表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/59

電脳麻薬カンパニー

数ある作品の中から、このディストピアに辿り着いてくださり、お時間を割いていただけたことに感謝します。

「私は一体、何の技術者なのか?」


 唐突に浮かんでしまった疑問は、彼が意識さえしなければ、何の問題もなかったのかもしれない。彼が技術者として扱う『それ』は大学で文系理系で学部学科が存在し、国も『それ』を扱う人々の育成に直接的な水準で力を入れている。

 そして一部の特権階級ではなく、明らかに世界規模で一般庶民の日常に『それ』は浸透している。陰謀論でも見受けられるし、本当に陰謀があっても別に不思議ではない。


 しかし『それ』について、気になって、いざ人に聞いてみると――


「○○って重要だよね。俺もどんどん集めるようにしている」

「○○も玉石混合だ。きちんと見分けられる力を身につけねば」

「○○の関連で何か、大きな一発を当てて金持ちになれねぇかなぁ」


 ――全く要領を得ないのである。


 某ネット百科事典を見ると「ただひとつの答えを与えることは困難である」と記載されて、複数の項目に分岐し、また語源を辿れば古代ギリシアにたどり着く。「すべての道はローマに通ず」などという表現があるが、文字通りの体験を得る機会は少ないだろう。

 国語辞典では、同語反復で説明になっていない。


 皆が、それほどまでに重要視している『それ』について、実際には全く『それ』についての『それ』が存在しないという事実、それにも関わらず平然と『それ』について頻繁に論じられているのは非常に不可解な話だ…そう愕然とした。

 これは形而上学の講義ではない。

 私としても、今や切実に『それ』について知りたいと思っている。


 何を言ってるのかわからないかもしれないが大丈夫だ、自分でもわからなくなってきたところだ。


 『情報』――すなわち『情報』についての『情報』がほとんど存在しないにも関わらず、『情報』が論じられる事への違和感。


 我が社は敢えて「情報」の名前を使わず、『情報処理』の代名詞たるコンピュータの中華表記『電脳』を社名として採用することにした。

 『電脳楽園』を筆頭に、この名を冠する系列会社は、情報関連技術が中核を占める国際的営利団体として活動している。


「そろそろ、情報とは何かを探るために、電脳楽園を本格的に動かし始めるか…」

 電脳楽園、通称『電脳麻薬カンパニー』の社長、依田泰造は暗くなった社長室で静かに笑い、動き始める。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ