出会い
誰もいない公園で犬(多分)が鳴いている。 ワンワンというありきたりな声で鳴いているので、という理由から犬だという結論になった。
もう夕暮れ、家に帰るはずが自然と足が公園に向かっていく。
見慣れたブランコと鉄棒が遠慮しているのか、控えめに公園の端にある。
お目当てのものはすぐ見つかった。なんともベタなことに、ダンボールの中に収納されている。
「お前も大変だな」と苦労しているサラリーマンが言うようなことをいってしまった。オヤジになったな~。
「お前も捨てられたのか」といったら、体を震わせながら、肯定か否定かわからんけど低く鳴いた。
見捨てられんな。 今の僕の心情を映し出しているようだ。
どうしようコイツ?
少しの時間考えた挙句、結局つれて帰ることにした。あまりにかわいそう過ぎる。まあ僕も人のこと(犬だけど)いえないが。
かばんに詰め込むのも哀れなので、僕のYシャツの胸元にねじ込む。
少しきついかもしれないが我慢しろよ、しなかったらひっぱたくからな という犬にしてみれば理不尽この上ない同盟を一方的にむすんだ。
僕の家のことについて少し話そう。
僕が物心ついたころには、もう父がいなくて、中学のころには、母が他界した。 それからしばらく僕と兄貴との2人だけの生活が続いた。
しかし、英語でbut、その兄貴も昨日あっけなく死んでしまった。 俺がずっとお前を守ってる といった約束はもう果たされそうにない。
「はあ~」心の中でため息をついたつもりが、いつの間にか口からこぼれていた。
「どうしたの?血桜クン」魚ッ!! いかん、動揺しすぎて漢字の変換を間違えた ああ、ちなみに僕の名前は血桜迷《チザクラ メイ 》 そして僕に話かけてきたのは、美人コンテストに三回優勝をかざった幼馴染 鈴鹿架凛《スズカ カリン 》である。
「ねえ、知ってる? ため息をついたら、ついた分だけ幸せの青い鳥が逃げていくんだって」
「今日の晩ご飯は焼き鳥だな」
「逃げる瞬間を捉えて食べるの?!」そういってから彼女はバツが悪そうに顔を伏せた。 僕の家の状況を思い出したのだろう。
謝るように彼女はいった。「……焼き鳥おごる?」予想外 マジでッッか! 食費うくぅぅ。
さっきも書いたように、僕には親がいない そうなると必然的に収入がなくなる。 なので僕にはこの申し出はこの上なくありがたい。
「食う食う」さびしそうに鳴いていた、犬の頭をなでながら僕は言った。
まだ駆け出しですが、楽しんでもらえたらなによりです。