六話 タルタル派とそのまま派に分かれました
六話 タルタル派とそのまま派に分かれました
要は大皿に盛られたエビフライとご飯入りのエスパーダ用の茶碗を持っていく。何度も小人を招いて料理を振る舞った結果、小人用の食器も充実していった。ちなみにほとんどが無償で提供された黒星の作品だ。
「エビか。しかも揚げてある。知りソースではなく、マヨネーズか?」
タルタルソースは皿の隅っこに山を作り、お好みで付けるようにした。なるたけアックスには食べさせない方向で食事を進めるためだ。
「つけて食べよう」
「要さんの作る物に間違いはない」
スミス姉妹はタルタルソースを付けて食べる。
「うまい」
「これ何ていうやつ?」
そこで要はタルタルソースの材料と作りかたを簡単に説明した。
「タルタルソース……」
「エビフライ……。奇跡の出会い」
次に手を伸ばそうとする二人を物理的に黒星が止める。
「まだ俺達が食べていない」
黒星はエビフライを一つ取るとタルタルソースを少し付けて味見をするように食べた。
「俺はこういうのは合わないな」
黒星は否定的だった。
「なんで? エビマヨとかあるじゃん」
「あれは日本で作られた物だ」
「うまけりゃ良いじゃないか」
アックスが食べようとしたので、要は「ちょっと……」と声掛けして、タルタルソースを付けるのを阻止した。
「エスパーダに食べてもらいたいんで、アックスは後で。それから人の彼女にエロ写真要求してんじゃねえよ」
普段温厚な要が言った事もあり、場が凍りついた。しかしサイズだけは笑顔になっていく。
「修羅場?」
エスパーダや要と目を合わせようとしながら、何度も聞いてきた。
「ただのお仕置きだよ」
「ちぇー、つまんないの」
場は和んだ。
エスパーダはエビフライにタルタルソースを付けて、ご飯も食べる。
「おいしいわ。付けないなんてもったいないわね」
「付けなくてもうまいさ。悔しいがな」
「俺も付け……」
「サイズも付けて食べてごらん」
要は徹底的にアックスを排除した。
黒星よりも悔しそうな顔をしているアックスを尻目に、サイズもタルタルソース付きのエビフライを食べる。
「おいしい」
目を輝かせるサイズは二度付けをしようとした。
「ダメだよサイズ。みんなで食べてるから、一回だけね」
邪魔されて、サイズがふくれる。
「タルタルソース付けさせないのはアックスだけじゃないの?」
「口をつけたエビをタルタルソースに付けるなって事だよ。新しいエビフライならつけても構わないから」
その理屈に納得したサイズは持っているエビフライを食べて二個目に取り掛かる。
アックスはエビフライを手にしたが、要がタルタルソースを付ける事を許可してくれない。一旦はそのまま食べたが。諦めきれなかったらしい。
「交換しないか? なあ」
女性陣とエビフライの交換を要求し始めた。
「食いかけを?」
「あり得ないよ」
「さいてー」
「百歩譲って食べてなかったら考えても良かったけどね」
みんなから呆れられていた。