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第五節 疫病より恐ろしき合理性

 リオンデックス派のオークションでも、エコ・リバース派の選別にも選ばれなかった疫病感染者は、心底打ちのめされていた。


疫病感染者「これでもう、薬は存在しない……もう死ぬしかないのか……」


 これに『ああああ』は閃いた。


ああああ「そうだ、死んでしまえばいいのではないか?」


 サンローも姫子も、その意図がわからず反論する。


サンロー「忘れたのか『ああああ』よ、ケオエコでは死ねば資産の半分が失われるのだぞ。暗号通貨のみならず、公式売買所レートでのアイテムロストまで発生する!」

姫子「だからこそ、私たちは必死に疫病対策薬を開発したのに……死ねだなんて……」


 『ああああ』は思いついたことを、そのまま口にする。


ああああ「いや、死んだ時に失われるのって、ゲーム内資産じゃん?だから、それを全て現金化してしまえば、被害は最小限になると思うんだ」

サンロー「『ああああ』よ、死んで疫病が治るとは限らないではないか」

ああああ「それを言われると弱いんだよな……だけど俺は戦闘職だから、死ぬ人を結構見てきたんだよ。

 で、再生するとHPが全快してるんだ、毒とかのステータス異常も回復してね。

 だから疫病を一種のステータス異常と見れば……治るのではないか……と……」

サンロー「……一応、理屈は通っているな」


 しかし姫子は怒りを止められなかった。


姫子「ちょっと何よ、死んで解決するなら、私たちの疫病対策薬は無意味だったって言いたいの?」

ああああ「そんなつもりはないよ姫子さん、ゲーム内資産を失わないで済めば、その方が良いに決まってる。次善の策の提案だよ」


 それを聞いていた、薬が手に入らなかった疫病感染者の一人は覚悟を決めた。


疫病感染者「よし、俺は『ああああ』さんの案に乗ってみる!もう所持品も食糧くらいしかないしこれは諦めて……これから、ゲーム内コインを全部現金化するわ!」

姫子「ちょっと、本気⁉」

ああああ「冷静に考えれば、ゲーム内コインをそのまま半分失くらいなら現金化するくらい問題ない!金は、また稼げばいいんだからな!」


 早速、システム操作を行い、ゲーム内資産を全て現金化した彼は言う。


疫病感染者「さあ『ああああ』さんよ、俺を殺してくれ!」

ああああ「まさか、人生で殺してくれって言われる日がくるとはな……」


 しかし、周りには多くの疫病感染者がいるのだ。とにかく一刻も早い次善策が提示できるに越したことはない。


ああああ「いざ、覚悟!」

疫病感染者「ゲームのアバターなんだから、そこまで言わんでも……」


 そして、彼が死ぬと『資産の半分が徴収されました』のメッセージと共に生き返る。


疫病感染者「おお、マジで疫病の症状が止まってる、HP満タンのままだ!」


 この事態に、多くの疫病感染者は驚愕した。


疫病感染者A「まさか、死ぬだけで疫病が治るとは……」

疫病感染者B「ちょっと待て、じゃあ疫病の死者って、実はいなかったってことか?」

疫病感染者C「そういえば、疫病感染者の話ばかりで、死んだって話は聞いた覚えがないな……」

疫病感染者D「いや、俺は聞いたことがあるぞ……戦闘職で疫病感染者が死んだという話は」

疫病感染者C「その死んだ戦闘職の後のことは聞いたのか?」

疫病感染者D「いや……あくまで聞いただけだから、そこまでは知らない」

疫病感染者B「だからって、ゲーム内資産の現金化かぁ……現金からゲーム内資産にできないのが痛いよな」

疫病感染者D「資産だから、アイテムも含まれるよな」

疫病感染者C「そうなんだよ、アイテムを大量に保持していたら、まず売って暗号通貨に交換だな……」

疫病感染者A「ちょっと待て、今死んだ奴……持ってた通貨の種類は、特に金額が大きいのは何だ?」


 その通貨の名前を聞いて、少し呆然としながら言う。


疫病感染者A「うわ、通貨の換金レートが下がってやがる……」

疫病感染者C「ってことは、早くコイン交換した者勝ちじゃねーか!よし通貨は交換した!アイテムは諦めた!誰か俺を殺してくれ!」

疫病感染者B「なに死に逃げしようとしてるんだ、俺も交換した!先に俺を殺せ!」


 もはや、誰が早く死ぬかを争うという、通常ではあり得ない……ゲームでさえ考えられない、阿鼻叫喚の地獄が突如発生した。

 『ああああ』の言葉で発生した地獄を見てサンローや姫子は『ああああ』に冷たい目を向けるのだった。


 暗号通貨への交換が僅かに遅れた者、また所持品が多かった者は、資産のレートがあまりに下がり資産の現金化を諦めた。

 ……絶望のあまり、食糧を含めた所持品を売り払い、暗号通貨に交換することも諦め、餓死を選ぼうとする。

 それは、あまりに静かな阿鼻叫喚の地獄であった。


 この時期、一時的に資産を全て預かり殺して回った人がいたという噂があるが、その真偽は定かではない。


 ゲーム内通貨を暗号通貨に交換せず、餓死でゲーム内通貨の半額を失った者達はむしろ幸せだった。

 そして、殺して回った人の噂を裏付けるように、餓死者は異常なほど少なかった。


 慌ててゲーム内通貨全額を暗号通貨に交換した者達は、後に食糧の調達に困窮し……

 高利貸しの世話になる羽目に陥ったのだ。


 結局、一人勝ちしたのは、言うまでもなく、疫病イベントを行った電脳麻薬カンパニーだ。ゲーム内通貨と暗号通貨のレートは電脳麻薬カンパニーの思いのまま。

 電脳麻薬カンパニーの思惑通り、暗号通貨のレート操作は成功し、再び暗号通貨バブルの様相を呈しはじめた。


PV見ていますが、あなた達お仕事中に見てませんか?

まあ、仕事に支障がなければいいんですが…

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