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死にたいと言ったら猫に殴られた

作者: 白夜いくと
掲載日:2025/10/19

 もう夜にゃ。いいか、もう夜にゃ。電気を消すにゃ。じゃないと畳をガリガリひっかくにゃよ。


「それはやめて」


 じゃあ、寝るにゃん。明日月曜日だからって逃げるにゃよ。明日の天気は悪いらしいにゃ。私の毛も纏まらなくてテンション下がるのにゃ。


 それでも、全力で暇つぶしをするにゃんよ。生きてる実感を感じるために。どうにゃ、人間。お前より私は凄いのにゃ。


「猫のくせに」


 うるせーにゃ。

 ベッドの中でゴロゴロ腹の虫鳴かせてたお前と違って、ご飯も自分で食べたし、おやつだって全力で貰いに行ったにゃ。


 お前は生きる力が弱いにゃん。

 そんなじゃ死んじゃうのにゃ。


「死んでもいいよ」


 じゃあ引っ掻いてやる、えいにゃ!


「いて!」


 もう一発やってやろうかにゃ?


「や、やめろ〜」


 なんにゃ、死にたいんじゃにゃいの? 猫の引っ掻きも、致命傷になることがあるにゃ。人間は貧弱だからどんなものでも死ねるにゃよ。


「えっと、すぐ死にたい訳じゃなくて」


 じゃあ、どうして『死んでもいいよ』と言ったのにゃ? 何か諦めてるのにゃ。負のオーラまとってるお前は少しイライラするにゃん。


 えい、パンチ食らわすにゃん。


「いって!」


 ふぁぁ〜あ。

 私は眠くなってきたのにゃ。寝かせるにゃ。


「僕は希死念慮で寝れないのに」


 知るか。

 薬飲んで寝て明日別人になればいいのにゃ。そのたびにチャンスや転機がおとずれるにゃ。慎重に大切に過ごせば、報われる日が来るにゃ。


 猫は寝たい。お前も寝なきゃ今のまま微妙な結果を引きずるにゃ。お前が寝たら私も寝れるのにゃ。


 私を寝かせるにゃ。

 寝かせろよぅ!


「……わかったよ」




 僕は、電気を消してベッドに潜った。本当の自分が分からない。でも猫は、今の僕を見てくれている。それが、なんだか嬉しい。


 そして僕は明日を通じて別人格になる。信頼できない自分と一生付き合っていくことに疲れてしまう。でも猫は、僕の核となる部分を見ている。


 ありがとな猫。

 僕は自分では『僕』がわからない。きっと周りの人のほうが知ってるんだろう。


 生意気な猫。それでも一緒に話してくれてありがとう。美味しいおやつ用意するからな。お前になら父さん母さんたちにも言えないことを言えるんだ。


 情けないという視線を向けて話を聴く猫。それでも最後まで話を聴いてくれて、ありがとう。



 おしまい

最後まで読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
 悲しみが怖れを呼び、怖れが喜びを忘れさせる、そんな感じなのでしょうか。  なるほど五行思想ではないですけど、感情は感情に従い巡るようです。  ならばここは楽しいことを探しましょう。喜びは悲しみを忘れ…
 そんな感じでいいと思います。私もそうですが「悪い展開」ばかり想像して勝手に怯えてます。だいたい取り越し苦労だったり、想像通り悪い展開になってもどうにかなってます(`・ω・´)ゞ
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