死にたいと言ったら猫に殴られた
もう夜にゃ。いいか、もう夜にゃ。電気を消すにゃ。じゃないと畳をガリガリひっかくにゃよ。
「それはやめて」
じゃあ、寝るにゃん。明日月曜日だからって逃げるにゃよ。明日の天気は悪いらしいにゃ。私の毛も纏まらなくてテンション下がるのにゃ。
それでも、全力で暇つぶしをするにゃんよ。生きてる実感を感じるために。どうにゃ、人間。お前より私は凄いのにゃ。
「猫のくせに」
うるせーにゃ。
ベッドの中でゴロゴロ腹の虫鳴かせてたお前と違って、ご飯も自分で食べたし、おやつだって全力で貰いに行ったにゃ。
お前は生きる力が弱いにゃん。
そんなじゃ死んじゃうのにゃ。
「死んでもいいよ」
じゃあ引っ掻いてやる、えいにゃ!
「いて!」
もう一発やってやろうかにゃ?
「や、やめろ〜」
なんにゃ、死にたいんじゃにゃいの? 猫の引っ掻きも、致命傷になることがあるにゃ。人間は貧弱だからどんなものでも死ねるにゃよ。
「えっと、すぐ死にたい訳じゃなくて」
じゃあ、どうして『死んでもいいよ』と言ったのにゃ? 何か諦めてるのにゃ。負のオーラまとってるお前は少しイライラするにゃん。
えい、パンチ食らわすにゃん。
「いって!」
ふぁぁ〜あ。
私は眠くなってきたのにゃ。寝かせるにゃ。
「僕は希死念慮で寝れないのに」
知るか。
薬飲んで寝て明日別人になればいいのにゃ。そのたびにチャンスや転機がおとずれるにゃ。慎重に大切に過ごせば、報われる日が来るにゃ。
猫は寝たい。お前も寝なきゃ今のまま微妙な結果を引きずるにゃ。お前が寝たら私も寝れるのにゃ。
私を寝かせるにゃ。
寝かせろよぅ!
「……わかったよ」
◇
僕は、電気を消してベッドに潜った。本当の自分が分からない。でも猫は、今の僕を見てくれている。それが、なんだか嬉しい。
そして僕は明日を通じて別人格になる。信頼できない自分と一生付き合っていくことに疲れてしまう。でも猫は、僕の核となる部分を見ている。
ありがとな猫。
僕は自分では『僕』がわからない。きっと周りの人のほうが知ってるんだろう。
生意気な猫。それでも一緒に話してくれてありがとう。美味しいおやつ用意するからな。お前になら父さん母さんたちにも言えないことを言えるんだ。
情けないという視線を向けて話を聴く猫。それでも最後まで話を聴いてくれて、ありがとう。
おしまい
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