コンラのランチ
絶世の美女であり、大魔法使いでもあるコンラ。
元は「魔王」と呼ばれていました。
でも今は、愛する魔導士カジューと静かに暮らしています。
「紅茶が美味しい」
彼女は満足そうに微笑み、カップをソーサーに戻します。
「?」
そこへ妙な格好の女が現れました。あちこち肌が露出していて、見るからに頭が悪そうに思えます。
コンラも妹の樹里と一緒で、人の顔をすぐに忘れてしまうのです。
女の正体は、武闘家のカオリンでした。
「魔王コンラ、この前はよくも黒焦げにしてくれましたわね! 今日はリベンジに参りましたわ!」
カオリンは何やら叫んでいます。でもコンラは全く相手にするつもりはなく、食事を続けました。
「覚悟!」
カオリンは気を溜め込むと、一気にコンラに向けて放ちました。
「フン」
コンラはそれを小指の先で受け止め、弾き返しました。
「うわわ!」
カオリンは辛うじて避け、コンラを睨みます。
「ならば!」
カオリンはダイレクトアタックをしました。
「えええええい!」
無数の拳撃が、コンラを襲います。
しかし彼女は食事を続けたままでそれを全て受け止めてしまいました。
「ううう!」
カオリンは悔しそうに一旦下がります。
「美味しかったぞ、カジュー」
コンラは幸せそうに呟きました。
「そ、それ、カジュー様がお作りですの?」
カオリンが涙ぐんで尋ねます。
「そうだ。食うか?」
コンラがニコッとして言います。
「い、いただいてよろしいのですか?」
悲しいまでに腰が低くなるカオリンです。強い者には滅法弱い彼女ならではの処世術です。
「かまわぬ。食え」
コンラはそばにある鍋が載せられたワゴンを指差します。
「は、はい!」
カオリンは嬉し泣きをしながら、鍋に飛びつきました。
「カジュー様、いただきます!」
カオリンはそのまま鍋からカジューの料理を食べました。
その途端、口の中を溶岩が流れたような気がしました。
「ふええええ! 超不味いですわーッ!」
カオリンは、涙を流しながら、走り去ってしまいました。
「こんなに美味いのに、味のわからぬ女子よ」
コンラはおかわりしました。
実はコンラは無類の辛い物好きなのです。
それを知らずに食べたカオリンは哀れでした。
めでたし、めでたし。