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電脳麻薬カンパニー狂騒曲 ~快適に転がり落ちるディストピア~  作者: もりゃき.xyz
第六章 デモクラティック・オブ・ケオエコ
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第三節 三人組の提案

 デモケオ建国して間もない頃まで、少し時は遡る。


雛太郎「アドバイザーとして思うのだが、デモケオにも諜報員のような者がいた方が良いのではないか?」

百合男「しかし『ああああ』さんが、そのような存在を認めるだろうか?」

桃雄「何も交渉相手は『ああああ』さんに限る必要はない。姫子さんなら、こういう存在にも理解を示してくれそうだ」

百合男「確かにな……『軽犯罪現場裁量法』や『取引規範法』などを打ち出した姫子さんならあるいは……」


 そうして、三人組は姫子の元を訪れた。


姫子「どうしたの?悪いけどモンスター素材は、少なくとも今は買い取れないわよ……こっちもイッパイオッパイ」

雛太郎「いえ、今日の話題はデモケオに関わることなんです」

桃雄「率直に言って、諜報員は欲しくないですか?」

百合男「まあ、可能であれば偽装できる身分など、そういうのがあればありがたいのですが……」

姫子「なるほどね、不穏分子を早期に見つけ出す……そこは私も懸念していたところなのよ」

桃雄「それじゃあ……!」

姫子「でもゴメンね、そもそも憲法や法律に盛り込むことができなかったの」

百合男「いえ、我々はただ恩を返したいだけ。それにはデモケオの成功が一番ではないかと考えています」

雛太郎「例えば我々を警察官に仕立て上げ、国内情勢の調査と報告も行う。このような形はどうでしょうか?」

姫子「別にいいけど、そこで総理大臣に祭り上げられた私が対価なんて払ったら、即ブタ箱行きよ?私も含めて……」

桃雄「対価なんて必要ありませんよ!デモケオが成功してくれれば、最大の恩返しだと思っているので」

百合男「というか、警察官であれば給与が出ますよね?」

姫子「そうね……私が対価を受け取らず、あなた達が諜報員として情報提供することは、法律に抵触しないわね……ちょっと!『ああああ』とサンローこっちに来なさい!」


 声を上げて間もなく入室してくる『ああああ』とサンローだった。


ああああ「どうしたんだ?姫子さん」

サンロー「姫子君、また何か突拍子もない事を思いついたのではなかろうな?」

姫子「聞いてよ、ここに三人も、諜報員志望の人がいるのよ!」

サンロー「ああ、君たちか……知っていると思うが、諜報員は法的に認められていないんだよ」

ああああ「そうだな、ほとんどは私が司法で裁かなくてはならない案件だ」

姫子「まあ、聞いてよ。彼らを警察官にして、その中で諜報員としての役割を果たしてもらい、情報提供を受ける。これなら法律に抵触しないはずだけど、どう?」

サンロー「なるほどね……姫子君の言い分ももっともだが、一応追加させて貰おう」

姫子「何よ?」

サンロー「対価など『取引規範法』の範疇であれば問題なかろう?」

ああああ「そうだな、国内に侵入した反デモケオ勢力のあぶり出しを、警察官が情報調査して提供した対価として支払う程度なら、法的問題はないだろう」

姫子「ちょっと何よ!私が法律に盛り込もうとした時は、あんなに反対してたのに!」

ああああ「あー、姫子さん。法律に盛り込むのに反対したのは、法律化してしまうことで、結局諜報員として動けなくなることを危惧したからなんだ」

サンロー「まったくだ、諜報員が身バレしたらどうなると思ってるんだね姫子君」

姫子「じゃあ、彼らが諜報員として働くのは……」

ああああ「実際のところ大歓迎だよ。人員をどうするか、まさに今サンローさんと話していたところだ」

サンロー「警察官という目の付け所もいい、とりあえず彼らに委ねてみようじゃないか」


 三人は喜色満面だ。


雛太郎「じゃあ……」

桃雄「俺たち、皆さんのお役に立てるんですね……!」

百合男「もちろん、デモケオの為に、粉骨砕身の覚悟で挑みます」

ああああ「あー、皆はそこまで覚悟を決めなくていいかな?」

姫子「そうね、とりあえず内閣情報調査室所属のエリートになって貰う、そこから始めようかしら」

サンロー「それがよかろうな、彼らの実力に見合う報酬を正当に支払えるなら、それに越したことはない」

姫子「って訳で、警察官は却下。あなた達には内閣情報調査室に所属して貰うわ」

桃雄「え……それってむっちゃエリートでは?」

雛太郎「桃雄……内閣情報調査室といえば、特定秘密保護法に携わるような、本物のエリートだぞ」

百合男「しかし、我々にそのような重責が勤まるでしょうか」

姫子「まあ大丈夫じゃない?警察官の情報はドンドン上げていくから、これからは大変よ?」

ああああ「そうだな、ケオエコで君たち程諸外国に詳しい人材はそうそういない!」

サンロー「これから頼んだぞ、君たち」


 こうして、突如途方もない役職に就いた三人組であった。


 『ああああ』もサンローも姫子も「これで、俺たちのような仲間が増えた」とモニタの向こうで笑っていたのだった。


雛太郎「なんで俺たち、こんなエリート役職が用意されたんだろ」

桃雄「なんでも、姫子さんは不本意に総理大臣にさせられたらしいぞ……」

百合男「だからって、俺たちにまで重責を負わせるだなんて……」

雛太郎「諜報員が必要だと思っただけなのに……」

桃雄「俺たち、ちょっと意見言っただけなのに……」

百合男「これが『デモケオで転がり落ちるシステム』か…………」


 三人組は後悔するが時既に遅し、翌日には『内閣情報調査室発足』という発表と共に、彼らの名前が発表され、国民へ明らかとされた。


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