


「再生……?」


 囲まれる。


 噛みつき。


 腕に痛み。


 ポーション、二本目。


 戦いながら、観察する。


 ファングの動き。


 そして。


 影。


 影が、伸びている。


 城の奥へ。


 一本の糸のように。


「……操られてる?」


 凛は影の先を追う。


 奥。


 玉座の間ではない。


 階段横の広間。


 そこに――


 黒いローブの魔導騎士。


 杖を掲げ、影を操っている。


「元凶はお前か」


 一直線。


 槍を投げる。


 魔導騎士が振り向く。


 だが遅い。


 貫通。


 ローブが崩れる。


 同時に。


 ファングが霧となって消えた。


「……ビンゴ」


 息が荒い。


 ポーション残り七。


 時間も削られている。


 三階へ続く階段。


 上る。


  霧が濃くなっている。


 さっきよりも視界が狭い。


 天井のどこかで、鐘のような低い音が鳴る。


 ゴォン――。


 視界に文字が浮かぶ。


 ――残り時間:12時間00分


「……もう半分?」


 思わず足が止まる。


 体感では、まだ数時間のはずだ。


 だが表示は無情。


 さらに下へ、小さく追加表示。


 ――経過速度補正:上昇


「は?」


 意味を理解する前に、数字が減る。


 11:59:58

 11:59:57


 早い。


 わずかに、早い。


 時間の進みが加速している。


 焦りが喉を締めつける。


 ポーション残り七。


 鎧騎士に削られた分は完全には戻っていない。


 肩が重い。


 呼吸も浅い。


「消耗させるための階層かよ……」


 経験値は入らない。


 強くもならない。


 ただ削られるだけ。


 時間も、体力も。


 城そのものが、挑戦者を摩耗させる構造。


 階段を上るたび、鐘の音が鳴る。


 ゴォン――。


 表示が一瞬、赤く点滅する。


 11:32:14


「くそ……!」


 焦れば判断が鈍る。


 だが、焦らせる設計だ。


 三階に辿り着いた頃には、喉が乾ききっていた。


 ポーションを一本、使うか迷う。


 残り六。


 ボス戦前だ。


 使えない。


 使いたくない。


 だがHPは七割。


 中途半端。


 時間がまた減る。


 11:05:02


 鼓動が速くなる。


 扉の前に立つ。


 巨大な黒鉄。


 向こうから、圧が漏れている。


 強い。


 確実に、今までより格上。


 表示が、赤く染まる。


 ――残り時間:10:59:59


 十時間台に落ちた。


 数字が精神を削る。


 凛は歯を食いしばる。


「……上等だ」


 時間に追われている。


 余裕はない。


 逃げ場もない。


 それでも。


 止まる選択肢は、ない。


 槍を握る手に力を込める。


 そして――


 扉に手をかけた。


 


 重い音を立てて、ゆっくりと開く。


 闇で視界視界が満たされた――

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