悪魔ムツリの逆襲 その六
暗黒騎士セインを苦戦の末倒したコンラ一行は「ムツリ探知機」の人形の先導で、ムツリの隠れ家に辿りつきました。
「む?」
すでに傷が全快したコンラがムツリの隠れ家のあまりのショボさに唖然としたのかと思いましたが、
「叔父上がおらぬ」
カジューがギョッとします。
「罠ですか!?」
彼は周囲を見回します。
「ハッハッハ! 揃いも揃って愚か者だな。私の頭の良さにひれ伏すがいい!」
どこからともなく、ムツリの声が聞こえます。
「そうなんですか」
樹里は相変わらず笑顔全開です。その隣で役立たず代表の元勇者ユウが慌てます。
「な、何が起こるんだろう?」
剣士ゴウンは刀に手をかけたまま、付近の気配を探っています。
「その島には我が結界を張ってある。だから、お前らは魔法が一切使えぬ」
カジューがムッとして、
「どこまでも卑怯な奴め。姿を現せ! 切り刻んでやる!」
するとムツリの声は、
「卑怯は我ら悪魔にとっては誉め言葉よ。もっと言ってくれ」
カジューは頭から湯気が出そうなくらい怒っています。
「落ち着け、カジュー。お前がそのように怒る姿は見苦しい。嫌いになるぞ」
コンラが言いました。カジューはビクッとして、
「は、申し訳ありませぬ、コンラ様」
と深々と頭を下げました。
本当にこの二人は夫婦なのだろうか? ユウは疑問に思いました。
「そして私は島を離れているゆえ、お前達に魔法で攻撃ができる」
ムツリの高笑いが聞こえます。
「最弩級雷撃!」
島の遥か上空から、巨大な雷撃が降り注ぎます。
「えい!」
樹里が持っていた杖を一振りすると、その雷撃がスーッと杖に吸い込まれました。
「……」
ムツリが唖然とする姿が目に浮かびます。
「な、何だ、今のは!? お前達の魔法は使えぬはずだぞ!? さては作者に賄賂を贈ったな!?」
ムツリが意味不明の暴言を吐きます。
ちなみに作者が賄賂次第で話を変更するのは本当です(ウソです 作者)。
「違いますよ。この杖は、魔法を吸い取る杖なんです」
樹里が笑顔全開で答えました。
「何だとお!? 卑怯だぞ、そんなアイテムを隠し持っていて!」
ムツリが喚きます。するとコンラがニヤリとして、
「残念だったな、叔父上。我らにも悪魔の血が流れておる」
「ぬぬぬ!」
遂にムツリが姿を現しました。彼は宙に浮いています。
「ならば仕方ない。こんな手段は取りたくなかったのだがな」
ムツリの目がギラッと光りました。
「樹里!」
コンラの顔がいつになく真剣です。
「はい、お姉ちゃん」
でも樹里は笑顔全開です。
「皆さん、ジャンプしますので、私とお姉ちゃんに掴まって下さい」
「はい」
カジューはコンラに、ユウとゴウンは樹里に掴まります。
ムツリ探知機は、樹里のローブの中に戻りました。
「召喚術! 火龍、水龍、土龍、木龍、金龍!」
ムツリが目を輝かせたまま、呪文を唱えました。
「飛びます!」
コンラと樹里がジャンプしたのと同時に、島全体が大きく揺れ始めました。
まるで地震が起こったかのように地面が揺れ、木々が倒れます。
樹里達は船に着地し、島が崩壊して行くのを見ていました。
「見よ、我が魔力を! 魔界の最深部にいる最強の龍を召喚した! 覚悟しろ!」
ムツリが血走った目で叫びましたが、樹里達はランチタイムで誰も聞いていません。
「こらアッ!」
ムツリは激怒しました。
その時、島全体が海中に没し、妖気が吹き出します。
「来るか」
コンラが呟きます。カジューが魔力が使えるのを確認し、杖を構えます。
「ギヤアアアアア!」
妖気の中から、巨大な黒い影が現れます。
「あれが、敵?」
ユウが、以前ネコにゃんが言ってすべった「ギャグ」を言いますが、やはりすべります。
「ヒュオオオオ!」
影は空高く上がり、その姿を現しました。
五つの頭を持つ、巨大な龍です。
「キング○ドラ?」
ユウがまたボケます。しかし、誰も反応しません。ユウは立ち直れなくなりそうです。
「な、何ですの?」
異様な雰囲気を感じ、カオリンとユカリンが目を覚まします。
「うるさいのねん」
ユーマも起き出しました。
「お、俺は……」
体液のほとんどを失ったからくり人形のスザーは起き上がる事もできず、泣いています。
「私の力、驚いたか!? もう謝っても許さないからな!」
ムツリは兇悪な顔で高笑いをしました。