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電脳麻薬カンパニー狂騒曲 ~快適に転がり落ちるディストピア~  作者: もりゃき.xyz
第六章 デモクラティック・オブ・ケオエコ
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第四節 三人組の暗躍

 『内閣情報調査室』に所属した三人は、当初は戦々恐々であった。

 しかし、上がってくる警察官からの情報を見ているうちに、怪しい内容が案外簡単に分かることに安堵していた。


桃雄「なあ、これ明らかに外国人プレイヤーの吹っかけだよな」

雛太郎「アドバイザーとして断言できるな……あまりに相場をかけ離れすぎている」

百合男「まずは、彼らがデモケオ民かどうかの調査、違うのであれば入国禁止処分でいいだろう」


 この指示が飛んで、すぐに警察官が対応して、デモケオ民を偽った者だったことが判明し、入国禁止処分とされた。

 民間人の交易自体は禁止されていない、しかしデモケオ民を偽った場合は重罪だ。今後彼らは二度とデモケオに入国できない。


桃雄「おい、これどう思うよ」

百合男「いや、どうもこうも不法入国にしか見えないが」

雛太郎「ちょっと待て、奴らは他国民だ!」

百合男「な……!じゃあ今までのような対応は……」

桃雄「まあ、無理だろうな……他国民については、不法入国者でも慎重に扱わなければならない……くそっ!」


 そこに姫子が入室してきた。


姫子「どうしたの?疲れた?おっぱい揉む?」

雛太郎「姫子さんのおっぱいなんてどうでもいいんですよ、他国民案件です」

桃雄「これがただの不法入国であれば、軽くあしらえたものを……」

百合男「まあ、ちょっと困っていたんです、姫子さんの意見を」

姫子「何よ、そんなにわたしのおっぱいは魅力がないって言うの?写メ送りつけてやるから連絡先よこしなさい!」


 しかし、姫子は問題の書類に目を通すとすぐに鋭い目になった。


姫子「またこいつらか……ごめん、ちょっと席を外すわね」


 そうして立ち去る姫子と、それに戸惑う三人組。

 やがて『ああああ』を連れて姫子が戻ってくる。


姫子「ねえ、流石に他国民不法入国者を、今のままの対応にするのは限界だと思うんだけど?」

ああああ「確かにその通りだ。そろそろ国会が動くべき案件だろうな、ありがとう姫子さん」

姫子「どれくらいで、対策立法できるかな?」

ああああ「予想は難しいが、これほどデモケオに不利益を与えるような存在なら、そんなに時間はかからないだろう」

姫子「もうちょっと具体的に」

ああああ「うーん、次期衆院選までになんとか……」

姫子「ちょっと、それじゃ私が総理大臣じゃなくなったら厳しくない?」

ああああ「わかってる……だけど、デモケオは民主主義国家だからさ」

姫子「そうね……『ああああ』だって、いつ今の立場を失うか分からないわ」

ああああ「そこまで心配することか?」

姫子「一見して、対策できる問題ばかりだけど……だからこそ、この止まらない胸騒ぎが気になるのよ」

ああああ「そんなにデモケオの法が不安なのか?」

姫子「そうじゃないのよ……何か、もっと巨大な何かが迫っているような……」


 姫子と『ああああ』は頭を悩ませている。


百合男「すみません姫子さん、俺たち内閣情報調査室はどこまで動けるでしょう?」

桃雄「姫子さん、俺たちのことも頼ってください!」

雛太郎「アドバイザーとして僭越ながら、今の姫子さんは……色々抱え込み過ぎのように見えます」

姫子「いえ……大丈夫よ。あなた達は、目の前の職務だけに励みなさい」

ああああ「そう、前も言ったとおり、そこまで覚悟を決めなくていいんだ。建国の責任は全て俺にあるんだから」

桃雄「そんな、あまりに薄情じゃないですか!」

雛太郎「だな……なんだかエコ・リバースの皆さんは、俺たちと距離を置こうとしているように見える」

百合男「そうですね、そんなに私たちが頼りないですか?」


 そこにサンローが入室してくる。


サンロー「なんだか、面倒な案件が上がってきたらしいな?」

雛太郎「サンローさん、俺たちはそんなに頼りないですか?」

桃雄「姫子さんのみならず『ああああ』さんも困ってる今、我々が動かないでどうするんでしょうか」

百合男「この二人と同意見なのは癪ですが、せめて指示を飛ばしていただかないと……」


 『ああああ』はピシャリと言う


ああああ「では指示を与える、この案件については一切口外せず、君たちの職務に集中しろ」


 姫子も、続けて言う。


姫子「そうね、これは私たちで預かるわ。エスカレーションありがとうね」

サンロー「そうだな、この案件を内閣情報調査室だけに任せるのは、若干厳しいだろう」


 そうして退室した三人の後に、三人組は話し出す。


桃雄「どう考える?」

百合男「一応『君たちの職務に集中しろ』という言質はとれたと言える。十分職務の範疇だからな」

雛太郎「アドバイザーとして忠告するが、エコ・リバースが預かると宣言していたことも忘れるなよ」

百合男「大きくは動けない。少なくとも投獄といった事態には持って行けない」

桃雄「牽制を仕掛けて、足止めに徹するしかないか……」

雛太郎「とすると、手札は基本『軽犯罪現場裁量法』と『取引規範法』か、あとは我々の情報」

百合男「なら、いっちょ罠を仕掛けるか……まずは警察官の買収から始めよう」

雛太郎「買収して、どうするんだよ?」

百合男「それはだな……」


 そうして、大々的な警察官の買収から始めた。

 政治の腐敗とはこうして起こるものかもしれないな、そう思った三人組である。


 続いて、問題の他国民達を『軽犯罪現場裁量法』を利用して、軽犯罪容疑で『裁量』を使いながら足止めをする。


 道を歩いていれば「睨まれたという通報があった」として警察官が飛んでくる。

 店で買い物をすれば「恫喝されたという通報があった」として警察官が飛んでくる。

 ナイフを買えば「傷つけられそうになったという通報があった」として警察官が飛んでくる。


 もはや、問題の他国民達は、拠点の宿屋から出ることもままならない。それどころか、宿屋にまで頻繁に警察官が出入りしている。


桃雄「うまく行ってるようだな」

百合男「問題を起こすどころか、徹底マークして行動制限しているも同然だからな」

雛太郎「俺たちがやることと言えば、たまに通報できる住民を買収した位だしな。睨まれたとか恫喝されたとか、主観でも問題はない。必要なのは訴えだ」


 そこに、血相を変えた『ああああ』が飛んでくる。


ああああ「おい、お前達!一体何をやったんだ?」

雛太郎「アドバイザーとして保証しますが、目の前の仕事に注力しただけです(棒)」

桃雄「なんだか、警察官にむっちゃ睨まれてますね奴ら(棒)」

百合男「凄く住民に迷惑をかけてるそうじゃないですか。これ、外交問題ですよ(棒)」

ああああ「お前らなぁ……相手国から苦情が入ったのは知ってるだろう」

百合男「ああ、大丈夫ですよ。こちらは法に従い対処してるだけです。問題を起こす場合は、仮に他国民であっても、逮捕はあり得ると仄めかしておきました」

桃雄「そうですね、法に従わない行為の場合、AIの手によってブタ箱行きですからね」

雛太郎「そう、我々は完全に合法手段しか利用してないわけですから、文句をつけられても困りますよ」

ああああ「はぁ……相手国は奴らを引き取りたいと言ってきてる。そろそろ警察官を引き上げさせろ……」


 こうして、対策立法の前に、警察官と住民の買収、軽犯罪冤罪という『合法手段』によって、国内の混乱を収めたのだった。


 ちなみに三人組は、とりあえず警察官に「あんまり賄賂に流されるなよ」とお叱りをした。しかし「お前らが言うな」という対応をされたのは、言うまでもない。

 結局、口止めのために、三人組は更に継続して賄賂を支払う羽目に陥ったのだった。


桃雄「なんで俺たち……こんなことになっちまったんだ……何を間違ったんだ……」

百合男「そりゃ賄賂とか冤罪とか、普通なら犯罪だからな……」

雛太郎「そもそも『ああああ』さんの言うとおり、動かないことが正解だったのかもな……政界に任せればよかった」


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