悪魔ムツリの逆襲 その二
悪魔コツリの脅威を退けた勇者一行がいました。
彼らは、コツリの弟ムツリの策略で次々に襲撃され、負傷しました。
そんな中、遂に元魔王コンラの号令で、ムツリ達のいる孤島に行く事になりました。
傷の癒えないネコにゃんとリクはコンラの屋敷に残ります。
そして彼らに付き添うノーナは、涙を飲んで同行を諦めました。
メル友の怪力娘ユーマは一緒に行きたかったようですが。
そしてコンラとその妹である御徒町樹里が大きな帆船を用意し、何も力にならないと思われる元勇者、コンラの夫で大魔導士のカジュー、怪力娘でキャットファイトのチャンピオンであるユーマ、美人武闘家姉妹のカオリンとユカリン、更に新に仲間に加わった剣士ゴウンが同行します。
「ムツリのいる孤島は、数知れぬ罠がございます。お気をつけ下され」
ゴウンが言いました。するとユーマが、
「やっぱりノーナがいる方がいいのねん。彼女はトラップ発見の名人よん」
「案ずるな。罠など心配せずとも良い。私が島ごと吹き飛ばす」
コンラが言いました。隣でカジューが苦笑いしています。
だったら、私達は何のために同行したのです?
カオリン達はそう思いましたが、言えません。怖くて。
「見えて来ましたよ、ムツリの島が」
元勇者なのに、監視役をさせられている元勇者が言いました。
非常にややこしいので、彼に名前をつけます。
元勇者の名前は、ユウです。そうです、手抜きです。
「酷い……」
地の文に嘆くユウです。
「よし、支度致せ。乗り込むぞ」
コンラが言います。
「さっき島ごと吹き飛ばすって……」
そう言いかけた空気が読めないユーマをカオリンとユカリンが押さえつけます。
そして一方ムツリ達も、コンラ一行が現れたのを知りました。
「もう来たか。よし、スザー、軽く捻って来い」
ムツリが愉快そうに命じます。
「はい」
武闘家スザーはニヤリとして隠れ家を出ました。
砂浜を見つけて船を寄せた樹里達は、上陸をすませ、島の中央を目指していました。
「この先にムツリの隠れ家がございます」
道案内はゴウンです。次の瞬間、彼の目が鋭くなり、右手が刀にかかります。
空気がビュンと揺れるような感じがしたかと思うと、ゴウンの剣を真剣白羽取りで受け止めているスザーがいました。
「ゴウン、裏切り者め。一番に死んでもらうぞ」
スザーの目つきが悪くなります。
「私は裏切ってなどおらぬ! 元々、ムツリに従った訳ではない」
ゴウンはスザーの手から刀を抜き、バッと後ろに飛びます。
「貴方は私達が倒しますわ!」
カオリンとユカリンが飛び出します。
「行きますわよ、ユカリン」
「はい、カオリン」
二人は飛び上がり、スザーに迫りました。
「温いわ!」
スザーも飛びました。
カオリンとユカリンが同時にスザーに仕掛けますが、スザーはそれをことごとく受けてしまいます。
「そんな……」
カオリンとユカリンは息も絶え絶えになり、地上に下りました。
「二人がかりでもその程度か。弱過ぎるぞ」
スザーが挑発します。
「許しませんわ! さあ、ユカリン、私達の強さを見せてお上げなさい」
ゼイゼイ息をしながら、カオリンが言います。
「いいえ、お姉様、ここは一つ、お姉様が見せて下さい」
ユカリンもカオリンに譲ります。
いつもなら「私が私が」になるのに、こんなところで譲り合い精神を発揮してしまいます。
「なら、私が行くのねん!」
ユーマが進み出ます。スザーはフッと笑い、
「おお、おバカ娘か」
「おバカじゃないのねん!」
ユーマはムッとしながらも、近くにあった大きな石をスザーに投げつけます。
「おっと」
しかしスザーはひょいとかわしました。
「ムカつくのねん!」
ユーマは辺りの石を次々に投げましたが、スザーはそれを軽々と全部かわしてしまいました。
「それならああ!」
ユーマは一際大きな岩を持ち上げ、スザーに投げます。
「ほお」
スザーはニッとし、岩をかわしました。
「そこなのねん!」
岩の陰からユーマが飛び出します。
「何!?」
スザーは慌ててユーマをかわそうとしましたが、時すでに遅く、ユーマの怒りの鉄拳がスザーの肝臓を抉っていました。
「うおおお!」
ユーマは渾身の力を込めて左フックを振り抜きました。
スザーはそのまま遥か後方に飛ばされ、土煙が上がりました。
「やったのねん! 美少女は必ず勝つのねん!」
ユーマはそのない胸を張り、鼻の下を指で擦りました。
ところがです。
「油断したよ、おバカさん」
スザーの声がしました。
「伯母加算?」
意味がわからないユーマは首を傾げました。
「キャン!」
次の瞬間、ユーマは海まで飛ばされていました。
「その程度でやられる私ではないよ」
スザーは無傷のまま戻って来ていました。
「何、あれ?」
元勇者ユウは思わず樹里の後ろに隠れてしまいました。
「さてと。次は誰かな?」
スザーの顔が、兇悪になりました。