第四節 自由課金国家の興亡
『損得を否定した人間が、最後に求めるのは「美しさ」だ。だが美しさに金は払われない。だから彼らは「正義」と言い換えるのだ』
(依田泰造著『目を逸らされる欺瞞』より引用)
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ジョンとボビーのいた外国人街、そこでも国家樹立の話が持ち上がっていた。
その国家の体制は民主主義に近いものだったが、とんでもない爆弾が仕込まれていた。
『政策に対して課金をすれば、その政策が実施される』
この独特の制度を売りにして『自由課金国家プライドタックス』が樹立された。
プライドタックスには、当初税金が次々と流れ込んできた。
政策に応じて課金額があり、それが達成されたら、その比率によって『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』の認定証が送られる。
認定証は改竄不可なように記名されていて、転売もできない。
達成額が低い所に課金すれば『ゴールド認定証』が手に入る。
ギルドは積極的に達成額が高い所に課金をして『ゴールド認定証』を手に入れる。
そうすると何が起こるか?誰もが『ゴールド認定証』を持つ結果となったのだ。
元々の理念は「納税の義務を果たした証明書」だったのだが『ゴールド』を誰もが持つようになってしまっては、差別化ができない。
ジョンとボビーは、苦肉の策として『プラチナ』『ダイヤモンド』『オリハルコン』などの上位認定証を設定する。
上位認定証は、達成額が低い政策に課金しても得られない。
ギルドや大手商会などは、上位認定証を手に入れられるが、今まで『ゴールド認定証』を手に入れていた者としてはたまったものではない。
『これでは、政策を金で買っているようなものではないか』
今さらの批判であった。
価値が暴落した『ゴールド認定証』そして、一部の者が持つ『プラチナ認定証』以上の認定証。
ジョン「おい、認定証の扱い……なんか間違ったか?」
ボビー「そうねぇ、政策を金で買うのが自由課金国家だというのに」
ジョン「どうするよ……」
ボビー「もう無理ね、夜逃げしましょう!」
そうして国家のツートップ、ジョンとボビーが夜逃げしてしまった。
残されたのは、無価値になった認定証と、それを持つ人々。
国家のツートップがいなければ、もはや政策が打ち出されない。
そうして国が回らなくなり『自由課金国家プライドタックス』は、一時の注目から目も当てられない程の転落をしたのであった。
テンテン「俺はゴールドだぞ!……ほら見て、これ……ゴールド……」
外国人プレイヤー「なにそれ、まだ持ってたんだ?そんなのもう紙くずだろ」
認定証にすがろうとする人々は、時代に取り残された者として見切りをつけられた。
こうして、外国人街は事実上崩壊した。
その後、ジョンとボビーの姿を確認した者はいなかった……
ジョンとボビーの家は、街のみなさんが後で美味しくいただきました。




