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普通の村娘ですが変態に追われています

作者: ひななん
掲載日:2025/11/22

初めて書いた作品です。誤字脱字等あると思います。

楽しんでいただけたら幸いです。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



助けてください。ミア(17歳)人生最大のピンチです。


**********************************

あたしの名前はミア。平民なので名字はない。ちっちゃな村でじーちゃんばーちゃんと暮らしてる。


パパンとママンは私がある程度の年になったので2人で憧れの海沿いでの暮らしをするために移住してしまった。


残されたあたしはじーちゃんばーちゃんと一緒に畑を耕したり、森で木の実を採ってきたりして暮らしてる。


今日もお気に入りのワンピースを着て三つ編みにリボンを付けて森に入って木の実を拾って帰るつもりだったのに…


**********************************

「いやぁぁぁぁぁぁ!やめてー!来ないでー!」


普段はうさぎとリスと小鳥位にしか会わない森の中であたしは半裸の変態男に追いかけられていた。

よりによって同じくらいの歳の。

村には若い子はあたししかいない。男の人はおじいちゃんかおじさんかちびっこ。

よって半裸の変態男(若者)に追いかけられるのは人生で初めての経験だった。(若者じゃなくても追いかけられた事はない。村のみんなの名誉のために言っておく。)


「待って…!話…!!聞いて……!!!」


半裸の変態が何か話かけてくるが聞いてる余裕はない。拾った木の実を投げつける。勿体ないが背に腹は代えられぬ。


「いたいっ…!!意外といたいっ……!」


効果はあったみたいだ。田舎の娘を舐めるなよ!

あたしが本気で走ると変態との距離がどんどん開いていく。この森は知り尽くしてるんだ。地の利は我にあり。


あっ。変態が転んだ。


腕が変な方に曲がってる…。魔法が使えたらこの場で治せるんだけど、残念ながら村まで戻らないと魔法を使える人はいない。

このまま捨て置く訳にもいかないのでとりあえず村に連れて帰ることにした。


「あのー…大丈夫…?」

あたしが声をかけると変態は呻きながら返事をする。


「あ…大丈夫…じゃないです…。」

顔を上げた変態を改めて見るとふんわりしたウェーブの黒髪に黒い目、ぼろぼろのメガネをしていた。顔の造形は良いのだが全体的な雰囲気がもっさりしている。体つきも筋肉がなくヒョロっとしていた。

よく見ると足元は室内履き、ズボンはさっき転んだ汚れだけじゃないように見える。


腕には拾った枝とあたしが髪にしていたリボンを巻いて応急処置をし、半裸のままだと目のやり場に困るので持っていたバスケットから疲れたら座るのに使おうと思っていた布を取り出し体に巻いてもらった。


あたしが変態を家に連れて帰るとじーちゃんがびっくりしすぎてしりもちをついていた。そりゃそうだ。孫が急に上半身にピンクの布を巻き付けた変態を持って帰って来たら誰だってびっくりする。


変態は思いの外礼儀正しく椅子にちょこんと座って小さくなっていた。

腕は脱臼していたようでしりもちから回復したじーちゃんがぐいっと入れたら収まった。


「で。何で森の中で服脱いでたの。てかあなた誰?」


「まず、ここまで案内してくれてありがとう。僕の名前はリツ。年は25歳。気付いたらあの森の中にいて、シャツはぼろぼろになってたから脱いだ。立ち尽くしていたら偶然君が通りかかったからここがどこか聞きたくて…怖がらせたよね…。ごめん…。」


まさかの結構歳上であった…。変態…もといリツさんはますます小さくなっていた。


メガネをしている所から見るにそこそこの金持ち。

リツさんの処遇をどうするかじーちゃんと顔を見合わせていると、近所のお婆さんとお茶をしに行っていたらしいばーちゃんが帰ってきた。そして、リツさんを見るとしりもちをついた。似た者夫婦か!


「ミアが!ミアが婿さん連れて来た…!!!」

…とんでもない勘違いが起こっている。

「違う!ばーちゃん!違うから!!森で拾ったの!!」

「森で婿さん拾って来たんか…!?」

…違うってば。


リツさんを見るとますます小さくなっていた。そろそろ消えてしまう。


ばーちゃんを落ち着かせ、リツさんに改めて話を聞く。


要約すると、リツさんは王都の魔道師見習い。転移の魔法を使おうとしていたところ途中でくしゃみをして暴発してしまい、服はぼろぼろ転移先は間違える、暴発により魔力も一時的に少なくなりどうにもならなかったところであたしを見つけて追いかけた。

ということらしい。


…魔道師見習いって貴族じゃなくてもなれるけど結構地位高めなのでは…?しかも失敗したとはいえ転移魔法使えるってことはかなりできる人なのでは…?そんな人に木の実ぶつけたあたしもしかしてやばいのでは…?

ここまでの思考が済むと急に今まで私の口から飛び出た失礼な発言が思い浮かぶ。


「…さっきは木の実ぶつけてごめんなさい!」

リツさんに頭を下げるとふんわりと笑いながら

「裸の男が追いかけてきたら誰だってびっくりしますよ。むしろ対策を取れて立派なお嬢さんだと思います。転んだところももう痛く無いですし。」

と言ってくれた。よかった。すごくいい人なのかもしれない。


「痛くないならもう帰れますね!要するに暴発しなきゃ転移できるって事ですもんね!」

そう、リツさんの背中をぐいぐい押しながら話しかける。なるべく早く帰ってもらった方がいい。これ以上の失礼を重ねる前に。


「いや…暴発したときに魔力が限りなく少なくなったから…多分1ヶ月は転移はできないんです…。ちょっと残ってた魔力も転移に失敗したときに連絡で使っちゃった…。」

リツさんがほとんど消えかけながら話す。


「歩いて帰るしかないかなぁ…。」


「まずここがどこか分かってないですよね?」

リツさんにこの村の場所を説明する。村から王都まで徒歩だと3週間はゆうにかかる。今の魔力無しのリツさんではもっとかかるだろう。一番近くの街に行けば馬車もあるが街までも1週間はかかる。


「パパたちの離れに泊まったらいい。」

横からばーちゃんが口を出す。じーちゃんもうんうん頷いている。

「うちにこの子の父母が住んでた離れがあってな。もう移住して戻る予定なんてないから遠慮なく泊まっていけばいい。」

…ばーちゃん!そこはあたしも住んでいますが!?


「え!いいんですか…!」

リツさんのメガネの奥の目がキラッと輝いた。


よくないよ!年頃の娘さんと1つ屋根の下はよくないよ!


「あ、でもミアさんが気を使うのでは…?」 

よっしゃよく言ったリツさん!!!


「いやいや、ミアは気にせんから大丈夫。なあミア。」

じーちゃんが言う。

みんなの視線がこちらに集中する。

「ミアさん…どうですか…?」

リツさんの困り顔に堪えかねてあたしは頷いてしまった。


**********************************

こうしてリツさんとの同居生活が始まった。


リツさんは多分地位が高い人なのになんでも手伝ってくれる。

「ただで置いていただく訳にいかないので。」と言っては薪割りや畑仕事、じーちゃんの品物を運ぶなどのあたしでは難しい仕事も今までやったことなんて無いだろうにこなしてくれていた。


また、意外とよく笑う。笑うと目尻がフニャっとして普段から優しそうな顔がますます優しくなる。不覚にもキュンとしてしまった。


物静かだが話しにくい事もなく、あたしの話も穏やかに聞いてくれる。

一緒に暮らすうちにあたしはどんどんリツさんに惹かれていった。


じーちゃんもばーちゃんもすっかりリツさんが気に入ってしまい「本当にミアの婿にならないかねぇ。」とリツさんに話しかけている始末。

リツさんは穏やかな笑顔で「ミアさんにはもっと良い人ができますよ。僕はミアさんからしたらおじさんなんで。」と答えていた。

…完全に子ども扱いされている。




うだうだ考えているのは性に合わないのでリツさんから子ども扱いされない大作戦を決行してみた。


手始めにいつも三つ編みにしている髪をハーフアップにしてリボンもリツさんの髪と同じ黒にしてみた。リツさんイメージでオーガンジーのふわふわリボン。栗色の髪にリボンが映えてなかなかいい感じだ。毎回お手紙と一緒にリボンを送ってくれるママン、ありがとう。

「ねぇねぇリツさん!見てください!」

リツさんに見せに行く。


「あ、いつもと違う髪型なんですね。素敵ですよ。」

リツさんはいつもと変わらない笑顔でそう言ってくれた。


あたしの顔が真っ赤になる。「ありがとうございます!」そう言って逃げてきてしまった。


作戦失敗である…。


一つ屋根の下を利用して薄着作戦もしてみた。リツさんがすごく心配して自分の分の服を着せようとしてくれるので申し訳ない上に恥ずかし過ぎるのでやめた。



**********************************


リツさんが暮らし始めて3週間がたったころ、じーちゃんが近所の人からもらってきたお酒をリツさんと2人で飲んでいた。 


「リツくんもだいぶ村になれたのぅ。いっそこのままミアと結婚したらどうじゃ。わしは本気だぞ。」

「申し訳ないですが、王都での仕事がありますのでずっとここにはいられません。それに前にも言いましたがミアさんにとっては僕は急に追いかけてきて居座ってるただのおじさんですよ。」

「ミアはきっとリツくんの事を好きだと思うがなぁ。リツくんはミアの事をどう思っとるんじゃ。」


この先は聞く勇気が無くてあたしは先に離れに戻ってしまった。 


2時間程経ってからじーちゃんがぐでんぐでんのリツさんを離れに運んできた。

「飲ませ過ぎちゃったなぁ」

そう言って置いていく。

「リツさーん!リツさーん!大丈夫ですか!?」

肩を叩くとリツさんが目を開ける。

「ミア…髪…かわいい…」

そう言ってトロンとした目であたしの髪を撫でている。…すごく恥ずかしい。時々手が耳を掠めてくすぐったい。あたしよりずっと手が大きいんだな、なんて当たり前みたいな事を考えていると髪を撫でていた手がほっぺたに添えられる。

「ミアちゃん…僕と一緒に…」

心臓が飛び出そうなくらいドキドキしている。

どんどんリツさんの顔が近づいてくる。

…思わず目をつぶった。

次の瞬間、リツさんがあたしの肩に埋もれて寝息をたてていた。


「リツさーん…?」

何度呼び掛けても起きない。仕方なくがんばって布団まで運んだ。


翌朝リツさんは「昨日飲み過ぎちゃいました…。」と言いながらばーちゃん特製の二日酔いに効くスープを飲んでいた。

…その日からリツさんはあたしの事を「ミアちゃん」と呼ぶようになった。


**********************************


そんなこんなしているうちに1ヶ月がたち、リツさんの魔力も戻り王都に戻る日がやって来た。「いつでも遊びにおいで。待ってるからね。」

「はい。ありがとうございました。」

「ほれ、ミアも。」

ばーちゃんに促され前に出る。

「あの…!………お元気で…。」

「…ありがとう。…ミアちゃんもお元気で。」


そしてリツさんは王都に帰って行った。


こうしてあたしの初恋は幕を閉じた…はずだった。


**********************************

「なぁ、ミア。王都の古い友人に届けて欲しい物があるんじゃが、お願いできるか?」

リツさんが帰ってから半月、ずっとボーッとしているあたしにじーちゃんが言った。


「それにな、思いを伝えずに別れるのは辛い事だぞ。当たって砕ければすっきりする。」

…じーちゃんはお見通しみたいだ。


じーちゃんから荷物を預かり、お気に入りのリネンのワンピースとオーガンジーの黒のリボンを鞄に詰め込んで近所のおじさんと一緒に馬に乗る。街まで連れて行ってもらうのだ。


街について馬車に乗り換える。王都が近づくにつれ、緊張してきた。



**********************************


初めての王都は想像以上にキラキラしていた。にぎわう大通り。たくさんの人。かわいい服を着て歩く女性たち。

…お気に入りのリネンのワンピースもリツさんと同じ黒のリボンも急に色褪せて見えた。


じーちゃんから聞いた住所に行くと古くからの友達だという老夫婦が住んでいた。

じーちゃんから預かった物を渡し、魔術研究所の場所を聞いてみる。幸い、老夫婦の家の近くだった。


会いに行こう。そう決めてふと気付く。…あれ、全然考えてなかったけど25歳の魔術師見習いなら婚約者いるんじゃない…?

…やだ…気付かなきゃよかった…婚約してるかどうかくらい聞けばよかった。

…そう思った…けれどこのままは帰れない。思いをぶつけてすぐに帰ろう。

…好きでした。そう言ってすぐに帰ればいい。


あたしは魔術研究所の入り口に立っていた。このまま5分くらい動けずにいる。意を決して動こうとした時、誰かの走る音が聞こえた。

気付くと誰かに抱きしめられていた。

「えっ!誰ですか!!!離してください!!!」


「やっと会えた。」

上から懐かしい声が聞こえる。

「ミアちゃんのおじいさまとおばあさまに挨拶しに行ったら王都に行ったって言われて…。王都中探し回ってやっと見つけた…。」

リツさんはあたしを離すと泣きそうな目で見ている。


「えっと…リツさん。あたし、リツさんの事好きです。」

「僕も、ミアちゃんの事が大好きです。僕のお嫁さんになってくれませんか??」

あたしの目からも涙がこぼれて来た。


「喜んで。」


**********************************


無事再会したあたしたちは改めてじーちゃんばーちゃんに挨拶に行った。じーちゃんは「こうなるって分かってた」と言って笑っていた。ばーちゃんは泣きながら笑っていた。


「ねぇ、リツさん?あたしの事、いつから好きだったんですか?」

「ん?助けてもらった時からずっと。でも僕はミアちゃんに比べてだいぶ歳上だし、おじさんから好かれても迷惑だろうなって思ってミアちゃんを好きな気持ちは墓場まで持っていこうって思ってた。だけど王都に戻ってきて、ミアちゃんと離れたら寂しくて、ミアちゃんが誰かと結婚することを考えたらムカついて。意を決しておじいさまにミアちゃんをくださいって言いに言ったらミアちゃんいないし。…ところでいつまでさん付けのままなの…?」


「…リツ…?」

そう呼ぶとリツさんは嬉しそうに髪を撫でていた。


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