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御徒町樹里の冒険(改)  作者: 神村 律子
悪魔ムツリ編
45/52

襲撃される仲間 その四 盗賊ノーナと戦士リク

 かつて勇者と共に悪魔コツリを倒した盗賊ノーナと戦士リクは、樹里からの手紙を受け取り、途中で落ち合って、樹里達のいるキサガーナ王国に向かっていました。


「ノーナしゃん、久しぶりだなや」


 リクは相変わらずの女好きモードです。


「そうね、リクさん」


 ノーナは夫のネコにゃんと一緒です。子供は母親に預けたようです。


「ノーナしゃん、このブサイク、誰だにゃん?」


 ネコにゃんが戦闘態勢でリクを睨みます。


「ブ、ブサイクだとお?」


 リクはムッとしますが、ノーナが二人の間に入り、


「忘れたの、ネコにゃん? この人が戦士リク。私の命の恩人よ」


「戦死リク?」


 ネコにゃんのブラックジョークが冴えます。


「戦士だあ!」


 リクも雷神の斧を振りかざします。


 一触即発です。その時でした。


「見つけたぞ!」


 地獄の底から聞こえて来るような声がしました。


「だ、誰?」


 ノーナがネコにゃんを楯にして辺りを見回します。


「だ、誰だにゃん?」


 ネコにゃんはチビりそうになりながらも、言い放ちました。


「おお!?」


 リクが最初に気づきました。


 道の向こうから、鎧付きの黒い馬に跨った黒い鎧の騎士が槍を構えて走って来ます。


「これが、敵?」


 ネコにゃんはガン○ムの名セリフを真似てみました。


 でも誰も気にも留めません。ネコにゃんは落ち込みました。


「我が名は暗黒騎士セイン。盗賊ノーナ、戦士リク! 覚悟!」


 セインは一足飛びにノーナ達のところに走り寄り、槍をノーナに振り下ろします。


「遅いわよ!」


 ノーナはサッとかわしますが、


「にゃん!」


 ネコにゃんはその余波を食らい、吹っ飛びます。


「おらあ!」


 リクがその隙を突き、雷神の斧で斬りつけます。


「どあ!」


 セインは信じられないスピードでそれをかわし、リクを槍でなぎ払いました。


「ぐああ!」


 リクは吹っ飛ばされ、ようやく起き上がったネコにゃんの上に落ちました。


「ぐにゃん!」


 ネコにゃんは気絶してしまいました。


「つ、強い……」


 リクは痛む胸を押さえて呟きます。でも、下敷きになっているネコにゃんには気づきません。


「先程は避けられたが、今度は外さぬぞ、小娘!」


 セインがノーナの方に向きます。


「ノ、ノーナしゃん……」


 リクが呻きながらノーナの身を案じます。


 リク、その気遣いの千分の一でいいから、ネコにゃんに回してあげて下さい。


「待て。お前の相手はこの私だ」


 セインが声のした方を向くと、そこには魔導士カジューがいました。


「カジュー様!」


 ノーナの目が喜びに満ち溢れます。助かる、と思ったのでしょう。


 何しろ、さっきまでいたのは、大飯食らいの大男と猫だけでしたから。


業火無尽矢メガファイヤーアロー!」


 カジューの炎系の魔法が炸裂します。無数の火の矢がセインに向かい、彼の身体を貫きました。


「やっただ!」


 リクがようやく立ち上がったので、ネコにゃんも目を覚ましました。


 穴だらけになったセインは、プスプスと音を立てています。


 カジューはニヤリとし、


「呆気ない。私が出張でばるほどではなかったな」


と言いました。


 樹里に敗れて味方になった剣士ゴウンの話で、ムツリは大して強くないが、手下の中のセインが途轍とてつもなく強いと聞いていたのです。


「とんだ食わせ者であった」


 カジューは余裕の笑みを浮かべ、ノーナを助け起こしに歩き出します。


 その時でした。


「うぐっ!」


 カジューの身体をセインの槍が後ろから貫いていました。


「な、何ィッ!?」


 カジューはグイッと槍から抜け出し、セインを睨みます。


 セインは穴だらけの身体がすっかり修復していました。


「それは、私を穴だらけにしたお返しだ」


 セインが言いました。


「おのれ……」


 カジューは傷を魔法で治癒しながら、歯軋りしました。


「わかったか、愚か者共! 我らこそが最強! この世界は、悪魔ムツリ様のものと知るが良い!」


 セインはそう言い放つと、走り去ってしまいました。


「あやつ、何者なのだ……」


 カジューは気遣わしそうに彼を見ているノーナに苦しそうに微笑み、呟きました。

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