襲撃される仲間 その二 怪力娘ユーマ
栖坂月先生、午雲先生、重ね重ねすみません。
かつて、悪魔コツリを倒すために勇者と共に戦った怪力娘のユーマは、今はマングー王国の樹里の家で暮らしています。
樹里と勇者が、樹里の姉であるコンラの家に引っ越したので、そこに住ませてもらう事にしたのです。
「樹里様からだわん」
ユーマは喋る手紙を受け取っていました。
「悪魔ムツリという男が、復讐のために動き出しました。カオリンさんとユカリンさんが、スザーと言う武闘家に倒されたのです。ユーマさんも気をつけて下さい」
手紙はそれだけ話すと、ボンと消えてしまいました。
「スザー? 聞いた事ないのねん。どうせ大した事ないわん」
ユーマはいつものように道具屋へと出かけます。
「店主に掛け合って、時給を上げてもらわないとねん」
そんな事を呟きながら、ユーマが歩いていると、
「忘れるところだったよ、お前がいたのを」
と言いながら、イケメンが現れました。
「何の事なのねん? あんた誰なのよん?」
ユーマはイケメンの只ならぬ殺気を感じて、身構えました。
「我が名はスザー。二ホン島一の格闘家だ」
スザーは誇らしそうに言いました。
「あんたがスザー? 大した事なさそうなのねん」
ユーマが挑発します。スザーはニヤリとして、
「知っているぞ。お前は力が強いだけで、お頭は弱い事をな」
ユーマはその言葉に激高しました。
「許さないわん! 私は里田○いに似てるって評判だけど、おバカじゃないのねん!」
「そうかね? いずれにしても、私の敵ではないがな」
スザーは余裕なのか、背中を見せました。
「ムキーッ! もう怒ったわん! 死んでも知らないのねん!」
ユーマは一気に気を溜め込み、スザーに突進しました。
「え?」
ユーマの渾身の右ストレートは、虚しく空を切りました。
「遅過ぎる!」
スザーは上にいました。ユーマがギョッとした次の瞬間、
「はああ!」
スザーの錐揉みキックがユーマを襲い、彼女は地面にめり込んでしまいました。
「ぐうう……」
辛うじて意識があるユーマを見下ろして、スザーは言いました。
「弱い。弱過ぎるぞ。本当にかつて勇者と共に悪魔コツリを倒した者の一人か?」
「うう……」
ユーマは反撃しようとしましたが、身体が言う事を聞きません。
スザーは高笑いをしながら立ち去ってしまいました。
「く、悔しいのねん……」
ユーマは涙を流したまま、気を失いました。
ユーマが目を覚ましたのは、樹里の家のベッドの中でした。ふと見ると、樹里がいます。
「樹里様あ!」
ユーマは悔しさと嬉しさが入り混じった状態で泣き出してしまいました。
「もう貴女のところにも現れてしまったのですね」
「はい。手紙を読んだ直後に、襲われましたわん」
ユーマは涙を拭いながら言いました。
「だとすると、あと危ないのは……」
樹里が考え込みます。
「ノーナですわん。私のメル友ですよん」
樹里はユーマを見ました。
「誰でしたっけ?」
目が点になるユーマでした。
その頃、悪魔ムツリの隠れ家がある孤島で、スザーが報告をしていました。
「よく思い出してくれた。作者がバカで、ユーマを忘れておったようだ」
ムツリが意味不明の事を言ったので、スザーはそれを華麗にスルーして、
「ゴウンの方は如何ですか?」
「まだだ。まだついておらんらしい。直に知らせがあろう」
ムツリはニヤリとして言いました。
その頃、剣士ゴウンは道に迷っていました。
彼は伝説の名刀「ムラサマ」を使う居合い抜きの達人です。でも、ル○ンの仲間ではありません。
「ここはどこなのだ?」
ゴウンは近くを歩いていた男に声をかけました。
「ここはどこか教えてくれんか?」
するとその男は、
「ここはキサガーナ王国だよ。そこに看板があるでしょ?」
「え?」
ゴウンは全く違う方角に来ていたのでありました。
ノーナとリクはしばらく安全のようです。