悪魔ムツリの逆襲 その三
悪魔コツリの弟ムツリの謀略に対し、遂に反撃に出たコンラ達。彼女達一行は、ムツリの隠れ家がある孤島に来ています。
そしてそこで最初に立ちはだかったのは、武闘家スザーでした。
武闘家カオリン姉妹と怪力娘ユーマがスザーと戦いましたが、スザーは無傷です。
「ならば私が」
カジューが進み出ました。
「終わりだ、ザスー」
カジューはフッと笑って言いました。
「スザーだ」
スザーはカジューの挑発には乗らず、冷静に応じます。
「弩級雷撃!」
カジューが杖を振るって呪文を詠唱しました。
しかし何も起きません。
「何だと!?」
カジューは驚愕し、杖をブンブン振っています。
「杖のせいではない、カジュー。この島全体に魔力封じの結界が張られている。抜かったわ」
コンラが苦々しそうに言いました。
「魔力で劣る自分を優位にするために、ムツリが考えたのだろう。どこまでも卑怯な男だ、我が叔父ながら」
コンラはかなり怒っています。
「という事だ、大魔導士。残念だったな」
スザーがニヤリとした次の瞬間、カジューも海まで飛ばされていました。
「カジュー様ァッ!」
カオリンとユカリンが絶叫しました。
「カジュー、お前の仇は樹里が討ってくれるぞ」
コンラは何故か線香を立てて拝んでいます。
「コンラ様ーッ、私は生きておりますーッ!」
海の向こうからカジューの声がしました。
樹里が前に出ます。するとゴウンが、
「この男は私にお任せを」
と樹里の前に立ちます。
「そうなんですか」
樹里は相変わらず笑顔全開です。
「スザーよ。お主は何のためにムツリの味方をするのだ?」
ゴウンは刀を鞘に戻して尋ねます。
「知れた事。面白いからだ」
スザーはニヤリとしました。ゴウンはキッとして、
「わかった。ならば、心置きなくお主を斬れる。私とは相容れぬ考えのようだからな」
「貴様如きにこの俺が斬れるのか、ゴウン?」
スザーが挑発します。ゴウンは態勢を低くして、
「斬れる!」
ゴウンが視界から消えました。
少なくとも元勇者ユウの目には彼の動きは見えません。
ガキン!
金属同士がぶつかったような音が辺りに響きます。
ゴウンの刀がスザーの右肩に食い込んでいました。
しかし何故かスザーの肩からは血が出ていません。
「やはりな。お主、からくり人形だな?」
ゴウンはバッと後退し、言いました。
「そうだ。だからどうした?」
スザーの右肩から、ブシューッと黒い液体が噴き出しました。
「その事に関して何か申すつもりはない。しかし何故だ? お主ほどの使い手であれば、どこの王国でも仕えられよう」
ゴウンは刀を鞘に納めて尋ねます。
「俺が人間であればな!」
スザーの言葉は怒りに満ちて言いました。元勇者のユウがビクッとします。
「どこの国も、俺がからくり人形だというだけで出仕を断りやがった。だから!」
スザーはゴウンを睨みつけますが、ゴウンも引き下がりません。
「そのような戯れ言、聞きたくない! 結局は己の弱さ。そうは思えんのか!?」
スザーがグッと詰まります。
「その弱さを見抜かれ、お主はムツリにつけ込まれたのだ。それが何故わからぬのだ?」
ゴウンはまるで海原○山のような勢いでスザーを叱りつけます。
「お主はまだ戻れる。悪魔に手を貸すのはやめよ、スザー」
ゴウンは優しい笑顔でスザーを見ました。
「どちらにしても、俺はもう動けぬ……」
スザーはガックリと膝から崩れるように倒れました。
「よくやった、ゴウンとやら。カジューの仇、よう討ってくれたな」
コンラが真面目な顔で言います。
「コンラ様、私は生きておりますから」
カジューはまだ気を失ったままのユーマをお姫様抱っこして戻って来ました。
「いやああ、やめて下さい、カジュー様! 私をお姫様抱っこして下さい!」
カオリンとユカリンが双子ならではのハーモニーで叫びます。
一方、ムツリの隠れ家です。
「スザーめ、口ほどにもない……」
ムツリはギリギリと歯軋りしました。
「ご安心下さい、ムツリ様。私がおります故」
暗黒騎士セインが言いました。相変わらず、家の中でも馬に乗ったままです。
「そうであったな。頼むぞ、セイン」
「はい」
セインは隠れ家を出て、樹里達のところに向かいました。
そして樹里達は……。
「まだ着かんのか、ゴウン?」
コンラがイライラしています。
「申し訳ありませぬ、コンラ様。確かこちらで良かったかと……」
ゴウンのせいで、道に迷っていました。






