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最終章 引退の日

渡り廊下の先で、先輩の背中が止まった。

今日は、いつも見るジャージ姿じゃない。

制服を着ている背中は、少しだけ遠く見えた。

「今日で……終わりなんだ。」

先輩はそう言って、静かに笑った。

その笑顔が、最後だと分かってしまった。

何か言わなきゃ、と思ったのに、声は出なかった。

代わりに、胸の奥が、静かにふわっと熱くなる。

気づいたら、ずっと好きだった。

過去形にしなきゃいけないほど、ずっと長い時間。

先輩と話せただけでも、

同じ場所にいられただけでも、

それはきっと、幸せだった。

先輩が前を向いて歩き出す。

少しだけ振り向いた気がした。

風が、私の周りを囲うように通り抜ける。

(佐倉先輩。私は、佐倉先輩に恋をして、幸せでした。)

声にならないまま、心の中でつぶやいた。

走るのが好きで、いつも少し掴めなくて、

気づくと、遠くへ行ってしまう。

それでも、全部が好きだった。

――さあ、前を向こう。

今日から、また新しい日が始まる。

そして今日は、夕焼けがやけに綺麗だった。

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― 新着の感想 ―
続編が作れそうな終わり方だったから続編か後日談があったらいいなぁーと思ってしまった。締め方もすごく良かった。これからの活動も期待してます!
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