続・更にその後のネコにゃん
僕はネコにゃん。可愛いトラネコだにゃん。
いや、今は可愛くないにゃん。
すでに「下」の始末も自分でできないくらい太ってしまったにゃん。
親切なおねいさんだと思っていたら、僕を三味線屋に売るつもりで太らせていたにゃんよ。
裏切られたにゃん。
僕は、三味線屋の荷馬車でゴトゴト運ばれる間、ずっと泣いていたにゃん。
やっぱり、親切な人は怖いにゃん。
今度は気をつけるにゃん。
でも、僕には今度気をつける機会はないにゃんよ。
このまま、三味線屋に連れて行かれて、皮を剥がれるにゃん。
思えば波乱万丈な人生だったにゃん。
ノーナしゃんは今頃どうしているか心配だにゃん。
あのイケメン、もしかするとノーナしゃんの身体だけが目当てかも知れないにゃん。
ここから脱出して、ノーナしゃんを助けに行くにゃん!
……。
無理だにゃん。下の始末もできない僕に、荷馬車から脱出するなんてできっこないにゃん。
そんな事を妄想していると、荷馬車が止まったにゃん。
とうとう、三味線屋に着いたんだにゃん。
僕も今日で死ぬんだにゃん。
また涙が出て来たにゃんよ。
「ギャーッ!」
三味線屋の叫び声だにゃん。
何かあったにゃん。でも、僕は身動き一つ自分ではできない身体だにゃん。
その時、バンと幌が捲られて、誰かが中を覗いたにゃん。
「おお、こいつはうまそうな猫だ事。思わぬ収穫だわ」
何とか目だけ向けてみると、そこにはモンスターがいたにゃん。
確か、ミノタウロスとかいう、牛と人間のハーフだにゃん。
でもこいつ、言葉がちょっと変わってるにゃんよ。
もしかして、ニューハーフかにゃん?
「これで、コンラ様への手土産ができたわね」
ミノタウロスはニタリとしたにゃん。
コンラ? どこかで聞いた事が……。
思い出す間もなく、僕はミノタウロスに抱え上げられ、彼の馬の後ろに縛られて、そこから別の場所へと連れて行かれたにゃん。
僕はそのままの状態で、三日三晩運ばれたにゃん。
「うん?」
ふと見ると、看板があったにゃん。
「キサガーナ王国へ あと五千歩」
キサガーナ王国? ああ! 思い出したにゃん!
コンラは魔王だったにゃんよ。
確か、ノーナしゃん達と一緒に戦った仲間だにゃん。
それなら、何とかなるかも知れないにゃん。
僕は一縷の望みを抱いたにゃん。
そして、ミノタウロスは、ある大きなお屋敷の前で馬を停め、僕を抱えてお屋敷に入ったにゃん。
「コンラ様、お懐かしゅう存じます」
ミノタウロスが、恭しくお辞儀をしたにゃん。
うろ覚えだけど、コンラの隣にいる男は、確かカジューという大魔導士だにゃん。
二人は結婚したってノーナしゃんが言ってたにゃんよ。
という事は、コンラが抱いている可愛い赤ちゃんは、二人の愛の結晶だにゃん。
羨ましいにゃん。
「おお、これは美味そうな猫だな。カジュー、早速料理してくれ」
コンラもカジューも、僕の事を覚えていないにゃん。
「はい、わかりました、コンラ様」
カジューがミノタウロスから僕を受け取り、お屋敷の奥へと運んだにゃん。
そこは、キッチンだったにゃん。
ああ。今度こそ、僕はおしまいだにゃんよ。
「これを丸焼きにして下さい、樹里様」
え? 樹里様? じゃあ、もしかして、勇者様も来てるのか?
でもどうして僕の事を覚えてくれていないにゃんよ!
みんな酷いにゃん! あ!
そうか。僕は太り過ぎたので、わからないんだにゃん。
わああ。何て事だにゃん!
絶望しかけた時だったにゃん。
「そのシマシマ、もしかしてネコにゃん?」
と声がしたにゃん。カジューが声のした方を向いたので、僕にも声の主が見えたにゃん。
震えたにゃん。
寝ても覚めても忘れられなかったノーナしゃんだにゃん!
「ノーナしゃん!」
僕はありったけの声を出して彼女を呼んだにゃん。
「ネコにゃん!」
ノーナしゃんはカジューから僕を受け取ると、ギュウッと抱きしめてくれた。
「ごめんね、ネコにゃん。貴方を裏切って。あいつ、とんでもないスケベだったの」
「そ、そうだったのかにゃん」
僕はもう考える気力が失せていたにゃん。
「一緒に暮らしましょう、ネコにゃん。結婚なんて形だけのもの、私達には必要なかったのよ」
ノーナしゃんは泣きながら言ってくれたにゃん。
「うん、ノーナしゃん」
僕達の感動の再会にみんな泣いてくれたにゃん。
只一人、コンラを除いて。
「その猫、食わんのか?」
コンラのその一言は、僕を気絶させたにゃん。
僕はノーナしゃんと共にドウホクカイ王国に帰ったにゃん。
そして、ダイエットに励み、同時に子作りにも励んだにゃん。
その甲斐あって、ノーナしゃんは可愛い女の子を出産したにゃん。
ノーナしゃんにそっくりだにゃん。
でも僕は知らなかったにゃん。
人間と猫では、決して子供が作れない事を……。