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御徒町樹里の冒険(改)  作者: 神村 律子
悪魔ムツリ編
48/52

悪魔ムツリの逆襲 その三

 悪魔コツリの弟ムツリの謀略に対し、遂に反撃に出たコンラ達。彼女達一行は、ムツリの隠れ家がある孤島に来ています。


 そしてそこで最初に立ちはだかったのは、武闘家スザーでした。


 武闘家カオリン姉妹と怪力娘ユーマがスザーと戦いましたが、スザーは無傷です。


「ならば私が」


 カジューが進み出ました。


「終わりだ、ザスー」


 カジューはフッと笑って言いました。


「スザーだ」


 スザーはカジューの挑発には乗らず、冷静に応じます。


弩級雷撃(テラライトニング)!」


 カジューが杖を振るって呪文を詠唱しました。


 しかし何も起きません。


「何だと!?」


 カジューは驚愕し、杖をブンブン振っています。


「杖のせいではない、カジュー。この島全体に魔力封じの結界が張られている。抜かったわ」


 コンラが苦々しそうに言いました。


「魔力で劣る自分を優位にするために、ムツリが考えたのだろう。どこまでも卑怯な男だ、我が叔父ながら」


 コンラはかなり怒っています。


「という事だ、大魔導士。残念だったな」


 スザーがニヤリとした次の瞬間、カジューも海まで飛ばされていました。


「カジュー様ァッ!」


 カオリンとユカリンが絶叫しました。


「カジュー、お前のかたきは樹里が討ってくれるぞ」


 コンラは何故か線香を立てて拝んでいます。


「コンラ様ーッ、私は生きておりますーッ!」


 海の向こうからカジューの声がしました。


 樹里が前に出ます。するとゴウンが、


「この男は私にお任せを」


と樹里の前に立ちます。


「そうなんですか」


 樹里は相変わらず笑顔全開です。


「スザーよ。おぬしは何のためにムツリの味方をするのだ?」


 ゴウンは刀を鞘に戻して尋ねます。


「知れた事。面白いからだ」


 スザーはニヤリとしました。ゴウンはキッとして、


「わかった。ならば、心置きなくお主を斬れる。私とは相容れぬ考えのようだからな」


「貴様如きにこの俺が斬れるのか、ゴウン?」


 スザーが挑発します。ゴウンは態勢を低くして、


「斬れる!」


 ゴウンが視界から消えました。


 少なくとも元勇者ユウの目には彼の動きは見えません。


 ガキン!


 金属同士がぶつかったような音が辺りに響きます。


 ゴウンの刀がスザーの右肩に食い込んでいました。


 しかし何故かスザーの肩からは血が出ていません。


「やはりな。お主、からくり人形だな?」


 ゴウンはバッと後退し、言いました。


「そうだ。だからどうした?」


 スザーの右肩から、ブシューッと黒い液体が噴き出しました。


「その事に関して何か申すつもりはない。しかし何故だ? お主ほどの使い手であれば、どこの王国でも仕えられよう」


 ゴウンは刀を鞘に納めて尋ねます。


「俺が人間であればな!」


 スザーの言葉は怒りに満ちて言いました。元勇者のユウがビクッとします。


「どこの国も、俺がからくり人形だというだけで出仕を断りやがった。だから!」


 スザーはゴウンを睨みつけますが、ゴウンも引き下がりません。


「そのようなごと、聞きたくない! 結局はおのれの弱さ。そうは思えんのか!?」


 スザーがグッと詰まります。


「その弱さを見抜かれ、お主はムツリにつけ込まれたのだ。それが何故わからぬのだ?」


 ゴウンはまるで海原○山のような勢いでスザーを叱りつけます。


「お主はまだ戻れる。悪魔に手を貸すのはやめよ、スザー」


 ゴウンは優しい笑顔でスザーを見ました。


「どちらにしても、俺はもう動けぬ……」


 スザーはガックリと膝から崩れるように倒れました。


「よくやった、ゴウンとやら。カジューの仇、よう討ってくれたな」


 コンラが真面目な顔で言います。


「コンラ様、私は生きておりますから」


 カジューはまだ気を失ったままのユーマをお姫様抱っこして戻って来ました。


「いやああ、やめて下さい、カジュー様! 私をお姫様抱っこして下さい!」


 カオリンとユカリンが双子ならではのハーモニーで叫びます。


 


 一方、ムツリの隠れ家です。


「スザーめ、口ほどにもない……」


 ムツリはギリギリと歯軋りしました。


「ご安心下さい、ムツリ様。私がおります故」


 暗黒騎士セインが言いました。相変わらず、家の中でも馬に乗ったままです。


「そうであったな。頼むぞ、セイン」


「はい」


 セインは隠れ家を出て、樹里達のところに向かいました。


 


 そして樹里達は……。


「まだ着かんのか、ゴウン?」


 コンラがイライラしています。


「申し訳ありませぬ、コンラ様。確かこちらで良かったかと……」


 ゴウンのせいで、道に迷っていました。

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