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第四節 自由課金国家の興亡

『損得を否定した人間が、最後に求めるのは「美しさ」だ。だが美しさに金は払われない。だから彼らは「正義」と言い換えるのだ』

(依田泰造著『目を逸らされる欺瞞』より引用)


 ◆◆◆


 ジョンとボビーのいた外国人街、そこでも国家樹立の話が持ち上がっていた。

 その国家の体制は民主主義に近いものだったが、とんでもない爆弾が仕込まれていた。


『政策に対して課金をすれば、その政策が実施される』


 この独特の制度を売りにして『自由課金国家プライドタックス』が樹立された。

 プライドタックスには、当初税金が次々と流れ込んできた。


 政策に応じて課金額があり、それが達成されたら、その比率によって『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』の認定証が送られる。

 認定証は改竄不可なように記名されていて、転売もできない。


 達成額が低い所に課金すれば『ゴールド認定証』が手に入る。

 ギルドは積極的に達成額が高い所に課金をして『ゴールド認定証』を手に入れる。


 そうすると何が起こるか?誰もが『ゴールド認定証』を持つ結果となったのだ。

 元々の理念は「納税の義務を果たした証明書」だったのだが『ゴールド』を誰もが持つようになってしまっては、差別化ができない。


 ジョンとボビーは、苦肉の策として『プラチナ』『ダイヤモンド』『オリハルコン』などの上位認定証を設定する。

 上位認定証は、達成額が低い政策に課金しても得られない。

 ギルドや大手商会などは、上位認定証を手に入れられるが、今まで『ゴールド認定証』を手に入れていた者としてはたまったものではない。


『これでは、政策を金で買っているようなものではないか』


 今さらの批判であった。

 価値が暴落した『ゴールド認定証』そして、一部の者が持つ『プラチナ認定証』以上の認定証。


ジョン「おい、認定証の扱い……なんか間違ったか?」

ボビー「そうねぇ、政策を金で買うのが自由課金国家だというのに」

ジョン「どうするよ……」

ボビー「もう無理ね、夜逃げしましょう!」


 そうして国家のツートップ、ジョンとボビーが夜逃げしてしまった。

 残されたのは、無価値になった認定証と、それを持つ人々。


 国家のツートップがいなければ、もはや政策が打ち出されない。

 そうして国が回らなくなり『自由課金国家プライドタックス』は、一時の注目から目も当てられない程の転落をしたのであった。


テンテン「俺はゴールドだぞ!……ほら見て、これ……ゴールド……」

外国人プレイヤー「なにそれ、まだ持ってたんだ?そんなのもう紙くずだろ」


 認定証にすがろうとする人々は、時代に取り残された者として見切りをつけられた。

 こうして、外国人街は事実上崩壊した。


 その後、ジョンとボビーの姿を確認した者はいなかった……

 ジョンとボビーの家は、街のみなさんが後で美味しくいただきました。


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