一話 サイズがやる気を出しました
一話 サイズがやる気を出しました
「それはどういう意味?」
マダムは応該に聞き返した。
「言った通りの意味だ、モーニングスター。シールドは私とモーニングスターの受精卵を人間に着床させたものだ」
「そんな、まさか、私は夫に不義を働いていた事になるというの?」
マダムのショックは計り知れない。自分が知らず知らずのうちに托卵をしていたのだ。
「なぜそんな事をしたの?」
そう聞くマダムの声は震えていた。
しかし応該は悪びれる様子もなく言ってのけた。
「それは私がモーニングスターを愛しているからだ」と。
今度は要も能もショックを受けていた。実の父が人妻に告白している場面に立ち会っている。しかし応該からは罪悪感のかけらも感じられない。
「何言ってんだ、あんた」
「お母さん知ってるの?」
「私が誰を愛しているかをペラペラ喋るわけないだろう」
要は理解した。応該はここにマダムがいるから言っただけで、息子や娘の前だから言いはばかるなんて事はないのだ。頭の片隅にもないんだろう。
それだけマダムへの思いは本当だという事になる。
「なら、なぜ私を捜さずにサイズを造ったの?」
「捜していたさ。だが私も研究所を持つ身。モーニングスターを捜すだけでは立ち行かなくなる。実験動物……サイズは必要だった」
「彼女は私の……」
「髪から作ったクローンと私の遺伝子の混ざったやつだ。性格は君には似なくて、泣いてばかりだった。しかも部下に懐く始末。モーニングスターは私を愛してくれていた」
サイズとの違いをアピールするためにサゲる発言をしたが、マダムには逆効果だったように見えた。
「あなたとの関係は貧乏だった私には刺激的でしたわ。でも私は主人を変わらず愛しています」
マダムの答えに応該はあからさまに不機嫌になった。
「だがシールドは私の子だ」
「いいえ。私と主人が育てた私達の子です。私達の歴史は血になんかに負けない」
「だがシールドは助からない。見とる場所を提供しよう。代わりに研究させてくれれば金なんていらない」
「お断りしますわ。私はシールドを救える場所を探したいの。まだ息子は死んでいない」
「ならば実験動物……サイズを連れて帰るしかないな。そうだ。外に人間を一人捕まえているから迂闊な事はするなよ」
望む結果が得られずに子供じみた脅しをしてくる。マダムには効かなかったが、能には効果抜群だった。
「就、みんな就を助けて!」
能が騒ぐ。でも誰も動かない。
「どうして?」
「今戦力はアックスと師匠だけだ。どちらもサイズを守っている」
「じゃあ、お兄ちゃんが」
「無茶言うな。俺も捕まる」
「使えない!」
能は一人外へ飛び出していく。
「おらぁ!」
気合の入った声が聞こえたが、すぐにおとなしくなった。そして応該のスマホに連絡が入る。
「二人になったな」
勝ち誇ったように言った。
するとサイズが泣き出した。
「やっぱり、連れ戻されるんだ」
サイズの顔には絶望が見てとれた。要はサイズを引き渡せば就や能を返してもらえるのではと思ってしまった。そしてそれが他の小人達にも伝播した。それを敏感に感じ取ったらしい。
アックスが戸惑っている横で、黒星がサイズの両肩に手を置いた。
「お前はわがままだったろ。必要ないのに二丁も銃を欲しがり、作らせて、人間に買わせた。服や水着だって人間に作ってもらって、ありがとうも言わねえもんな。それに俺より要の料理のほうが良いんだろ?」
最後のは支援が入っていた。
「でもみんな私がいないほうが良いって思ってる」
「だったら言う事聞くのか? そんなに良い子ちゃんか?」
黒星はポケットから取り出した何かをサイズに握らせた。
「わがままを通せ。俺はどんな結果になろうとも許してやる」
サイズは手の中の物を見て、驚き、黒星に向けて決意の顔で頷いた。
「分かった。やってみる」
サイズはエスパーダの部屋に逃げ込んだ。代わりにスナイパーライフルを持ったエスパーダが出てくる。
「女の子の着替えを邪魔するやつは股にぶら下がってる物に穴開けるよ!」
シールド以外の男が全員、股間を押さえた。