カオリン、走る!
私はカオリン。美人武闘家ですわ。
そして私はユカリン。やはり、美人武闘家ですわ。
また貴女、私の邪魔をしますの、ユカリン?
そうではありませんわ、お姉様。私、カジュー様の居場所を突き止めましたのよ。
え?
ここからは通常の文体になります。
「そ、それは本当ですか!?」
私はワナワナと震えながら尋ねましたわ。ユカリンはニッコリして、
「ええ、本当ですわ。遂にその時が参りましたのよ、お姉様」
「え?」
いつになく殊勝な態度の我が妹に、私は一抹の不安を感じました。
「お姉様とカジュー様が添い遂げる時が参りましたのよ」
ユカリンは涙ぐんで言いました。
とうとう、このおバカな妹も、私の魅力に敵わないと気づいたようです。
「ありがとう、ユカリン。では、参りましょうか、カジュー様の元へ」
「はい」
私達は、カジュー様が暮らしているという高原を目指しましたわ。
それはそれは、長く過酷な旅でした。
カジュー様のお屋敷が見えた時には、私達はもう何日も飲まず食わずの状態でした。
それでも、愛しいあの方にお会いできると思うと、力が漲るのです。
「さあ、お姉様、カジュー様はあのお屋敷の中です。思いのたけをぶつけてらっしゃい」
「ええ!」
姉思いの妹に後押しされて、私はカジュー様の待つお屋敷へと走りました。
「カジュー様!」
私は玄関の大扉を開け放ち、叫びました。
「誰だ、お前は?」
そこには、鞭をしならせ、鬼の形相で立つかつての魔王コンラがいました。
「げ」
私はパニックになりそうです。
そうです、カジュー様はコンラと暮らしていたのです。
すっかり忘れていました。
「おお、コンラ様、もっとぶって下さい」
コンラの向こうには、赤くなったお尻を突き出すカジュー様のお姿が……。
「し、失礼しました!」
私は慌てて逃げようとしましたが、コンラの魔法の方が一瞬早く、黒焦げにされました。
それでも何とかそこから逃げ出し、命だけは助かったのです。
「ギャハハハハ、お姉様、最高ですわ!」
黒焦げの私を腹を抱えて笑うユカリン。
私はこのバカな妹にまんまと騙されたのでした。
コノウラミハラサデオクベキカ……。