第四節 元両替商と外国プレイヤー
外国人プレイヤーA「よう、今日も元気そうだな」
元両替商「ああ、戦って稼がないとな!」
外国人プレイヤーB「今日だけパーティ組んで、一緒に討伐行かないか?」
元両替商「いいね、今日だけだけどよろしく!」
その元両替商は、外国人プレイヤー達と割と仲良くやっている。
既に日本人コアプレイヤーが厳しい場所の占有をしている分、外国人プレイヤーはライトプレイヤーに近い感性を持っているのだった。
彼らは、あぶく銭のごとき暗号通貨が手に入れば、それで満足なのだ。
そして、この中に混じっている……とある元両替商は『ああああ』の顔つなぎの結果、ここにいる。翻訳AIによって、誰がどの国出身なんてわからないし、それを追求する文化もないのは幸いだった。
外国人プレイヤーA「へぃ、そっちに行ったぜ大ネズミ(mou)!」
外国人プレイヤーB「俺はビッグマウス(mouth)じゃねぇ!ちゃんと倒せるぜ!」
こんなお茶目が起こるのも、翻訳AIのなせる技なんだよな……気をつけねば、と改めて元両替商は気を引き締める。
以前にはこんな混乱もあった。
外国人プレイヤーC「次のダンジョンに向かうぞ、みんな準備はいいか?」
外国人プレイヤーB「えーと、なんだこりゃ……『燃え上がるドラゴンを見に行く』って、どういう意味だ?」
外国人プレイヤーC「ドラゴンなんて、どこにいるんだ?」
外国人プレイヤーB「いや、お前が言ったんだろうが!」
この経験を活かして、皆もできるだけ誤翻訳を避ける言い回しを各々が身につけたが、まだまだ問題はあるようだ。
外国人プレイヤーA「この、ネズミを解体して、一緒に飯にしようぜ!」
元両替商「あ、私は戦闘で活躍できなかったので……」
外国人プレイヤーB「遠慮するなよ!」
元両替商「じゃあ、後ほど頂くので素材だけ頂けますか?」
外国人プレイヤーA「なんだよ、まさか食糧に加工にするのか?なんて贅沢な!」
元両替商「まさか、ははは!」
外国人プレイヤーC「だよな!」
元両替商は、商人として……かなりレベルが上がってしまっているので、こうしてなんとかおこぼれに預かって、食糧にするモンスター素材を確保している。
どうしても必要な食糧の費用は、両替商時代の資産を切り崩して、食糧化を外国人街の生産職にこっそり依頼している。
外国人プレイヤーB「しかし、君はレベルが高いのに、戦闘では冴えないな?」
元両替商「へっぽこなもので……」
外国人プレイヤーB「にせ医者?なんだいそれは?どういう意味のつもりで言ったんだい?」
元両替商「ああ、下手って意味で」
外国人プレイヤーA「これが、あの有名なケオ・リバースの『ああああ』紹介とは信じられんな」
元両替商「申し訳ない、戦闘職になったのはここ最近なので……あと、エコ・リバースです」
外国人プレイヤーC「しかし、日本人のプレイヤーは大変だな。俺たちは認証が緩いからアカウント作り放題なんだが」
元両替商「本当に、羨ましいですね……」
今日も、元両替商はなんとか一日を乗り越えるのであった。少しずつ減る資産と共に……
遠くでその様子を眺めていた『ああああ』は「やっぱ、両替商としてレベルが上がってると色々厳しいな……」と独りごちた。
そんな時『ああああ』の近くで、モンスター討伐の雰囲気があった。
『ああああ』は、気配を消して近づく。
そこでは、ネズミ肉を丸呑みしている例の三人組がいた。
『ああああ』は思わず、消していた気配を解いて声を掛ける。
ああああ「おい!何で解体もせずにモンスター肉を食べてるんだ⁉」
三人は突然現れた『ああああ』に動揺しながらも答える。
百合男「あ『ああああ』さん、食糧費用節約のために、モンスター肉を食べてるんですよ!」
桃雄「『ああああ』さんも外国人街にいるんだから、俺たちのこと野蛮人なんて言いませんよね?」
雛太郎「外国人なら良くて、日本人ならダメだなんて、そんな差別はアドバイザーとして許しませんよ!」
『ああああ』頭を抑えながら答える。
ああああ「いや、モンスター丸呑みとか、外国人プレイヤーだってしてない!十分野蛮だよ!胃袋に丸ごとモンスター突っ込んで何が節約だ!」
その言葉に三人は驚愕するが……『ああああ』は三人の驚愕っぷりに驚愕しながら続ける。
ああああ「鹿とネズミが狩れるようになったから、ちょっとは安心かと思い見守ろうと思ったが……どうやらそんなレベルではないようだ!ちょっと来い!外国人街がそこにあるから、そこで実態を見てみろ!」
三人は、慌てて質問を重ねる。
桃雄「え、モンスターって丸呑みするもんじゃないんですか⁉」
百合男「事実、モンスター肉を食べようとしたら丸呑みになっちゃうんですから、仕方ないじゃないですか!」
雛太郎「まさかとは思いますが、わざわざ素材剥ぎ取りスクリプトを回すんですか⁉」
桃雄「じゃあ、俺たちの胃袋訓練は一体……」
とうとう『ああああ』はモニタの向こうでも頭を抱え始めた。
ああああ「常識で考えろ!ネズミを丸呑みするとか蛇じゃあるまいし!解体するんだよ、当たり前だろ!」
いつもは温厚な『ああああ』が……珍しくキレた瞬間だった。
ああああ「縛りプレイの聖人と呼ばれているから、どれ程成長してるかと思えば……相変わらずド素人じゃないか!」
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