第七節 究極緊縛プレイヤー静かに街を去る
ジョンが商業ギルドから帰ってきた。
ジョン「ヘイ、クレイジー緊縛プレイヤーの君たちに、ぴったりの依頼を受けてきたよ!」
例の三人組は目を輝かせて言う。
桃雄「遂に!俺たちも鹿とネズミから脱却するときが来た!」
雛太郎「で、どんな依頼なんです?アドバイザーとして気になります!」
そこで言ったジョンの言葉は、三人の心をへし折る内容だった。
ジョン「ネズミの大量発生、その奥にいる大ボスが大鹿というクエストだよ!凄まじい発生数だが、なんせ討伐してくれる者が現れなくてね」
ガックリ来ながら答える三人組。
雛太郎「それ、鹿とネズミからの脱却どころか、究極進化じゃないですか!」
百合男「あの……僕達は鹿とネズミから脱却したくて、ここに移住したんですけど……」
桃雄「そうですよ、ネズミなんて誰でも狩れるでしょう⁉」
それに、案外厳しい声で答えるジョン。
ジョン「何をいう、商業ギルドの依頼ということは、それだけ深刻な事態ということだ。冒険者として、困ってる人を助けるのは当然ではないか?」
ジョンは胡散臭い笑顔を浮かべる。
内心では「これで彼らのレジェンドは続く……」と思っていた。
三人組は本来善良な性質だ、自分たちにできることなら……とその依頼を受け入れる。
ジョンは、改めて商業ギルドに向かう際に、周りがギョッとするほどのにやけ顔だったという……そのご機嫌顔に気づいた者は例外なく振り返り、何とも言えない薄気味悪さを覚えた。
ジョンが商業ギルドに向かっている間に、ボビーが三人組の元にやってきて言い放った。
ボビー「ヘイ!ジョンに聞いたわよ!いよいよネズミの丸呑みを目の前で見せてくれるのね!」
百合男「いえ、僕達はもう、解体することを覚えましたので……」
桃雄「そうです!もう丸呑みなんて野蛮は、卒業したのです!」
雛太郎「丸呑み芸を見たいなら、相応の対価を要求する!アドバイザーとして、ここは金を取るべきだと判断した!」
ボビー「なによ、ケチねぇ……まあいいわ。あなた達の丸呑み画像は、撮れるだけスクショで撮って保管してるもの」
桃雄「いつの間に!肖像権ってものがあるでしょう!」
雛太郎「そうです!アドバイザーとして、無料で芸を披露するのはプライドが許さん!」
百合男「いや、いつからお前らの丸呑みは、芸として売り物になったんだよ……」
ボビー「あら、知らないの?ケオエコ規約ではね?スクショの肖像権は、撮った人の権利になるのよ?」
雛太郎「なっ!じゃあ、我々の芸は金にならないとでも言うのか……」
桃雄「いや、そうじゃないだろ……ってか規約恐るべし……」
百合男「まあ、ケオエコをやりたいがばかりに規約を蔑ろにした、我々の責任か……」
ボビー「クレイジー緊縛プレイヤーの丸呑み画像!とっても良い値で売れたわよ!もちろん肖像権は私のもの、あなた達には売れた分のお金なんて、支払わないから!」
桃雄「クソッ!じゃあ俺たちも、自分たちの画像をスクショして売ってやる!」
雛太郎「アドバイザーとして忠告するが、それはもっとおかしいぞ!」
百合男「でも……これで俺たちが本当にクレイジー緊縛プレイヤーとして、伝説になるんじゃないか?」
桃雄「伝説になってどうするんだよ!百合男お前戻ってこい!」
そこへ、ジョンが戻ってきた。
ジョン「ヘイ、クレイジー緊縛プレイヤー達よ喜べ!この街の全員が君たちについて行くそうだ!報酬も商業ギルドの三倍に膨れあがったぞ!」
桃雄「これ、絶対に丸呑みスクショ狙いだ!」
百合男「ふふふ……商業ギルドの三倍、中抜きされても二倍は堅い……」
雛太郎「おい、マジで百合男どうした!丸呑みなんて止めろって、お前も言っていただろう!」
百合男「利益の前には、プライドなんて捨てる!それが俺のプライドだ……」
桃雄「そんなプライド、捨てちまえ!」
ジョン「ははは、いいね百合男!君たちの丸呑み伝説が続けば、報酬はもっと膨れあがるかもな!」
百合男「ありがとうございます、ジョンさん。目が覚めました!」
雛太郎「おい、百合男、全力で現実逃避した目をして、何を言っている!」
桃雄「もういっそ、百合男だけに丸呑みさせておけばいいんじゃないか……」
雛太郎「そうだな、アドバイザーとしても、これ以上言葉が届く気がしない……」
ジョン「ちなみに、報酬三倍は当然君たちの取り分だ!二倍なんてチャチな話じゃないぞ!ただし、丸呑みは三人が並んでというのが街の総意だ」
百合男「商業ギルドの報酬の三倍……お前ら当然受けるよな?」
桃雄「絶対、お断りだ!」
雛太郎「いや、しかし商業ギルドの相場は、通常のクエストより高額!その三倍となれば当分金に困らないぞ……アドバイザーとして命じる。桃雄、お前も丸呑みしろ!」
桃雄「うおー、もう周りが敵だらけ、もう嫌!俺だけは丸呑みしないぞ!」
ジョン「なんだ、ボビーのスクショでは桃雄のスクショが一番多かったという話なのに。まあいいか、その分市場価値は低いし」
桃雄「うお、丸呑みは嫌だけど、丸呑みスクショの価値、俺が一番低いってのも屈辱!」
百合男「諦めろ……我々は、金の前には無力なのだよ……残り五千円相当で、今後どう生きて行けと?」
雛太郎「当然、桃雄が丸呑みしなければ、加算分の分け前は与えんぞ?アドバイザーの決定だ。ずっとネズミを素材にして肉を漁っているんだな……」
桃雄「日本円換算で言うな!わーったよ!俺も丸呑みする!だから分け前よこせ!」
ジョン「よし、話はまとまったようだな!では早速、討伐に出発だ!」
そうして、ジョンとボビーに先導(煽動)されて、三人組も大量のネズミと大鹿の討伐クエストに出発した。
雛太郎「ところで、今回のクエスト報酬って幾らなんですか?」
桃雄「そうだな、その三倍となると……相当の大金が期待できます!」
百合男「ふふふ……このクエストで大金を手に入れて、さらに鹿とネズミを食べて、素材を売れば……遂に俺も、実際の暗号通貨を手に入れて……」
桃雄「おーい、百合男戻ってこーい」
雛太郎「ケオエコで金を儲けられるなんて幻想だ、そんな幻想は俺の右手でぶち壊す!」
ボビーとジョンは笑いながら言う。
ボビー「ハハハ、ケオエコで金を儲けようとしないなんて、流石はクレイジー緊縛プレイヤーだね!」
ジョン「成功報酬については、伏せておこう。その方が楽しそうだ!ああ、そこにネズミが出てきたぞ?」
ジョンとボビー、そして三人組に付いてくる外国人街の皆も固唾を呑んで見守っている。
外国人プレイヤーA「いよいよ、クレイジー緊縛プレイヤーの丸呑みが!」
外国人プレイヤーB「素材すら飲み込む、クレイジー緊縛プレイヤー!」
外国人プレイヤーC「我々も野蛮人と呼ばれていたが、それを超える野蛮人!」
しかし、三人組にはその声が届かない。
桃雄「シッ、皆さん静かに……音を立てるとネズミが逃げます」
雛太郎「皆さんその場から動かないように、少しの気配でネズミは逃げます」
百合男「ちょうど三匹、我々の丸呑みを見たければ……身動きを取らないことです、我々に任せて……」
ジョンとボビーは、ただのネズミ討伐に、ここまで真剣になる三人組に驚愕する。
ジョン「ヘイ、別に今三匹とも討伐しなくていいんだぞ」
桃雄「静かに……ネズミスペシャリストとして、このネズミを逃す事はプライドが許しません」
百合男「当然、鹿だって逃がしませんよ」
雛太郎「あんまり、我々を舐めないでいただきたい……」
あまりの真剣さに、誰もが動きを止めていた。
何も三人組の言葉を受けた訳ではない。
あまりの真剣さに「#丸呑みスペシャリスト #ネズミは逃がさない」というハッシュタグでスクショをSNSに発信していたのだ。
既に、彼らのネズミ討伐前のスクショすら、その真剣さのあまりSNSでも熱狂をもって受け入れられていた。
雛太郎「今だ!」
桃雄「分かってる!」
百合男「覚悟!」
そうして、三匹のネズミは瞬殺された。その瞬間ではエフェクトが輝いた。
たかがネズミ相手にエフェクトが出るほどの攻撃をする瞬間!
それ撮る事に成功したスクショは、ケオエコを知らない層にまで、SNSで凄まじくバズった。
桃雄「さあ、皆さんもう大丈夫ですよ!」
百合男「さて、皆さんお待ちかね、丸呑みタイムです!」
雛太郎「丸呑み……マジでやるんだな、しかも三人並んで……」
そして、三人組は同時にネズミの死体を持ち上げて、口に持って行く。
あれほど煽っていたジョンとボビーは逆に狼狽する。
ジョン「いや、まさか本当に丸呑みするのか?」
ボビー「やめて!本当にそんなことするとは思ってなかったの!」
しかし、三人組の動きは止まらない。
そのまま、ネズミの死体は彼らの口に飲み込まれた。
ボビー「イヤー!なんて物を見せるのよ!」
ジョン「おいボビー、君は何度も見ていたと、自慢していたじゃないか」
ボビー「冗談に決まってるでしょ!噂を聞いて、ちょっと話題にして、目立ちたかっただけなのよ!」
ジョン「じゃあスクショで儲けたという話も……」
ボビー「そんな事するわけないでしょ!彼らを見てご覧なさい、自分の写真ベースのアバターよ!彼らにも生活があるでょ!」
外国人街の住民も、まさか本当に丸呑みするとは思ってもいなかったので、誰もスクショを撮る準備すらしていなかった。
外国人プレイヤーC「オー、マジで丸呑み……」
外国人プレイヤーA「クレイジー……」
外国人プレイヤーB「流石に、こんなスクショは撮れない……」
三人組は逆に、何をそんなに驚いているのか理解できなかった。
百合男「え、今まで俺らが散々やってたのに……まさかボビーさんも、スクショ撮ってなかったとか……」
桃雄「というか、もしかして、誰もスクショ撮ってないんですか?」
雛太郎「アドバイザーとして……これは失策だったと判断せざるを得ない!彼らにとっては衝撃的過ぎたんだ!」
外国人街の人々は衝撃のあまり沈黙を保っていたが、ある一人が口にした。
外国人プレイヤーC「俺、もう帰るわ……さすがにケオエコ内とはいえ、ネズミ食べるシーンとか、今日は晩飯いらない……」
それに引き続き、外国人街の人々は
外国人プレイヤーD「クレイジー緊縛……」
外国人プレイヤーB「プロフェッショナルネズミスレイヤー……」
と口にしながら、街に戻っていった。
百合男「え、ちょっと待ってください!これでは三倍の報酬が!」
桃雄「そうだった!俺たちは、金のためにやってる芸人だった!」
雛太郎「やっぱ素人芸だったのが悪かったのか……もっとエレガントに食べるべきだったのか?」
ジョンとボビーは、ため息をつきながら言う。
ジョン「はぁ、君たちが本当にクレイジーだというのは理解した。ただ、今後はきちんと素材分解してから食べなさい」
ボビー「そうよ、見た目も下品だし、素材だって手に入らない……日本人は上品って話は、どうやら噂だけだったようね」
ジョン「君たちも当然『モンスター素材剥ぎ取り魔法』は持っているのだろう?きちんと動かしなさい」
ボビー「そうよ、素材を無駄にしてる時点でただの損失製造機じゃない!少しは商人や生産職のことも考えなさい!」
まさかの説教に三人は面食らう。三人は顔を見合わせた。
桃雄「いや……それを言うなら、まず煽った責任を取るべきでは?」
雛太郎「アドバイザーとしても、説教されるのは順序が違うと思うのだが……」
百合男「そうですよ!なんか急に偉そうじゃないですか!ついさっきまで『ハハハ』とか笑ってたじゃないですか!」
そんな三人をよそに、ジョンとボビーはさらに真剣な表情で話し始めた。
ジョン「君たちの指導を『ああああ』に依頼されてる身だからね。私も煽ってはいたが、きちんと依頼は達成しないとならない」
ボビー「そうね、私も調子に乗りすぎたわ……だって、まさか本当にやるなんて思ってなかったわ」
ジョン「どうやら、君たちには本格的に常識が不足しているようだな。冗談と本気の区別も付かないとは……」
それからは、ジョンもボビーは、ただただ真剣にネズミ討伐と素材剥ぎ取り作業を見守っていた。
ジョン「さて、いよいよ大鹿が間近に迫った」
ボビー「今日の私たちはあくまで付き添い、あなた達で討伐するのよ!」
三人組は少し凹みながらも、ジョンとボビーに問う。
百合男「今回の大鹿って、どれくらい大きいんですか?」
桃雄「っていうか、なんで俺たちにこの依頼を?」
雛太郎「丸呑み芸は、どうやら本命ではなかったようですし……」
ジョンは笑いながら言う。
ジョン「はは、あまりしょげるな少年達よ。皆、君たちが心配で付いてきていたのだよ。そしてネズミ討伐の腕を見て、私たちが大丈夫だと判断したから、帰るよう合図を出した」
桃雄「じゃあ、丸呑みが原因じゃなかったんですか?」
ジョン「はは、彼らにとっても丸呑みは想定外だっただろう。だけど、その程度で見捨てるほど、街の人間は冷たくないさ」
雛太郎「ということは、純粋に俺たちを心配して……アドバイザーとして泣けてきます」
ジョン「ケオエコは冷たい世界だ。だからこそプレイヤー同士、助け合わなければやっていけない。誰もがそれを理解している」
百合男「だけど、俺たちは三倍の報酬に目がくらんで……」
ジョン「外国人街では、まだモンスター肉で飢えを凌げる。案外、裕福なんだよ我々は?
だから、ネズミと鹿しか狩れない君たちの厳しさも、ある程度は理解している。
それを踏まえて、今回のクエストを君たちに委ねたのだよ……
街全員で金を出し合ったこのクエストを。
特に『ああああ』に助けられた者は数多いので、頭が上がらないのだ」
そんな感動的な空気の中、遂に大鹿討伐に向かう。そして三人は驚愕する。
桃雄「うわ、でっか!」
百合男「これ、大鹿っていうか、巨大鹿じゃないか」
雛太郎「まるで恐竜のような鹿ではないか……これは我々が勝てるのか?」
ボビーは笑いながら、ただ一言。
ボビー「ハハ、クレイジー緊縛プレイヤーなら楽勝よ!大きさに惑わされないで、ただ実力を発揮しなさい!」
百合男「実力って言ったって……俺たち、ネズミと鹿しか狩ったことしかなくて」
ボビー「目の前にいるのは何?鹿でしょ?あなた達が散々経験を積んできた相手よ!巨体だから、逃げることだってない!」
三人は、その言葉を聞いて、一気に鹿スレイヤーモードに入る。
桃雄「巨大だけど、鹿だ。なら俺たちが倒せない理由はない」
雛太郎「しかも、物音で逃げることすらない」
百合男「鹿の急所は、今まで散々倒してきて理解している」
雛太郎「心臓まで、剣は届くか?」
桃雄「いや、この高さではちょっと厳しい」
百合男「なら、まず狙うは足だ」
三人は同時に、大鹿の足に斬りかかる。
見事、大鹿の足三本に強烈なダメージを与えて、大鹿はバランスを崩す!
雛太郎「行けるか?」
桃雄「いや、まだ危険だ、残った一本の足の動きが厄介!」
百合男「バランスを崩したから、目を狙える!」
雛太郎「よし、任せた!」
桃雄「俺も行く!」
百合男「サポートは俺に任せろ!」
そうして、大鹿の両目が見事に貫かれる!
足の動きが激しくなり、そしてゆっくりとなる。
雛太郎「これで心臓を狙えるか?」
桃雄「ああ、十分だ!」
そこに、ジョンとボビーが同時に声を上げる。
ジョン・ボビー「「それまで!!!」」
ボビー「よく見なさい、もう大鹿は死んでるわよ」
ジョン「そうだ、無駄に心臓を潰さずに。素材として回収しなさい」
ボビー「よくやったわ……本当に、ネズミと鹿を相手なら『ああああ』を彷彿とさせる。立派な戦いっぷりなんだから」
ジョン「さて、これで君たちは、ただのネズミと鹿スレイヤーを脱却したことになる。このモンスターはギガントケラスと言って、一般的な討伐推奨レベルは十五以上とされている。我々も下手をすれば危うい相手だ」
ボビー「それを、あなた達は僅かレベル七、で無傷討伐した……レベルも、とんでもない上がり方してない?」
そうして確認した所、三人のレベルは十二にまで上がっている。
桃雄「うお!レベル二桁!」
雛太郎「最大HPの上昇率が半端ねぇ!」
百合男「だがちょっと待て、レベルが上がると……ネズミと鹿の肉で飢えを凌げなくなるぞ!」
百合男の言葉に桃雄も雛太郎も、打ちのめされたような表情になる。
しかし、ジョンもボビーも呆れ顔だ。
ボビー「馬鹿ね、レベルが上がればHPの余裕ができる。その分上位モンスターを討伐できるでしょ」
ジョン「我々のレベルは一八だが、まだモンスター肉で飢えを凌げている。しばらくは大丈夫だろう」
ボビー「その間、ネズミと鹿以外のモンスターにも挑んでご覧なさい」
そうして、ギガントケラスの素材剥ぎ取りを行った。
というか姫子のモンスター素材剥ぎ取り魔法が……ギガントケラスに対応している事に三人組は驚愕するのだった。
雛太郎「アドバイザーとして質問するのは恥ずかしいのだが……これは、姫子さんはギガントケラスの死体を……知ってるってことだよな……?」
百合男「そうなるな、しかも複数の死体を知っているはずだ。そうでなければ、ここまでの素材剥ぎ取りはできないだろう」
桃雄「ってことは『ああああ』さんは、ほとんど死体損傷無しで討伐して……しかも混沌の街に運んだと……?」
改めて『エコ・リバース~でこぼこたいら』の凄まじさを実感しながら、素材を剥ぎ取った。
そうして、外国人街に戻ると、大歓声による討伐祝勝会が開かれていた。
ジョン「おいおい、討伐できるかわからんのに、もう祝勝会とか……気が早すぎるだろ」
ジョンは呆れながらも笑顔だ。
そこへ、商業ギルド長が三人組の元にやってくる。
商業ギルド長「ヘイ、クレイジー緊縛プレイヤー達よ!ギガントケラス討伐クエストの報奨金がこちらだ」
そして、渡された金額は驚愕の九万コイン!
日本円換算で九十万円相当だ。三人は慌てて辞退する。
百合男「流石に、九万コインなんて受け取れませんよ」
雛太郎「そうだな、本来の報奨金三万コインだけで」
桃雄「三万コイン山分けでも十万円相当、凄い儲けだな!」
ボビーはジョンが討伐前に言っていた事を思い出す。
ボビー「討伐報酬が三倍になったのは、ギガントケラスの危険が本当に無視できなくなったからよ……街の人間だって、ただの応援でこんな上乗せしないわ」
ジョン「はは、まさか本気に取られていたとはな……本当に君たちは、本気と冗談が理解できないようだな?」
ボビー「だから、この九万コインは正当な対価なのよ、受け取りなさい」
しかし、三人組は頑なだった。
雛太郎「いえ……少なくとも途中まで街の皆さんが見送りに来てくれたのは事実です。
アドバイザーとして、これを……全額受け取るのは得策ではないと主張します」
桃雄「だな、あの時すっげー人数ついてきてくれたよな……」
百合男「しかし、受け取らないというのも、商業ギルドが困るだろう?」
雛太郎「では、商業ギルドと生産職ギルドにさ……三万コインずつ寄付という形ではどうだろうか?」
百合男「お前、たまにはアドバイザーっぽいこと言うじゃないか!」
桃雄「いいな、では九万コインを受け取り、商業ギルドと生産職ギルドに各三万コインの寄付、ということで!」
ジョンは、心底嬉しそうに笑っている。
ジョン「よし!俺はそういうのが見たかった!『ああああ』から任された人間が、果たしてどんな事をしてくれるのか!」
商業ギルド長は少し困惑している。
商業ギルド長「本当によろしいのですか?確かにギルドは金があればあるだけ助かるのは事実ですが……」
三人組は、サッパリした顔で言う。
桃雄「混沌の街みたいに、自衛軍設立の費用の足しにするのはどうでしょう?」
百合男「そうだな、今後食糧生産も始まりますし、自衛軍は必須ですよ!」
雛太郎「アドバイザーとしても、自衛軍をお薦めします!」
ボビーは、少し呆れ顔だ。
ボビー「なによ、自分たちの儲けを寄付して、この街のために使えとか……本当に『ああああ』の弟子ね」
祝勝会は、自衛軍設立記念会と同時進行になり、ジョンとボビーは外国人街の自衛軍に所属することを決心したのだった。
そして……その後、外国人街に多大な貢献をした三人組の姿を見た者は、なぜか外国人街にはいなかった……
これにて第四章は完結です!
お読みくださりありがとうございます、個人的にはここからが勝負なので「見てやろう」って方は是非よろしくお願いします。
次回は姫子イラスト挿入予定です!




