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第六節 暗号通貨バブルとマスコミの反応

 ケオエコで本当に最初期のプレイヤーは、即座に『公式売買所』で手に入れたゲーム内通貨を暗号通貨に交換していた。

 しかし、徐々に「食糧」の大切さが広まって、ゲーム内通貨も安易に暗号通貨交換とはいかなくなった。

 今の所『公式売買所』でしかゲーム内通貨は増えないし、今やほとんどのプレイヤーは『公式売買所』を使わない。

 そしてプレイヤーとして「食糧」を得るためには、モンスター素材は…特に食糧になる部分は、生産職に売る必要がある。

 そうして、ゲーム内通貨が増えないことで、ケオエコ内ではゲーム内通貨によるスタグフレーションを起こしていた。


 しかし最初期のプレイヤーの各種暗号通貨交換の影響で、現実世界では暗号通貨バブルが発生していた。

 マスコミ報道は、この暗号通貨の高騰を報道するが、それに対しては賛否両論だった。

 まさに、その暗号通貨に関する討論番組が大反響を呼び、動画サイトにも違法アップロードされる程だった。


 その『徹底討論!暗号通貨とケオエコ』と題された報道番組はでは、白熱した議論が巻き起こっていた。


「ケオエコと呼ばれる『Chaos Economica ~Bleak Rules~』の影響で、暗号通貨市場が活性化していますね」

「ですが、一ゲームであるケオエコがここまで現実社会の暗号通貨に影響を与えることには懸念を覚えます」

「いえいえ、どんな理由であれ、暗号通貨活性化自体は、経済に好影響を与えるでしょう!」

「お忘れですか、かつて暗号通貨バブルとその崩壊で多くの人が辛酸を舐めた事実を!」

「あの大手のリオンデックスと実力派のミュークシスも参入、これは時代の流れでしょう!」

「企業参入が全て正しいとは限らないじゃないですか!」

「いいえ、時代は変わるんです!」

「時代が変わるとして、それに適応できない人々はどうするんですか! 社会的な混乱を避けるための対策は必要です!」

「だからこそ、この新しい波にどう向き合うかを学ばなければならないのです。それはゲームではなく、私たち自身の未来なんです!」


 これに始まる大討論については、ケオエコプレイヤーは概ね暗号通貨市場活性化支持になり、ケオエコをプレイしていない人々の多くは慎重派に賛同した。


 『徹底討論!暗号通貨とケオエコ』とは別番組の、落ち着いた雰囲気の討論番組でもこのように有識者も警鐘を鳴らし始める。


「通称ケオエコは、現実と仮想の境界を曖昧にしている、これは現実への侵食そのもので、危険な兆候だ」

「暗号通貨バブルは、まさにゲームの現実世界への侵食ですね」

「もはや、ケオエコはゲームとは呼べないのではないか、技術者雇用まで発生していますし…何より既にケオエコのプレイヤーは最低でも数十万人、一部の調査によれば百万人も突破していると」

「ゲーム内で技術者雇用が発生することは、現実世界との境界を曖昧にし、経済の独立性に影響を与えるのではないか?」

「逆に考えれば、技術者雇用は新しい雇用機会を生み、現実の経済を支えるポジティブな側面もあるのではないでしょうか」


 この有識者の発言は、ケオエコプレイヤーの大半にとって深刻な問題とは考えられず、ケオエコに触れていない人々にケオエコへの不信感を高める結果となった。

 しかし、SNS利用者の多くが既にケオエコに熱中している中、SNSではまともな議論も成立していなかった。というかケオエコプレイヤーのほとんどはこのような討論番組を見てすらいなかったのだ。


「ケオエコを通じたマネーロンダリングのリスクも、未だ残っているのではないか」

「いや、ゲーム内通貨から暗号通貨への一方通行なので、マネーロンダリングのリスクは相当低く抑えられているでしょう」

「違法取引として協力者と共に、ケオエコでマネーロンダリングができるじゃないですか」

「それはゲームをプレイして得た、正当な報酬であるという契約に基づいていますよね」

「これは、ある意味で各種暗号通貨よりゲーム内通貨の方が価値を持つ結果に繋がるのでは!」

「だから何だというのです、ゲームの通貨では現実に買い物なんてできないんですし」

「しかしですよ!セキュリティソフトによれば無断の暗号通貨マイニングが行われているという検出結果も!」

「それはプレイヤーが同意した契約の、自己責任原則の話でしょう」


 こんな経済的な討論番組もあったが、こちらはほとんどのケオエコプレイヤーの興味を引かなかった。


 街頭インタビューでも、このように戸惑い混じりの声が多かった。


インタビュアー「ケオエコ、始めようと思いますか?」

通行人A「やってみたいけど、怖くて手が出せない……」

通行人B「友達がケオエコで生活費稼いでるって聞いて、正直羨ましい」

通行人C「もう現実よりゲームの方が稼げるとか、何かおかしいよね」


羽手名「なんか、この論調は…マズい気がするな…」

「いやいや、ケオエコプレイヤーは未だに増加傾向だし、我が社としては万々歳じゃないか!」

羽手名「暗号通貨に、電脳麻薬カンパニーが直接関与しているというのが、結構マズい気がするんだよなぁ」

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